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コスト高、ドライバー不足、「2024年問題」対応--、物流の諸問題への対処策

フジトランスポート、2/22に「承継公募」スタート

2023年2月22日 (水)

話題燃料費高騰によるコスト上昇、ドライバー不足、さらに「物流の2024年問題」への対応--。物流業界は、解決すべき問題が山積する。ドライバーなど現場の担い手が足りない現状とは裏腹に、EC(電子商取引)の普及に伴う宅配サービスの拡大などを背景とした輸送品質の高度化への対応も迫られる。社会に不可欠なインフラである物流は、こうした薄氷のうえで成り立っているのだ。

(イメージ)

その物流業界で近年、こうした諸問題に対処する取り組みとして注目を集める取り組みがある。事業承継、いわゆるM&A(企業や事業の合併・買収)だ。厳しい事業環境下で、一般貨物自動車運送事業者の倒産が増加傾向だ。さらに後継者が見つからず事業承継を断念して廃業するケースも増えている。一方で、事業を持続的に成長させたい事業者にとって、M&Aは有効な手段だ。物流ビジネスを発展させるには、全国規模のネットワークやドライバーなど現場スタッフの確保が欠かせないからだ。

こうしたM&Aに注力することで、大型トラックによる長距離輸送ビジネスで全国展開を加速するのがフジトランスポート(奈良市)だ。事業を譲りたい経営者を対象とした「承継公募」を2月22日に開始。物流にかかる諸問題への対応に苦慮する事業者を募集する。拠点機能の拡充による輸送サービスのさらなる高度化につなげる狙いだ。フジトランスポートのこの取り組みを支援するのが、Visional(ビジョナル)グループのM&Aサクシード(東京都渋谷区)。フジトランスポートへの承継によって、相互にどんなプラス効果を実現できるのか。

フジトランスポートが承継公募を実施する背景にある「危機感」

フジトランスポートは、フジホールディングス(東京都港区)の中核子会社で、幹線輸送を中心とした長距離輸送に強みを持つ。全国各地の運輸企業をM&Aで傘下に置くことにより全国ネットワークを強化する一方で、ドライバーをはじめとする就業環境の確保にも配慮した事業運営は、業界でも評価が高い。

▲M&Aの活用の利点について「ビジネスの相乗効果がスピーディーに生まれること」と語る、フジトランスポート執行役員の川上泰生氏

フジトランスポートによる今回の承継公募は、過去の複数のM&A案件で成約を支援した実績もあるM&Aサクシードのバックアップを受ける。川上泰生・執行役員は「全国に出店する一つの方法としてM&Aを活用する利点は、トラックや建物などアセットの確保を含めたビジネスの相乗効果がスピーディーに生まれることだ」と指摘する。

フジトランスポートがM&Aで全国ネットワークの拡充を急ぐ背景にあるのが、来年に迫った「2024年問題」への対応だ。「ドライバーの『走れる距離』が短くなる制約を補うために不可欠なのが、中継輸送。その実現には全国への店舗展開がどうしても必要なのです」(川上氏)

とはいえ、自社で人材や建物などを確保するのは決して容易なことではない。新たに進出する土地であればなおさらだ。そこで、M&Aという発想が生まれてくるのだ。いわば「時間を買う」といったところか。

フジトランスポートへの事業承継でどんなメリットがあるか

フジトランスポートがM&Aサクシードの支援を受けて開始する、今回の承継公募。フジトランスポートを擁するフジグループの仲間入りすることで、どんな強みを発揮できるのか。宮崎県の運送会社の例に基づいて、検証してみよう。

この運送会社は、後継者にふさわしい人材を選定できず事業継続を危ぶんでいた。富士運輸(当時、現フジトランスポート)のM&Aに応じたことで、フジグループで大型長距離ドライバーを経験した40歳代の代表を招くなど、ドライバーをはじめとする資産を承継することができた。

フジグループ入りを契機に一連の効率化が進んだことから、わずか1年間で従業員の給与を増額。GPS(全地球測位システム)機能を活用することで空車率を低減。首都圏から宮崎県への復路について、従来比で最大15%増の運賃を受託することが可能になったことも理由だ。

さらには、首都圏での給油を外部のガソリンスタンドからフジグループのインタンクに変更したことにより、1リットルあたり10円のコスト削減につなげた。燃料高にあえぐなかでの大幅な給油コスト削減は、収益を捻出するうえで大きなバックアップとなる。経費削減で言えば、これまで外部に委託してきた車両の修繕もグループのリソースを活用して内製化。年間で数百万円のコストを減らすことができた。

生産性向上の観点では、車両運行・管理や請求、給与計算、人事管理といった業務を一元管理するITシステムについてフジグループの機能を導入したことも、業務改善に貢献した。

▲譲渡側と譲受側の双方に継続的なメリットを創出できる形でM&Aを実現--。フジグループへの仲間入りで享受できる強みだ

「新型コロナウイルス禍の影響で減収だったにもかかわらず、長距離の大手のお客様と取引できるようになりました。その結果、売上高をコロナ禍以前の水準に1年で回復させることができたのです」(川上氏)。M&Aによる承継は、譲渡側と譲受側の双方に継続的なメリットを創出できる形で実現して初めて、まずは「成功」と言えるのだ。

M&Aサクシード、M&A支援の「3つの強み」

フジトランスポートによる今回の承継公募を支援するM&Aサクシード。インターネット転職支援サービス「ビズリーチ」運営のグループ会社がM&Aマッチングサイトを展開している。

M&Aサクシードには3つの強みがある。法人を対象とした審査制で、匿名で利用できる安心の環境を提供できるほか、8000社を超える譲受企業からの直接オファーやAI(人工知能)と専任担当者からの推薦による「譲渡側と譲受側の出会いの数と幅の最大化」を実現。さらに、同時期に複数の候補企業と出会うことによる「譲渡企業の客観的な価値」の把握、候補先を比較判断できる。これらを武器に、様々な業界における「安心で納得の」M&Aの実現を促してきた。

▲M&Aサクシードの前田洋平氏

「2022年の当社経由のM&A成約件数を業種別に見ると、物流は第3位です。全国への拠点展開や中継拠点の確保など、今後の成長に欠かせないネットワーク構築を支える方策の一つとして、物流業界のM&Aが増えているのです」(前田洋平氏)

承継公募で輸送ネットワークの強化を図ろうとするフジトランスポートと、その支援を通してM&A市場のさらなる訴求力の向上につなげようとするM&Aサクシード。社会の持続的な発展を現実のものとする手段として、こうした事業の発展的な合従連衡はさらに注目を浴びることになるだろう。

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