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わずか3分の初仕事/ドライバー日誌第9回

2023年6月1日 (木)

(イメージ)

話題飲料水の箱に雨除けのビニール袋をかぶせる作業を何とか仕上げると、それを抱えて配送先の玄関に急ぐ。積み込んだ時と比べてもずっしりと重く感じるのは、やはり初の配達業務ということで過度に緊張しているためだろうか。

玄関の門扉を開けると、飲料水の注文主と思われる家人の女性が玄関口で待っていた。「お水の配達でございます」。今度ははっきりと声を出すことができた。とはいえ、20キロを軽く超える重さのある箱を両手で抱えながら歩く作業は、なかなかスムーズにいくものではない。

配送員でさえ重いと感じる商品であることから、顧客が運ぶ距離をできる限り短くする配慮も必要だ。「どちらに置かせていただきましょうか?」と注文主に尋ねるのはそのためだ。

▲玄関先に荷物を置く。ビニール袋を外しておくことに直前で気づいたが…

家人の女性は、玄関を上がったところに敷かれているマットを指した。「こちらに置いてもらえれば」。雨粒でぬれたビニール袋をかぶせたままでは、布の玄関マットがびっしょりと冷たくなってしまう。玄関の中に入る前にビニール袋を外しておく必要があることに気づいた。後日、物流センターの先輩に聞いた話だが、ビニール袋を掛けたまま玄関に置いてしまい、クレームにつながる事例もあったそうである。

インターネットで決済している顧客には、ここで領収書を兼ねた納品書を手渡す。そして配送側が会社に提出する控え伝票への押印またはサインをお願いする。女性はサインを選択したのだが、氏名を記入するための台がないことに気づいた。女性は、玄関扉の壁に向かって伝票を押さえながらサインを書き込むこととなった。「大変申し訳ありませんでした」と謝罪しながら、最初の顧客宅を辞した。

配送ドライバーとしての初仕事は、わずか3分足らずで終了した。しかし、成否を含めた多くの学習ポイントが浮き彫りになった時間でもあった。とりわけ、バインダーなど記載台の用意を失念していたことは、大きなミスであった。(つづく)

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