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三重県木曽岬町でことし4月に稼働した中京圏最大級の巨大マルチ型施設

ESR「弥富木曽岬」で地場物流と東西中継機能を訴求

2022年7月28日 (木)

話題新東名高速道路と新名神高速道路をつなぐ形で中京圏を横断する伊勢湾岸自動車道。大阪方面へ車を走らせると、弥富木曽岬インターチェンジ(IC)を通過するあたりで突然、右側に巨大な白い建物が目に飛び込んでくる。伊勢湾岸の平坦な埋立地が続く周辺とのコントラストもさることながら、驚くのはその間口の広さだ。こんなに横長な建物は、なかなか目にする機会がない。

香港に本社を置きアジア太平洋各国で物流不動産やデータセンター開発を手がけ、ことし不動産投資ファンドのARAアセットマネジメント(シンガポール)を買収しアジア太平洋地域最大のアセットマネジメント会社になったESR(イーエスアール)がことし4月28日に完成させた「ESR弥富木曽岬ディストリビューションセンター」(弥富木曽岬DC、三重県木曽岬町)。敷地面積7万9095.56平方メートル、延床面積15万5331.99平方メートルと中京圏で最大級の規模を誇る4階建てのマルチテナント型物流施設だ。

効率的な倉庫業務を支える「広い間口」

ESRが中京圏で手がける5か所目の物流施設となる弥富木曽岬DCは、新たなアイデアを反映した機能が特徴だ。代表的なのが、間口を広く取り奥行きを抑えた設計だ。410メートル以上の間口を確保する一方で、奥行きは最大で100メートル未満にとどめるなど極度に横長な建物に仕上げたのは、もちろん理由がある。

▲ESR弥富木曽岬ディストリビューションセンター

「荷物のスピーディーな仕分けや搬送を可能とするレイアウトを模索した結果です」(ESR大阪オフィスの斎藤慎一郎・リーシングオフィサー)。現場従事者の移動距離を短縮できるほか、マテリアルハンドリングなど各種機器・システムを導入しやすい。まさに広い間口の利点だ。

その広い間口の施設を横断するのが、各階に設置された接車バースだ。建物の両端にランプウェイを配置。一方通行の広々とした車路が各階に走り、大型トラックでもゆったりとした荷扱いスペースを確保できる。「仕分けや発送などの作業をスムーズに進められる効率性を追求した」(斎藤氏)仕様だ。

ESRが弥富木曽岬DCに求める「二つの機能」

ESRは弥富木曽岬DCを、中京圏における産業用機械や流通業を中心に、幅広い業種の倉庫機能としての活用を見込む。中京圏では1000坪(3300平方メートル)から1500坪(4950平方メートル)程度の小口スペースの需要が高い傾向にあることから、バースや事務所部分を含めた最小の賃貸区画面積を1518.91坪(5012.40平方メートル)に設定した。

▲ESR大阪オフィス・リーシングオフィサーの斎藤慎一郎氏

さらに、南東側には「名古屋港鍋田埠頭コンテナターミナル」があり、伊勢湾岸自動車道や国道23号「名四国道」を利用して名古屋港の他の港湾エリアにも移動できることから、低床バース仕様である1階倉庫部分の4割に相当する区画について、工作機械や重量物に対応した1平方メートルあたり3.0トンの床荷重を確保。ESRでは初めての取り組みだ。

しかし、想定するのはこうした”地場”の機能だけではない。「首都圏と関西圏の『中継拠点』としての活用です。新東名・新名神高速道路と直結する伊勢湾岸自動車道のICに至近に位置する優位性を訴求できると考えています」(斎藤氏)

伊勢湾岸自動車道以外にも、名古屋第二環状自動車道や東海環状自動車道で延伸工事が進むなど、高速道路網の発達が顕著な中京圏。製造業を中心とする地元の産業における倉庫機能に加えて、東海道メガロポリスにおける広域物流拠点としての役割も果たす。高速道路網の拡充で、劇的な変化を遂げている中京圏における物流倉庫の位置付けを象徴するのが、この弥富木曽岬DCと言えそうだ。

物流施設の持続的発展を支える「地元住民との交流」

弥富木曽岬DCが立地する木曽岬町は、トマト栽培や稲作が盛んな土地だ。木曽川に面した豊かな水資源を背景に、農業が発達している。こうした農家をはじめとする地元住民は、弥富木曽岬DCの進出に期待を抱いているという。

▲弥富木曽岬DC内に設置されたショップ

周辺に商業施設がない環境を考慮し、ESRは弥富木曽岬DC内のショップで出来たての弁当を販売できるよう厨房設備を設置、コインランドリーを導入するなど従業員の快適な就労環境を意識した取り組みをさらに推進。ショップで地元の農産品も販売するなど、地域との交流の場とするアイデアも温めている。

「こうした地元の皆様とのコラボレーションは、物流施設の機能を発揮するためにも大切な要素。さらなる交流の深化に向けた取り組みを検討していきます」(斎藤氏)。ESRは弥富木曽岬DCを、立地や機能だけではない新たな「挑戦」の舞台と位置付けている。

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