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空中配送ロボット、世界初の都市部実証がスタート

2023年11月17日 (金)

記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「パナ・東急・UR、郊外住宅地で空中配送ロボ実証」(11月6日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

調査・データパナソニックホールディングス(HD)と東急、都市再生機構(UR都市機構)は17日、川崎市麻生区のUR虹ヶ丘団地における、空中配送ロボット技術を活用した新しい配送サービスの実証実験を開始、現地説明会を開催した。3社は10月13日に連携協定を締結しており、24年3月末まで協働での実証を進める。

▲受け取りボックス

空中配送ロボットは、空中に張られたワイヤーをつたって発送場所から受け取り場所まで自律移動し、受け取りボックスに商品を格納する仕組み。利用者は専用アプリからフードデリバリーサービスと同じような要領で商品を注文し、受け取りボックスで商品を引き取ることができる。

今回の実証実験では、東急ストアの商品や吉野家の牛丼などが注文・配送の対象となり、担当者が出発点で配送ロボットへの積み込みを行い、注文者はアプリで表示される確認QRコードで、受け取りボックスから注文品を取り出すことができる。ロボットを開発したパナソニックHD事業開発室ESL研究室は、今回の実証実験では注文から最短30分で受け取りボックスに格納できる仕組みを構築、将来的には10分単位で受取時間を指定できるように精度を高めていく。また、初期無料とする送料も、他のスーパー配送料金よりも優位性ある価格料金設定での有料化を想定して、実装に向けた検証を進める。

空中配送ロボットは2024年問題における物流・配送領域の人材不足への対応として、さらにバスやタクシー業界における人材不足から普段の買い物にも不便が生じる買い物困難者の増加への対応策として、3年前から研究が進められ、これまで伊豆の山間地域での実験を重ねてきた。

今回、ロボットを開発したパナソニックHD、都市近郊エリアにおけるサステナブルな地域ネットワーク構築で新しいまちづくりを目指す東急、少子高齢化・人口減少が進む社会の中で、郊外住宅地の課題解決に取り組むUR都市機構との3社連携協定により、世界初となる都市部での実証が実現、地域課題の解決や地域の活性化、郊外住宅地の持続的な価値向上を目指して協働していく。

▲配送中の様子

同様の空中配送の仕組みとしてドローンと比較されるが、開発担当者は「安全性」(ドローンと違い落下しない)、「静寂性」(ドローンより圧倒的に静かで夜間の日常配達も可能)、「省エネ」(1回の充電で8時間稼働)などでの優位性に自信を示す。一方で、ワイヤー設置のための電柱設置などが必要であること、運用上の法整備もドローンのようには整理されていないことなど、実装に向けてはまだ調整が必要、事業スキームも今後検討していく段階という。

実証実験では、利用データから活用頻度、利用目的などを調査し、地域の生活への影響などの検証を重ね、高齢者や子育て世代にとって暮らしやすい郊外住宅地の創造を目指し、社会実装へ向けた道筋を探る。