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LOGISTICS TODAY24年問題セミナー開催

標準的な運賃見直し案、ドライバー支援「きめ細かく」

2023年12月15日 (金)

話題トラックドライバーの労働力不足を主因とする2024年問題について官民で意見を交わす大型企画「物流2024年問題対策会議」(LOGISTICS TODAY主催)が15日、2日目のセミナーが開かれた。東京都港区の「赤坂プラスタ」大和ライフネクスト本社イベントスペースをリアル会場とし、同時にオンライン配信も行って、ハイブリッド開催された。

注目されたのは、ゲスト登壇した国交省の齋藤永能・トラック事業適正化対策室長。この日、同省が、トラック運送の運賃を算定する目安「標準的な運賃」について、学識経験者らでつくる「検討会」が取りまとめた見直し案を公表したためだ。

▲齋藤永能氏

「標準的な運賃」や、国交省が運送事業者に対して定める「標準運送約款」は、23年6月に政府が取りまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」で、23年中に見直しするとされ、検討会で議論が進められてきた。

貨物自動車運送事業法では、地域や車種ごとに「標準的な運賃」を規定。運送業者は、こうした目安を参考指標とし、荷主との運賃交渉に臨む。「標準的な運賃」は2020年4月に初めて告示され、今回が初めての見直し作業となる。

トラック運送事業者は、荷主企業に対して、交渉力が弱いため、貨物の運送先で契約にない荷役などの付帯的な作業を指示されたり、長時間の荷待ちを強いられたりすることが多かった。国交省によると、実際にトラックドライバーの拘束時間のうち、荷積み、荷卸しに伴う荷待ち、荷役作業時間が2割を占めているというデータもある。

セミナーで齋藤氏は、赤澤裕介・本誌編集長と対談。見直し案の発表について「タイムリーだ」と振り返り、「きめ細かな対応になっている」と内容について評価を示した。

▲赤澤裕介・本誌編集長(左)と齋藤氏の対談

公表された見直し案は、荷主らへ適正に価格転嫁できるよう運賃表を改定。平均8%運賃を引き上げたほか、運賃表算定の根拠となる原価のうち、高騰する燃料費を120円に変更し、燃料サーチャージについても120円を基準価格に設定した。

また、トラックドライバーの長時間労働の要因の一つとなっている、発着荷主の積み卸し場所での長時間の荷待ち、荷役について、現行の待機時間料に加えて、荷役作業ごとに「積込料・取卸料」を加算した。荷待ちや荷役時間が合計2時間を超えた場合は、割増率を5割に加算した。

さらに、業界の根深い問題として指摘されている多重下請け構造についても是正に向け措置が取られた。運賃の10%を別に収受する「下請け手数料」が設定されるなどした。

齋藤氏は、こうした見直しに言及し、国交省の施策について「取り組みが日々着々と進んでいる」との見通しを語った。

セミナーではほかにも、「運送とDX(デジタルトランスフォーメーション)」が主要なテーマになった。

フェリー輸送から建築現場へのラストワンマイル輸送まで一貫輸送を展開する「NBSロジソル」(大分県日田市)では、切り口としてドライバーらにスマホを支給。コミュニケーションをデジタル化している。同社の河野逸郎社長は「踏み込むべきは、運送会社同士の業務のやり取り。システムでつなぎ、データ連携などをすることが、チャレンジングだ」と述べ、荷主企業や協力会社へと広げていく展望を語った。

▲(左から)赤澤編集長、フジトランスポートの松岡弘晃社長、NBSロジソルの河野逸郎社長、Chatworkの山口勝幸副社長

また、運送業向けのクラウドサービス「ロジポケ」を提供するX Mile(クロスマイル、東京都新宿区)の野呂寛之社長は、現状の運送業界でのDXについて、「企業を訪問すると、ドライバー名簿が多量の紙で出てくるなど、基礎データがクラウド化できていないケースも多い。労務管理などの手前で、すでにハードルが高い場合がある」と指摘した。

野呂社長は、人件費などをデータ化し、ドライバーの拘束時間など勤怠管理を見える化することが、荷主との運賃交渉で活用できる利点を語り、人材採用などにも結びつけていくことも可能になるという。野呂社長は、こうした取り組みを「理想の姿だ」と話した。

▲X Mile 野呂寛之氏

24年問題への対策は、労働面からもアプローチされている。トラックドライバーの長時間労働の是正のため発着荷主などに対して改善を働きかける厚生労働省の「荷主特別対策チーム」の國府田純一氏らも、事前収録された動画で出演。國府田氏は「荷主企業の一部の方は、荷待ちの発生を理解していても、トラックドライバーの長時間労働につながっているという認識が薄い」と指摘。「荷主企業にも長時間の荷待ち改善に向けて、積極的に対応いただきたい」と協力を求めた。荷主企業の取り組みについては「まだ道半ば」とした。

全国の情報メール窓口には22年12月〜23年10月に、ドライバーから発着荷主などで発生している恒常的な長時間の荷待ち情報などが500件寄せられている。さらに、国交省のトラックGメンとも連携を進めているという。

閉幕時には、赤澤・本誌編集長が挨拶に立った。標準的な運賃の見直し案公表などを念頭に、「24年問題に向けて国の対策もレベルアップしてきた」と語り、「最新の情報を把握し、物流を止めないという目的のために、しっかりと取り組んでいただきたい」と述べて、セミナーを締め括った。

2024年、これまでの物流課題対応が試される時

標準的な運賃8%引き上げ、下請け手数料など提言

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LOGISTICS TODAY編集部
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