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三菱地所が冷凍・冷蔵倉庫開発強化、大阪3か所目

2022年11月30日 (水)

拠点・施設三菱地所は、需要が高まる冷凍・冷蔵倉庫の開発を強化する。11月30日、大阪市住之江区で同社として初めてとなる冷凍・冷蔵機能を備えたマルチテナント型物流施設「大阪市住之江区柴谷冷凍冷蔵物流計画」(仮称)を始動する、と発表。同社による冷凍・冷蔵倉庫の開発は計3件となる。

生活様式の変化を受け、冷凍やチルド加工食品のニーズが高まる中、既存施設の老朽化に伴う倉庫需要の拡大を踏まえ、今後も多様なテナントニーズに対応した施設開発を積極展開していく。

同計画によると、新たなマルチテナント型物流施設の延床面積は4万3500平方メートルで、2025年春に完成予定。阪神高速15号堺線の出玉インターチェンジ(IC)から2.2キロ、同4号湾岸線の南港中出入口ICから3.4キロに立地し、大阪市内から兵庫県方面まで広域配送が可能。近隣には物流倉庫や工場などが集積する。

また、住之江区に冷蔵機能を備えたBTS型物流施設「ロジクロス大阪交野」が完成したことも発表した。荒木運輸(同市西淀川区)に1棟貸しする。23年1月、関西圏全域の冷凍・冷蔵に特化した物流拠点として本格稼働を予定する。

▲ロジクロス大阪交野(出所:三菱地所)


▲ロジクロス大阪交野の倉庫内

両物件ともに高速道路や主要道のICに近接し、大阪中心部から関西全域への広域配送が可能で、利便性の高いエリアに位置している。周辺には住宅地も広がっており、最寄り駅から徒歩圏内であることなどから雇用確保にも有利としている。

急加速する冷凍・冷蔵倉庫プロジェクト、受益者でコストを負担し合う仕組みも必要ではないか

物流施設における直近のトレンドは何か。そう問われれば、おそらく大半の物流事業者が挙げるキーワードは「冷凍」「冷蔵」だろう。

EC(電子商取引)サービスの急速な普及に加えて、感染症をはじめとする医療・医薬分野の高度化も背景とした、温度管理を徹底した輸送ニーズの高まりが、新たな物流倉庫の潮流を生み出しているのは間違いない。そこに新たなビジネスチャンスを見いだす動きも顕著であり、物流という事業があらゆる産業の基盤になっている現実を浮き彫りにしている。

三菱地所が住之江区で稼働させる新たなマルチテナント型物流施設は、食品の観点から冷凍・冷蔵倉庫の機能を訴求する動きを象徴する取り組みだ。食品業界が集積する関西における冷凍・冷蔵倉庫の需要は根強いものがある。同時に大消費地を後背に持つ関西圏の特徴も考慮した施設として、いわば強い期待を背負っての新施設稼働となる。

冷凍・冷蔵倉庫といえば、専業事業者が独自のノウハウを生かして大規模に展開する姿が一般的だった。港湾地域を中心に冷凍・冷蔵の倉庫街が形成されるなど、物流施設のなかでも特殊な領域として認識されてきた印象が強い。

こうした構図に変化をもたらすきっかけとなったのが、ECと新型コロナウイルス感染症だ。冷凍・冷蔵機能を必要とする荷物の量や種類が一気に増加。大部分の世帯にとって宅配で購入するものではなかったはずの商品を、ECの普及で自宅にいながら購入できるようになった。

むしろ、メーカーや店舗もこうした商品を宅配できるメリット前面に出したビジネスを積極的に展開することで、ライバルとの差別化を図り消費者のニーズを満足させることに躍起になっている。こうした動きに欠かせない機能として、にわかにクローズアップされるようになっているのが、冷凍・冷蔵倉庫というわけだ。

とはいえ、冷凍・冷蔵倉庫の開発には従来のいわゆるドライ倉庫よりも多額の費用がかかる。それゆえに、施設の開発事業者のなかでもある程度の資金力が求められる。新たなビジネスの誕生は、従来になかった競争環境をも生み出している。

ここで理解が必要なのは、むしろ荷主ではないか。荷主は冷凍冷蔵倉庫の存在があることで、より消費者へのサービス強化につなげることができるはずだからだ。その観点で見れば、荷主は受益者の立場でもあるわけだ。冷凍・冷蔵倉庫の開発コストを、荷主も一定程度は負担する機運が高まってもよいはずだ。

こうした受益者でコストを分担するスキームの構築も、今後の持続的な冷凍・冷蔵物流サービスの成長には欠かせない議論ではないだろうか。(編集部・清水直樹)

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