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「カギ」は伝票番号、美和ロックの戸別宅配システム

2023年3月10日 (金)

▲共用部用のコード・テンキーリーダー(出所:美和ロック)

サービス・商品建築用錠前メーカーの美和ロック(東京都港区)は10日、マンションなど集合住宅のセキュリティーゲート(オートロック)を宅配の配達員が通過できるようにする戸別宅配システム「ココ配」のサービスを、ことし4月から始めると発表した。トラックドライバー不足やEC(電子商取引)の急拡大、トラックからのCO2排出という物流の課題に対し、宅配の再配達の低減が求められ、そのために居住者不在時のゲートの一時的な解錠方法が複数開発されている。美和ロックのシステムは、宅配荷物に貼られている送り状(伝票)の番号やバーコードを「ワンタイム通行キー」として使うのが特徴だ。

発表によると、「ココ配」でのセキュリティーゲートの解錠は次のような流れとなる。まず、届け先のマンション入居者がスマートフォンを使ってココ配のクラウドシステムに宅配荷物の伝票番号を登録する。次に配送業者が「発送」「配送中」といった配送情報を同システムに送る。同システムと連携しているマンションのゲートの解錠装置には当該伝票番号が送信される。配達員が伝票のバーコードをゲートに備えられたリーダーにかざすと、番号と入居者情報の照合が行われ解錠される仕組みだ。

さらに、マンション内の個別宅配ボックスも配達員が伝票番号を入力することで扉が開き、荷物を預けることができる。宅配ボックスだけでなく、玄関脇への「置き配」を行うことも可能。居住者が在宅でも非対面・非対応で受け取ることができる。配達を終えると、その伝票番号もバーコードも通行キーとしての機能がなくなる。自分が住むマンションへの荷物を持っている配達員だけが中に入れる仕組みを実現し、保安と利便性を両立。再配達による配達員の作業負荷とCO2排出も低減する。

▲戸別宅配システム「ココ配」の運用フロー(クリックで拡大)

このようなオートロックの解錠方法は近年、IT企業や物流企業が競うように開発しており、ほかにも専用端末アプリや、スマートフォンアプリ、配達員の顔認証を使う手法がある。美和ロックはココ配の長所として「配達業者側で特別な端末やアプリを必要とせず、導入が容易で、より多くの配送業者の利用が可能」という点を挙げている。

「使いやすさ」に強みを持つ、住宅関連企業ならではの物流DX

EC(電子商取引)サービスの拡大をはじめとする消費スタイルの多様化は、物流に劇的な変革を迫っている。個人宅への配送はその象徴であり、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)による効率化が最も急がれる領域の一つだ。

とはいえ、宅配における業務効率化に向けたハードルは非常に高いのも事実だろう。新型コロナウイルス禍も契機として、個人消費者によるECでの購買スタイルはすっかり定着。法人需要も含めて、店舗から宅配への購買シフトはさらに加速するだろう。

一方で、荷物を届ける方法については、「置き配」や専用ボックスなどでの受け取りサービスが少しずつ定着してきてはいるものの、やはり戸口での対面が主流だ。ところが、それを担う人手は慢性的に不足。いわゆるラストワンマイル輸送における担い手の確保は、今後も困難を極めると予想される。こうした経緯から、宅配機能の効率化が喫緊に解決すべき問題として浮上しているのだ。

では、ラストワンマイルにおける業務効率を高める具体策はあるか。それを物流事業者だけに求めるのも限界がある。むしろ、こうしたテーマに対応したビジネスを生み出しているのが住宅関連業界だ。戸別宅配サービスの改善策であるならば、まさに「蛇(じゃ)の道は蛇(へび)」というわけだ。

(イメージ)

美和ロックが4月に開始する、集合住宅の新しい戸別宅配システム「ココ配」は、荷物の送り状番号が通行キーになる機能を活用して再配達を減らすサービスだ。集合住宅への配送の場合は、配達者による建物内への立ち入りの可否が問題になる。荷物を届けるためにスムーズに入場できる一方で、その用務が終了すればその権利を消滅させる必要がある。こうしたフレキシブルな対応も、最新の技術を活用すれば可能になるのだ。

物流業界でDXというフレーズを聞かない日はない。しかし、その本質は決して、一握りの技術者によるハイスペックな機器やシステムによるものではない。むしろ、それをアルバイトの配送者からIT機器の使えない高齢ドライバーまで幅広くストレスなく活用できる仕組みが必要なのだ。今回の美和ロックの取り組みは、鍵メーカーだからできる「究極の物流DX」なのかもしれない。(編集部・清水直樹)

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