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WES不要論を徹底検証、ロボット物流に黄信号〜第2章

問われるWESの存在意義、現場が突き付ける課題は

2023年6月30日 (金)

話題第1章では物流業界で横文字が急増する背景や現場のシステム導入への温度感について触れてきた。この章では、WESの存在価値に対する物流会社の本音と過度なシステム信奉がもたらすリスクについて取り上げる。

今のWESは“単なるコネクター”

「時期尚早。コスト面で合理性に欠け、必要性を感じない」

WESの現場への導入検討について、大手3PL企業の現場担当者のA氏は、こう言い切る。以前、システム会社から現場への導入を提案されたこともある。しかし、現時点では静観の姿勢を貫いている。

「システムベンダーが物流事業者とロボットメーカーの間に割って入ってきているだけの気がしてならない。未完成のものを売られているとしか感じられない」(A氏)というのが理由だ。

これが現場を預かる事業者から見た、WESに対する忌憚(きたん)のない意見だ。ITベンダーがいくら「現場の一元管理化を実現できる」と喧伝(けんでん)してもリアルな現場を受け持つ事業者に否定されては、WESの存在意義は脅かされる。

A氏が指摘するWESの問題点とは何か。「システムとロボットの接続を誰が負担するのかわからない状態」(同)が、まずあるという。

次に、「いろんなメーカーのロボットを導入した場合、メーカー各社と個別に保守契約を結ばなければならない。複数のロボットを利用する側としては、そこが一元化されないと使えない」(同)と指摘する。

複数の機器をつなぐハブとしての機能がWESの特長だが、保守契約が一元管理できていなければ、修理やメンテナンスの依頼、請求などはメーカーごとに対応が必要で、手間がかかる。

「売れているロボットベンダーは、そもそもWESを想定して売っていない。WESは『単なるコネクター』という認識。つなぐだけのシステムに価値があるとは思えない」(同)というのが利用者側の本音だ。

過度なシステム依存がもたらすリスク

こうした現場の要望に応える、現場ごとに最適なロボットソリューションを提案・構築し、従量課金制で提供するサービスも現れている。コンサルティングなどのスタート地点から、メンテナンスなどの保守体制も整備しパッケージ化した。大手商社やベンチャー企業などが目を付け始めている。

一見、理想的なサービスに思えるが、A氏はサービスについて「リスクが一極集中しすぎる」ことを懸念する。確かにサービスを利用することで現場の省人化・自動化は達成されるかもしれない。

しかし、現場の正常な稼働までもシステムベンダーに委ねる状況になれば、現場をつかさどる管理者はトラブルへの対処法を持たず、システムを刷新するという発想すら持ち合わせなくなる。

このことは、現場のシステムを統括するWESにも当てはまる。システム全体を中心で統べるWESがもし止まったとしたら、現場にはどうすることもできなくなる。

そのような状態で、「もしベンダーがシステム利用料を値上げすると言ってきたら、従わざるを得ない状況になる。“逃げ場がなくなる”」というリスクをA氏は強調する。

これは市場原理に基づいた話だ。このような事態を回避するにはどうしたらよいのか。利用者側の努力として、市場原理を理解することは当然としてある。

ただ、WESはまだ萌芽(ほうが)期で、普及はこれから。同様のサービスが出て1つのシステムに依存しない状況が生まれ、ある程度の市場原理が働くには時間が必要だ。A氏は、それには「あと5年はかかる」と見ている。

物流会社から敬遠される傾向にあるWESだが、導入で成果を上げている企業もある。第3章では福岡にある3PL会社の活用事例を見ていく。



自動化の拡大をコスト・運用面から支えるWES(YEデジタル)


自動化機器の円滑な”チームプレー”を実現(シーイーシー)


シーネットが目指すWMS起点型WESでの業界標準(シーネット)


物流最適化の最終ゴールまで、歩みを止めない(東芝デジタルソリューションズ)