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スペクティ、「AI被害予測」で未来の危機を可視化

物流の災害リスクに想定外は通用しない

2022年10月4日 (火)

話題社会に欠かせないインフラとして、毎日モノが運ばれることが当たり前である物流。高品質なのが当たり前とも言える状況下で、明らかに企業としての差が出るシーンがある。それが「災害時」だ。

温暖化により年々降水量や豪雨災害が増加していると肌で感じている人も多いだろう。「大雨の影響で配送に遅れが出る可能性があります」。物流の乱れは大抵、その一言で「仕方がない」と片付けられてきた。しかしここにきて大手企業を中心に、AI(人工知能)の進化による災害に強い物流が築かれつつある。

それら大手企業が採用しているのが、Spectee(スペクティ、東京都千代田区)のAIリアルタイム危機管理サービス「Spectee Pro」(スペクティプロ)だ。災害・事件・事故について「いつ」「どこで」「何が起こったのか」を、パソコンの画面やスマートフォンのアプリや音声通知、メールなどを通じて報道よりも早く、正確に伝える。同社は自治体や官公庁、インフラ企業や製造業などで広く採用されてきた実績を持つ。

そのスペクティが新たな取り組みとして、配送計画などへの活用を期待した「リスク予測」の技術に挑戦し、ベータ版として取引先各社に提供しているのだ。公的機関や道路・河川カメラだけでなく、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)からの情報収集に重きをおいてきた同社だからこそできる、AIによる被害予測技術。村上建治郎CEO(最高経営責任者)に物流に見出した商機について、そして今後の展望を聞いた。

▲スペクティの村上建治郎CEO

「Spectee Pro」で競争に勝つ物流を築く自動車メーカー

――これまで「Spectee Pro」を活用している企業はどのような使い方をしていますか。

村上氏:一例としては、自動車メーカーの調達物流におけるリスク管理強化です。災害が起こったときにサプライヤーA社さんの生産が遅れたとしましょう。このときメーカーとしては、B社に調達先を切り替える判断をします。ある場所で災害が起こっているとすると、必ず他のメーカーも同様にB社に切り替えるため、B社に注文が殺到してしまう事象が起こります。切り替え先がいっぱいだと代替えがなくなってしまうので、早く判断して、早く動くことが重要です。

被害が発生してから調達ができないと分かるまでタイムラグがあります。「Spectee Pro」導入企業はリアルタイムな情報から被害の広がる危険度が高いと判断すれば、「B社に切り替える社内決済を先にとっておく」「いざとなればすぐに動ける」といった先進的な取り組みをされています。

――荷主企業だけでなく、3PL事業者から荷主への提案に活用する方法もありそうですね。

村上氏:そうですね。物流に関わる企業がリスク管理を求めるニーズは感じてきました。ただ今までのサービスが防災分野に特化してきた分、がっちりと物流にフィットするかというと、そうではない部分もあると感じています。お客様のニーズを掴んで、物流向けのアップデートを重ねているところです。

スペクティの取り組む「リスク予測」とは

――物流向けアップデートのひとつが今回の「リスク予測」ということですね。どのようなサービスを指すのでしょうか。

▲SNS投稿画像のイメージ

村上氏:これまでの取り組みとしてはリアルタイム性の担保からSNSの情報を重要視して、情報提供をしてきました。でもそれだけだとピンポイントの情報でしかありません。たとえば『家の前で冠水している』とSNSで写真がアップされます。その情報から家の前で冠水している状況はわかるのですが、その地域一帯がどれくらい冠水しているかはわかりません。ロジスティクスとしては、街全体がどうなっているか、道路は通れるのか、の方が問題です。

そこで2年前くらいから技術開発を進めました。SNSの画像からある地点での浸水の深さを推定し、降水量と地形のデータを加味して、全体ではこのエリアまで浸水しているだろうと「浸水シミュレーション」を出せるようにしたのです。

その当時も国土地理院さんにデータを提供していましたが、ブラッシュアップしてことし7月からお客様にベータ版を提供しています。

▲浸水シミュレーションのイメージ

――なるほど。写真だけで浸水の深さを推定するだけでも難しいと思うのですが、わかるものですか。

村上氏:SNSでアップされた写真に写っている人や車、建物、電柱、自動販売機がどこまで浸水しているかを指標にしています。タイヤがここまで浸かってると何センチ、全部浸かってると何センチといったデータベースです。現在当社では10センチ刻みで分類し、10分以内に「浸水推定図」を3D(3次元)マップで自動生成しています。以前は人が目視で分類していたものを、AIに学習させて整合性を検証中です。

