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値上げ交渉、応えられるか公取委の「改善要請」

2022年12月28日 (水)

記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「『優越的地位』巡り13社が価格転嫁の協議なし」(12月27日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

行政・団体昨今のコスト上昇に伴う価格転嫁を巡り、公正取引委員会が12月27日に「取引先と協議を行わず価格を据え置いた」などとして13の企業・団体名を公表した。そのうち5社が宅配や運送など物流関連企業に上った。公取委によると、今回の社名公表は法令の違反や疑いを認定するものではなく「転嫁円滑化を強力に推進する観点からの情報提供を図るため」などと説明しているが、事実上、値上げ交渉に際して「立場が強い」発注者側に対して、厳格に対応するよう改善を求めた格好だ。

今回、公取委が問題視したのは2点。1つ目は「コスト上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格交渉の場で明示的な協議をせず取引価格を据え置いた行為」。2つ目は「値上げ要請を受け入れない場合、その理由を文書など形に残る方法で伝えていないこと」。いずれも独占禁止法上の優越的地位の濫用の要件の1つに該当するおそれがある行為として挙げている。

公表された物流関連各社は、日頃から取引先である下請けなど協力企業と密な意思疎通を図っていると強調。その上で、コストアップに係る取引価格の協議の場の設定に関しては「要請されていることを読み取ることができていなかった」(佐川急便)や「値上げの申し入れには都度協議に応じてきたが、十分な対応ができていなかった」(三菱電機ロジスティクス)といった法令に対する万全な認識や対応に至っていなかった点を認めた。

佐川急便は、すでに改善に向けて順次書面で協力企業に対して協議の申し入れに着手。外部専門家とも協議して的確な理解を行うなど「関係法令の社内周知を徹底して再発防止に努める」としている。こうした社名公表は、これまで前例がほとんどないという中で、取材した他の物流各社も総じて指摘を真摯に受け止め、従来の価格転嫁に係る協議の見直しを急ぐ構えを見せている。

公取委と中小企業庁が12月14日に発表した自主点検で、運送業界では独禁法など価格転嫁に関わる法令順守や社内体制の整備が低いという実態が判明したばかりだ。公取委は、今回のような社名公表について今後も継続して実施するのか現時点で明らかにしていないが、物流業界に対して厳しい視線が向けられているのは想像に難くない。大手や元請けの運送事業者も物価高で経営環境は厳しさを増しているとはいえ、再び多くの物流関連企業が「名指し」されるような事態だけは避けなければならない。(編集部・安本渉)

価格転嫁の協議徹底へ、佐川や丸和などコメント