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造船大国復活を、中韓追撃のSP改革が仕上げ段階に

2022年10月13日 (木)

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行政・団体「造船大国復活」を目指し、この数年、政府主導で進めてきた造船サプライチェーン改革が、いよいよ仕上げに入ろうとしている。国土交通省の「造船所間連携」と「調達改革」の2施策が2023年度に最終過程に入る。いずれもデジタル技術を使って造船業界の課題だった受注対応力を引き上げようというもので、世界市場を席巻する中国、韓国勢を追撃する態勢がようやく整う。

造船産業の国際競争力強化は積年の課題だが、国営または国家の庇護の下にある中韓の巨大メーカーに対抗するには、企業単独での努力では限界があった。近年、政府が主導し、受注対応力を高めるサプライチェーン改革が段階的に進められてきた。

造船所間で役割分担

国土交通省の2施策の1つ「造船所間連携」は、複数の造船所の間で「設計」や「建造」といった役割分担をするもの。船主企業が一度の大量発注や短納期での建造を希望した場合、個社の生産能力で勝る中韓メーカーに対抗するには、複数造船所による分業が必要だった。ただ、船の設計図は造船会社の「命」とも言える重要機密であり、設計システムの共通化・集約化は難しい。他社にさらしても問題ないデータはあるが、設計のソフトやフォーマットが会社ごとにばらばらで、分業の妨げとなっていた。

そこで国交省は、機密に当たらないデータを、異なるソフトに合わせて相互変換し、共同で使えるようにする手法を目指した。同省とメーカー数社でパイロット的なデータ変換システムを構築・運用した上で、国内造船各社に開放する作戦だ。すでに一部のデータ変換に成功しており、23年度に変換対象を基本設計から詳細設計まで設計全体に広げる。これにより本格的な造船所間分業に道が開けるとみている。

舶用品をジャストインタイム納入

2施策のもう一方、「調達改革」は、造船会社が船に搭載する舶用品を数多くの舶用品メーカーから調達する際、従来、ファクスや電話などでばらばらに行っていたやり取りを、データ連携による電子調達システムに移行させる施策だ。造船会社と舶用品メーカーで互いの進ちょく状況がリアルタイムに共有でき、納期の安定化や短期化につながる。

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これまでは舶用品が必要な時に造船所に届かなかったり、逆に建造が遅れて汎用品の在庫が山積したりすることがあった。舶用品は非常に点数が多く、全国各地のメーカーを束ねる仕組み作りは困難で、政府が主導する必要があった。

すでにリアルタイム共有や電子化の技術はできており、23年度にデータ連携を開始する計画。これもパイロットシステムを一部メーカーに利用してもらい、業界全体に広げていく。「トヨタ生産方式」の名で自動車産業では浸透しているジャストインタイム納品が造船にもようやく導入されることになる。

国交省はこれらの施策の経費として23年度予算の概算要求に22年度の2倍の2億円を計上している。23年度はサプライチェーン改革の「集大成の年になる」(船舶産業課)という。

国交省の23年度予算概算要求6.9兆円、DXを推進


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