未来の危機をいかに予測するかが求められている

――ここまで来ると、今後未来の被害予測も可能になりそうですね。

村上氏:はい。まだお客様の画面上には出ていませんが、浸水の未来予測は社内的にすでに進んでいます。現在の降水量と予測降水量を加味して、10分後、30分後、1時間後の浸水範囲を算出する仕組みです。

――「AIによる未来予測」が始まろうとしているんですね。物流での活用方法は、どのようにお考えでしょうか。

村上氏:現状提供している「Spectee Pro」はリアルタイムの状況確認をすることで、配送ルート上に浸水があれば、避けて通ることができます。それに加えてよく要望をいただくのは「もっと先の未来を見たい」との声です。

――「もっと先の未来」とはどういった意図があるのでしょうか。

村上氏:配送計画は前日に作られているので、その時点で明日の状況が分かれば災害によるリスク回避や被害軽減がしやすくなります。

我々は「危機の可視化」をミッションに掲げる中で「未来の危機をいかに予測するか」に注力しているところです。「明日関東に台風が来る」だけでなく「明日の台風が配送ルート上にどう影響するのか」が求められていると感じています。

あとは気象予報が当たらないと悩んでいる事業者の声も聞きます。

未来の危機をいかに予測するかが求められている

――気象予報とスペクティが目指す「リスク予測」の違いについてどうお考えですか。

村上氏:気象予報は人命を意識しているので、警報が早く出たり、警報が出ても実際には大したことがない場面が往々にしてあります。配送計画を立てている方々は当然そのエリアを避けるわけですが、避けるということは時間をロスします。もしかしたら時間に間に合わず、配達できなくなる可能性もあるでしょう。

防災の観点で言うと、災害弱者といわれる方々のことも意識し、情報発信の基準をより安全側に振った方がいいところがあるので、何もなかったとしても「なくてよかったね」で終わるのですが、荷主会社や物流会社の事業を考えるとそうはいきません。安全側に振りすぎるとロスが大きくなりすぎてしまったり、場合によっては荷主が別の運送会社に切り替えたりすることも考えられるでしょう。

そのため、「リスク」と「安全」のバランスがいいところで、配送計画を立てるうえでの判断に使えるようにしていきたいと考えています。

「何を運ぶのか」まで考慮した提案をするために物流事業者の声を聞きたい

――今後、浸水シミュレーション以外の部分での「Spectee Pro」活用の可能性を教えてください。

村上氏:我々はリスクを分析するのが一番得意な領域です。物流でいうと運んでいるモノによってリスク回避できる提案をしていけるようにしたいと考えます。そのためには交通のデータだけでなく、各運送会社さんが何を運んでいるか、細かく状況把握をしていかなければなりません。

――なるほど、確かに運ぶものによってもリスクは変わりますね。

村上氏:まさにスーパーを考えていただければと思うのですが、賞味期限の長い加工食品を運ぶのか、生鮮食品を運ぶのかで変わってきます。

生鮮食品は足が早いので、1時間配送が遅れると1時間分売り損なう。半日失えば、もはや売りようがなくなってしまいますし、大雪で立ち往生になってしまえば、全ての商品が廃棄対象になってしまうリスクもあります。

その損失は大きいことから、「その日は出さない」判断を促せるサービスにしていきたい。顧客に合わせてカスタマイズして提案できるよう、データの収集と同時にニーズを深く読み取っていくステージにいると思っています。

取材を終えて

AIの進化により「想定外」が通用しなくなる未来がすぐそばまできている。何かあってからの対策では遅いのだ。災害が起こってしまったときに、「物流を止めない」使命感をどれだけ具体的な活動に反映できるか。ここで企業の真価が問われるのだ。豪雨災害や大地震をはじめ、あらゆるリスクと向き合う必要に迫られている今だからこそ、スペクティとともにリスクマネジメントに向き合ってみてはいかがだろうか。(田中なお)

「Spectee Pro」の詳細・無料トライアル
Spectee・村上CEOが防災イベントに登壇
■防災テックスタートアップカンファレンス2022
登壇日時:10月6日(木)13時20分~13時50分
テーマ:「AIで予測・可視化する危機管理サービス『Spectee Pro』で実現する 防災・BCPの最前線」
会場:オンライン
参加費:無料
詳細・申込み:https://resilience-tech.net/

■危機管理産業展2022
登壇日時:10月7日(金)15時~16時
テーマ:「SNSでリスク予測!最新テクノロジーで挑む危機管理最前線」
会場:東京ビッグサイト西1・2ホール(東京都江東区)
参加費:無料(完全事前来場登録制)
詳細・申込み:https://www.kikikanri.biz/

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