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仏の心境で/ドライバー日誌第12回

2023年6月13日 (火)

話題飲料水の配送業務の初日、2番目の訪問で遭遇した「置き配」対応。伝票を確認したところ、顧客からは「不在時に玄関扉の左側に置く」との指示が出ている。とはいえ、家人がいつ帰宅するか分からない状況で、玄関先ではあるものの屋外に飲料水の商品を置いておくのである。ましてやこの日は雨である。きっちりとした対応が欠かせないのは、1年生ドライバーの私でも分かることだ。

(イメージ)

まずは、顧客の携帯電話へ配達時の置き配について連絡を入れる。伝票の記載から顧客の意思ははっきりしているものの、ここは念には念を入れて置き配の可否を再確認する。「ご不在のようですね。玄関扉の左側に置かせていただきます。よろしいですか?」「大丈夫です、ありがとうございます」

置き配の了解を得られたところで、次の作業に入る。箱をビニール袋で二重に覆う。ここで大切なのは、ビニール袋のかぶせ方だ。最初に袋で覆ったのち、反対側から2枚目をかぶせることで、雨水の箱への付着を抑えるのだ。一重だけではもしも、袋の口が風で開いてしまえば、そこから雨水やほこりなどが入り、箱が汚れる可能性があるからだ。

「置き配なのだから多少の箱の傷みは仕方ない」との言い訳は許されない。それがプロの配送員というものだ。何よりも、顧客の悲しむ顔が目に浮かぶではないか。

▲雨天時の配送における強い味方であるビニール袋。「荷物をぬらさない」こだわりを持ち続けたい

とはいえ、風雨の中でビニール袋を箱に施す作業は、なかなか進まないのも現実だ。少しでも箱に雨水が滴らないように荷台の中で作業をするのだが、手際よく急いでやろうとすると逆にビニールに穴が開いたりしてうまくいかない。ここは「仏」の心境で冷静に手を動かすことに徹する。「急(せ)いては事を仕損じる」との言葉を何度も頭の中で念じながら。

二重にビニールをかぶせ終えると、速やかに指定された玄関扉の左側に置く。後でかぶせたビニールの口が家の壁に向くように置き、床を軽くタイルで拭って水滴をなくしておくことも忘れない。最後に納品書をポストに収めて完了だ。2軒目の訪問宅の到着時から4分。かなり時間を掛けてしまった。(つづく)

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