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トラック運送倒産が過去5年で上期最多、TDB調べ

2022年10月17日 (月)

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調査・データ帝国データバンクがまとめた2022年度上半期(4〜9月)の企業倒産集計によると、トラック運送(一般貨物自動車運送)業界の倒産件数は99件となり、前年同期(65件)から1.5倍に急増し、過去5年間で最多を更新した。

背景には、燃料価格の高騰を受けた運賃への適正な価格転嫁が進んでいない現状があると指摘。荷主との運賃交渉が順調に進まなかった結果、収益性が悪化して倒産を余儀なくされ複数発生したと分析している。

発表によると、トラックの燃料となる軽油価格は22年に入って一時150円を超え、1年間で約20円上昇するなど急騰。一方で、収入となる成約運賃指数は近年、ほぼ横ばいで推移している。「多重下請け構造」の中で、価格転嫁を認めてもらえないという訴えも相次いでいるという。

同社は、今後の見通しについて、ドライバーの時間外労働が規制される「物流の2024年問題」が迫り、多くのトラック運送会社が「今まで運べていたものが運べなくなる」として売上減を想定する。委託ドライバーを使用する会社では、23年10月に始まるインボイス制度への対応による税負担の増加といった課題について懸念。その上で「中小零細のトラック運送業者の中でM&Aや再編などが加速度的に進む可能性がある」とみている。

倒産件数は、燃料価格が大幅に上昇した14年度以来8年ぶりの高水準で推移している。ことし4月には燃料価格高騰で採算が悪化したなどとして、SEHIRO(大阪府門真市)が負債18億6000万円を抱えて自己破産を大阪地裁に申請するなどした。

全業種でみると、企業倒産件数は前年同期比6.3%増の3123件。新型コロナウイルス化の減少基調から一転し、年度上半期としては3年ぶりに前年実績(2938件)を上回った。負債総額は205.3%増の1兆7657億9500万円と急増。17年度上半期以来、5年ぶりに1兆円台に達した。業種別では、小売業を除く6業種で前年同期を上回った。運輸・通信業は26.3%増の168件で、燃料費高騰やドライバー不足が響き、道路貨物運送(113件)と増加が目立った。

荷主と運送事業者における力関係の偏在化、背景にある消費者による「安さ」求める圧力も

商品やサービスの価格は、その原価や経費に基づいて決定されるものである。いわば市場経済の常識だ。しかし、実際の商取引では必ずしもそうならないのも、また然りなのだろう。

2022年度上半期におけるトラック運送業界の倒産件数が、この5年間で最多となった。その要因は、荷主との運賃交渉が順調に進まず収益が悪化したためという。荷主と運送事業者の力関係がそれほどまでに偏っている現実を見せつけられると、何ともやるせない思いがする。

運賃交渉における火種となっているのが、高止まりを続けている燃料価格だ。荷主にとっても対処のしようがないマクロ経済学の領域であるとは言えども、わずかな度量があるだけでも運送事業者の疲弊は緩和できるはずだ。

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しかし、ここで荷主の狭量さを一方的に責めるのも違うのではないか。荷主はなぜ価格交渉になかなか応じようとしないのか。それは、値上げを断じて許さない消費者の存在があるからだ。

EC(電子商取引)サービスの拡大に伴い、消費者は店頭に行かなくても安く商品をすぐに入手できるようになった。新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛は、ECの普及を加速させるとともに、国民生活における消費スタイルの多様化を促した。商品流通チャンネルの店舗から宅配へのシフトが進む一方で、商品価格は据え置かれた。そうした構図が、荷主企業の発言力をより強める力学を生み出したと言える。

物流事業者と荷主、消費者の関係のなかで、燃料価格はいわば外的要因だ。それならば、商品供給網の恩恵にあずかる立場でそれぞれ応分の負担をするのが正論だろう。荷主のパワーバランスが強いということは、消費者の要求が理不尽な水準まで先鋭化している裏付けではないか。まずは日常生活から顧みる必要がありそうだ。(編集部・清水直樹)