ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

WES不要論を徹底検証、ロボット物流に黄信号〜第1章

困惑する現場、物流事業者とITベンダー間に温度差

2023年6月30日 (金)

話題「物流の自動化? ない、ない。全然始まっていないよ」

物流関係者に話を聞くと、返ってくるのはおおよそ、このような答えだ。物流の2024年問題や人手不足問題が取りざたされ、日本ではここ数年で、物流の「自動化」が推奨され始め、それに伴って物流業界では3文字のアルファベットの用語をよく耳にするようになった。

横文字ラッシュに戸惑う現場

TMS(輸配送管理システム)、AGV(無人搬送車)、AMR(自律走行搬送ロボット)……こうしたITやシステムの単語は、とどまることなく増え続けている。突如増えた横文字に混乱している物流関係者も少なくない。

横文字ラッシュが続く背景には、省力化・省人化が必要とされる未来が統計上で見えてきたことがある。そして、物流は自動化やシステム化と縁遠い未開拓市場であったため、たちまち目新しいソリューションが台頭した。

では、なぜこれほど多種におよぶのか。実は「物流」と一言にいっても、中身を見ると「輸送」「保管」「荷役」「包装」「情報」「流通加工」と工程ごとに役割や動きが異なっている。そして、それぞれに対してロボットやシステムが開発されたために、複雑化しているのだ。

物流自動化を支える3システム

一般に物流の自動化やIT化を支える中枢のシステムは3つある。

1つ目はこれまでも利用者が多い「WMS」がある。「ヒトとモノ」が関わる作業を管理する。現場の在庫、ロケーション、入出庫の管理ができる。商品が入庫した際は、入庫予定をもとに検品、入庫数量とロケーションを入力する。出庫時は出庫指示のもと、出庫数量を入力し、出庫伝票や送り状を出力。棚卸しやスタッフの進捗管理にも活用できる。

2つ目が「WCS」。倉庫内のロボットを制御するシステムで、「ロボット」が関わる部分を管理する。AGV、AMR、自動倉庫、ソーター、ロボットアームなどをそれぞれの目的に合わせてリアルタイムで指令を送信し、動作させるものだ。例えば、ソーターであれば、方面別・店舗別などで経路を指令することで、商品が仕分けられる。

そして、3つ目となるのが工程別に多くのロボットが台頭したことで注目され始めた「WES」だ。WMSとWCSを接続する役割を担う。制御するロボットが複数におよんだ場合に、倉庫内の「ヒト・モノ・ロボット」の運用が滞りなく流れるように、状況を把握し、実行する。この3つを導入し運用を最適化することで物流の自動化がかなうといわれている。

(システムベンダー各社の資料を参考に作成)

ヒトの仕事を奪うシステムはいらない

しかし、中小の物流事業者とITベンダーとの間には温度差が少なからずある。今は、これまでWMSだけで動いてきた現場が、WCSとロボットの導入を検討し始めた段階というのが大方の見方だ。そして、直接WMSとWCSの接続もできるため、特にWESは「不要ではないか」との意見があるのが実情だ。

実際、ある3PLでは「自動化の『じ』の字も始まっていない」とスタッフがため息を漏らす。現場が課題を感じていないわけではないが、日々のオペレーションを抱えながら、大きく手法を変えていくほどの余裕もなく、決裁権もないからだ。

一方、決裁権を持つ管理職や経営に近い層はアナログかつ人海戦術の力技で何とか現場を回してきた経験がある。まだまだ、ヒトで回せる自信があるし、人手不足を実感していない。そのうえ、自動化が現実味を帯びてくれば「ヒトの仕事が奪われる」という一抹の不安もある。

米国では、その動きがすでに始まっている。米ウォルマートは、物流の自動化に伴い従業員を数百人規模で削減すると2023年3月に明らかにしている。

本当にWESはいらないのか。第2章では、物流現場の担当者の声とWESを導入した物流会社の事例から確かめていく。



自動化の拡大をコスト・運用面から支えるWES(YEデジタル)


自動化機器の円滑な”チームプレー”を実現(シーイーシー)


シーネットが目指すWMS起点型WESでの業界標準(シーネット)


物流最適化の最終ゴールまで、歩みを止めない(東芝デジタルソリューションズ)