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物流スタートアップ・ベンチャー特集/第1回

挑戦、まずは実績作りだ/スペクティ・村上CEO

2022年6月21日 (火)

話題LOGISTICS TODAY(東京都新宿区)は6月9日、オンラインセミナー「物流テックスタートアップカンファレンス2022 supported by Spectee」を開催しました。AI(人工知能)を活用した防災・危機管理ソリューションを展開するSpectee(スペクティ、東京都千代田区)をはじめとする、注目のスタートアップ・ベンチャー企業7社が一堂に集結。斬新なアイデアとテクノロジーに熱き思いを抱き、物流・サプライチェーンの変革に挑むリーダーたちが独自開発の機器・システムへのこだわりや今後の夢について、持論を展開しました。

LOGISTICS TODAYは、こうしたスタートアップ・ベンチャー企業を応援する企画「物流スタートアップ・ベンチャー特集」をスタート。経営トップや社内のキーパーソンに、ユニークな事業戦略や将来の方向性、さらには新進企業として社会に貢献したいテーマについて、幅広い観点で語っていただきます。第1回は、スペクティの村上建治郎・代表取締役CEO(最高経営責任者)です。

▲Spectee代表取締役CEOの村上建治郎氏

東日本大震災から8か月後の2011年11月11日に会社を設立しました。大震災の発生直後から災害ボランティアとして活動するなかで実感したのは、被災地からの情報共有の弱さでした。被災地の姿を正確に迅速に伝えるためにできることはないか。こうした強い思いが、情報解析サービスの普及を目指す意志を刺激し、現在のAI(人工知能)による防災・危機管理サービスの開発に注力する情熱を高める力にもなっています。

▲AI防災・危機管理サービス「Spectee Pro」のサービス画面イメージ

会社設立からはや10年が過ぎ、会社の事業規模や組織も拡大してきました。しかし、決して忘れてはいけないと考えているのは、「挑戦」のマインドです。スペクティのAI防災・危機管理サービスは、物流業界でも活躍の場を広げています。

国内のあらゆる産業の基盤となる物流ビジネスほど、社会のあらゆる動きやトレンドへの柔軟な対応が求められる分野はないでしょう。集荷から輸送、倉庫、ラストワンマイルまで、「物流」の定義は実に広範にわたります。裏を返せば、それだけ新規ビジネスを創出できる土壌があると考えています。

しかしこうした物流の領域で、我々のようなスタートアップ企業がビジネスを開拓し持続的に成長させていくのは、相当の覚悟が必要なのも事実でしょう。なぜなら、物流のような古くからある産業は老舗の企業も多く、既存のビジネスモデルも確立されており、その中で何かを変えるというのがとても難しい業界だからです。

自身の体験も振り返れば、スタートアップの活動はこうした既存の業界に属する企業とどうしても「対立軸」を生み出してしまいがちです。例えば、我々がAIを活用した新システムを開発して提案した場合に、現場担当者は理解を示してもその上層部はなかなか首を縦に振らないものです。既存の仕組みを大きく変えたり、すでに取引のある企業や人間関係に影響を与えたりするようなことは「リスク」と捉えられることもあり、なかなか受け入れられません。

我々はそれを打破するために、担当者に「まずは一度使ってみてください」と粘り強く交渉しました。スタートアップが業界で市場を広げるには、特に相手が老舗の場合はなおさら、「他社が使っている」という実績を示すことが一番だからです。

とはいえ、物流はその領域の広さゆえに、様々な切り口で問題解決の糸口となる事象が転がっています。そこを端緒に、これまでにない新しい発想で、先進機器やシステム、サービスを提案することが、この業界の構造的な問題の解決につながると考えています。それを実現できるのがスタートアップの強みであり、使命でもあると思います。

最初は厚い壁に跳ね返されることがあっても、相手の課題認識を深めながら「まずは使ってみて」と繰り返し挑戦して少しでも実績を作ることで、ビジネス機会を開拓していく。これが、スタートアップが物流業界で存在感を示すやり方だと実感しています。(編集部・清水直樹)