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「課題はどこに?」、悩む物流担当者への処方箋

2023年5月22日 (月)

話題かつて、ここまで物流改善の機運が高まったことがあっただろうか。「物流の2024年問題」を筆頭とする物流クライシスに対する危機感から、今や一般メディアでも、物流が抱える課題を、しかも頻繁に報じられるようになった。

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だが一方で、当事者である物流事業者や荷主企業の中では、「そうは言っても、何から取り組んで良いのか分からない」といった、困惑の声も聞こえてくる。

「微熱があり、胃腸の具合も良くない。だから、たぶん病気なのだろうが、何の病気なのかが分からず、そもそも病巣がどこにあるのかが分からない」--あくまで筆者の肌感覚ではあるが、そんな悩みを抱える物流事業者や荷主が増えていると感じている。直感的に、課題の存在は感じているものの、その課題を具体的に把握することができていないのだ。

あるいは、課題の輪郭はつかんでいても、対策が進んでいない企業もいる。こういった企業の場合、課題の全容をきちんと掴みきれておらず、あるいは言語化が進んでいないため、課題の共有ができず、対策に取り組むことができていない。こうした悩みに対する現状打開策のひとつとなるのが、日商エレクトロニクス(東京都千代田区、日商エレ)が実施している「配送業務診断サービス」である。(物流ジャーナリスト・坂田良平)

1年後に迫った「物流の2024年問題」すら7割の企業が取り組めていない現状

そもそも、これだけ「物流の2024年問題」が話題になっているにもかかわらず、当の物流事業者や荷主の取り組み状況は芳しくない。

パーソルホールディングスが22年6月に公表した「物流業界の『2024年問題』実態調査レポート」によると、「自社・取引先のいずれかが『影響を受ける』」と考える企業が約6割もいるものの、「『物流の2024年問題』に取り組めていない」と答えた企業が、約7割もいる。

同レポートから、「『物流の2024年問題』に取り組めていない理由」のTOP3を紹介しよう。

1位 社内の課題認識があまり無い(19.4%)

2位 推進する人材が社内にいない(15.0%)

3位 何から対応すればいいかわからない(13.6%)

ちなみに、「物流の2024年問題」に抵触する「1年の拘束時間が3300時間以上の運転者」の割合は、全体の26.6%という調査データもある。(出典:「『物流の2024年問題』の影響について」(NX総合研究所))

既に問題の発現まで1年を切った「物流の2024年問題」においてですら、「何から対応すればいいかわからない」「社内の課題認識があまり無い」といった理由で、取り組みができていないという現状は、極めて危機的である。なぜ、このようなことになってしまうのだろうか。

課題を定量的に分析することの大切さ

日商エレDX事業本部イノベーション推進部の大西俊輔チームリーダーは、その原因について次のように考えている。

▲日商エレDX事業本部イノベーション推進部の大西俊輔チームリーダー

「そもそも、経営層が課題意識を持っていたとしても、その下、特に現場レベルまで課題意識を共有できていないというケースがある。課題を共有するための『ツール』がないため、課題の全社共有もできない。結果、課題解決のための議論や取り組みが進まない」

一方で、池上啓司部長は「実際に物流業務の業務分析を行ってみると、『今まで気がついていないところに重大な課題が潜んでいた、あるいは大事だと思っていた課題が、意外と問題ではなかった』といったケースがある」と経験談を語る。

一例を挙げよう。配車計画の最適化を図る際、ネックとなる要素のひとつに時間指定がある。

配送先Aは9時指定、配送先Bは11時指定、配送先Cは15時指定だから――。世の多くの配車担当者は、このような時間指定配送を絶対的なものとして配車計画を立案する。配車担当者も、「時間指定配送がなければ、もっと効率の良い配車計画が組めるのに」とは感じている。感じているが、指定されている時間を変更したり、あるいは時間指定そのものをなくすためには、荷主や配送先と交渉しなければならない。その労力を考えると、結局「時間指定は絶対だからな」と自分を納得させ、受け入れてしまうのだ。

「日商エレは、現状の配車実績を業務分析する配送業務診断サービスを提供している。時間指定配送がある運行実績と、ないものとして最適化を前提に計画立案を行ったケースを比較し、時間指定配送が、理想の配車計画立案を行う上でどれほどの阻害要因となっているのかを定量的にレポートすると、多くのお客様が、そのインパクトの大きさにショックを受ける」(池上氏)

肌感覚として「時間指定配送がなければ…」と想像することと、その違いを分析し定量的に示されるのでは、当然ながら後者のほうがよりインパクトは大きいのだ。

「データで示す」ことが大切な理由

池上氏は、「業務改善を行いたい経営層と、変化を嫌がる現場の溝を埋める手段として、業務分析データによる共通理解が必要だ」と語る。経営者が現場改善に取り組もうとしても、現場担当者らが反発することは、物流業界に限らず、よく耳にする。

反発する理由はさまざまだが、ひとつには、現場担当者らが実際に行わなければならない「改善のための労力」に対し、見返りとなる改善効果(あるいは、病巣の深刻さ)を、経営者側がきちんと示せていないケースがある。

先に挙げた、時間指定配送のケースでも、配車担当者は肌感覚として時間指定配送が配車計画最適化のボトルネックとなっていることを感じつつも、時間指定配送見直しのために荷主・配送先と交渉するほどの価値があることだとは考えていなかった。

▲日商エレDX事業本部イノベーション推進部の池上啓司部長

「きちんと業務分析を行い、データというコミュニケーション手段で共通理解を得ることが大切だ。改善効果を分析し、データで示すことで現場からの協力を得ることができるようになる」(池上氏)

一方で、池上氏は「業務分析で見えてくるものは、悪い点ばかりではない。良い点もきちんと見えてくる」とも説明する。一例を挙げよう。

運行実績を分析すると、それぞれのドライバーの良い点、悪い点が見えてくる。特に、ベテランドライバーや、的確な課題追求をしてくるドライバーなどの運行実績を業務分析すると、やはり良いパフォーマンスをしていることが、データとして裏付けられるというのだ。

「優秀なドライバーに対し、定性的な評価ではなく、定量的にその優秀さを認めてあげることも、改善活動を推し進める上ではとても大切なことだ」(池上氏)

こういったデータを元に、例えばAI最適配車サービスを用いて、全ドライバーの平均パフォーマンスを、優秀ドライバーの8割程度引き上げるよう支援するのが、業務分析の目的なのだ。

配送網の統合や、人員配置の最適化も見えてくる、「配送業務診断サービス」とは

日商エレが提供する「配送業務診断サービス」とは、配送業務の業務分析を行い、シミュレーションを実施、あるいは業務の見える化を行うことで、業務変革の「目指すべき姿」を具体化していくサービスだ。

その精度は極めて高い。「業務分析を行うのであれば、中途半端な可視化では駄目。とことんまで現状業務をデータに落とし込み、徹底的な可視化を実現しないと、お客様は納得してくれない」(池上氏)という言葉が示すとおり、「そこまでやる必要があるのか」と思うくらい現場業務の課題を深耕する。

現在の運行実績を定量的に評価し、AI最適配車サービスを導入した場合に、どれくらいの改善の伸びしろがあるかといった分析のほかに、以下のような分析を行う。

・ドライバーごとの業務時間のばらつき

・ドライバーの能力値判定(担当エリアの難易度を考慮し、評価軸を揃えた上での定量的判定)

・配送エリア分けに対する評価分析

・配送周期性(頻度)の可視化と妥当性の判定

(クリックで拡大)

さらに、こうした分析結果を踏まえた上で、配送ドライバー数を減らした場合の総労働時間や、配送担当エリア・配送ルート見直しを行った場合のドライバー総労働時間の変化など、クライアントが求めるさまざまなシミュレーション結果を算出する。

「配送業務診断サービス」は、上述したような条件を複数組み合わせて、よりクライアントにマッチした業務変革の理想像を算出していくサービスといえる。

事業統合などを検証・検討する際に役立つ、「配送網統合シミュレーション」

「配送業務診断サービス」の一部として利用できる「配送網統合シミュレーション」にも触れておこう。「配送網統合シミュレーション」とは、事業承継やM&Aによる、異なる企業の配送エリアや物流センターを統合する場合に、統合後の配送網の最適解を導き出すものだ。

M&Aは、事業承継対策のひとつとして、あるいは事業拡大の施策として、昨今注目を集めているが、物流事業者による事業承継やM&Aの場合、営業エリアが重なるケースもある。これが悩ましい。というのも、異なる事業者が、トラック、ドライバー、物流センターなどの物流リソースを持ち合うわけだから、余剰がでる場合もあれば、逆に不足がでる場合もあるからだ。結果、期待以上の統合効果が得られるケースもあれば、思ったような統合効果が出ないケースも有り得る。

こうした課題に対し「配送網統合シミュレーション」は、統合前の事業者が保有する物流リソースや運行実績、案件などのデータから、過不足を計算し、統合後の最適な拠点計画や配送網を導き出す。現場のデータを用いることで、より高い精度で統合効果を試算できるほか、統合後の最適解から逆算してスムーズな移行計画を練ることも可能となるのだ。

「課題はどこに?」、悩む物流担当者への処方箋が「配送業務診断サービス」

冒頭にも言及したとおり、これほど物流変革の機運が高まったことは、これまでなかった。理由は明白だ。トラックドライバー不足を原因として、運賃、ひいては物流コストが上がっているからだ。

残念ながら、少子高齢化が進み、労働人口が減少し続ける日本社会において、トラックドライバー不足が解消する見込みはない。人手不足は国内の全産業共通の課題であり、他の職業を出し抜いて、トラックドライバーが突然人気職業になる目はないからだ。

ゆえに、業務の効率化や生産性向上、省人化を推し進め、不退転の決意で物流変革に取り組まない荷主や運送会社に、生き残る道はない。

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ただし、「物流クライシスの危機感は、十分認識しているつもりだ。だから不退転の決意で物流改革に取り組みたいとは思っているものの、課題の全容をきちんと掴みきれていない。あるいは誰にでも理解できる形での言語化が進んでいないため、課題の共有もできない。したがって対策に取り組むことができていない」と悩んでいる企業も少なくないだろう。

大西氏は、このような悩める企業に対し、「『配送業務診断サービス』を利用することで、改善の取り組みに対する費用対効果や、あるいは運送会社・トラックドライバーの働き方や待遇の改善に資するものがあるか、証明することができるようになる」と説明する。

物流改革に悩む企業の担当者には、ぜひ日商エレの「配送業務診断サービス」をお勧めする。改善への取り組みありきでスタートするのではなく、まずは現状把握から手軽に開始することができる「配送業務診断サービス」は、間違いなく、物流変革に取り組むための第一歩となるはずだから。

<<第1回 日商エレ「AI最適配車」が配送効率化の局面変える

>>第3回 本当に満足できる配車システムを見つける方法

日商エレクトロニクス
所在地:東京都千代田区二番町3-5麹町三葉ビル
電話:03-6272-3073
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