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キユーソーティス社長が語る24年問題

ドライバー絶対数増加が至上命題、立場の低さ改善を

2024年1月1日 (月)

話題食品大手のキユーピーグループ会社、キユーソー流通システムの機能を担うキユーソーティス(東京都調布市)の山田啓史社長が、LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長の取材に応じた。業界の事情や、グループ特有の事情が重なり、コロナ禍以前への物量の回復は、見通せない現状が続いている。そんななかで直面する2024年問題への対策などについて語った。

一般的な経済情勢が新型コロナウイルス禍からの回復を示しているのに対し、山田社長は「世間で言われているような景気回復は、食品物流ではまったく感じられない」と危機感を示した。インバウンド需要の回復についても、コロナ禍前の19年までの需要とまったく種類が違うとみている。また、コロナ禍を経て、サラリーマンらの生活様式や食生活の変化が、物量が戻らない一因となっているようだ。

さらに、キユーピーグループ特有の事情もある。キユーソーティスは、マヨネーズなどの原料になる卵の取扱量が多い。そのため、鳥インフルエンザの被害などで出荷できない農場が出たことも大きく影響している。

▲キユーソーティスの山田啓史社長

そうしたなかでも、ドライバー不足が懸念される24年問題について、山田社長自身が実感させられたのが昨年末だったという。昨年末の繁忙期は、車両不足となり、同社に車両を確保する集車力が足りないことを初めて痛感した。当然、マスコミ報道などで、ドライバー数の減少などについて把握していたものの、山田社長は「気づいたらその渦中にあった。それが正直な心境だった」と複雑な心情を振り返った。

そうした問題への対策として、山田社長は「24年問題の起点はドライバーの働き方改革。そこが抜けている」と語る。運転手としての経験もある山田社長は「ドライバーが選ばれない職業になっている」とみる。社会的地位、ステータスの低さなどが原因だ。「この仕事がないと(社会が)成り立たないのに、どうしてなのか」。そう疑問を感じることも多かったという。

そんななかでも、同社には20歳前後の若者が入社してくることもあり、意外さを感じている。さらに、定着率を高めるために、大切に育てていくとし、「自信を持って、この仕事をしてほしい」と訴えた。24年問題をきっかけにして、世の中が物流、特に運送について、認識を改めてもらいたいと感じている。「そういう世界になってほしいのが、本当の望みだ」と語った。

一方、食品など多くの製品が値上がりしていることにも言及。「値上がりの根拠には、物流費の高騰もある」としつつ、「だが、物流費にはそこまで還元されてきていない。燃料費も、設計から数十円違うところで推移し、コストのベースがかなり上がってきている」と指摘する。「物流費に多少還元されたとしても、スズメの涙ほどであって、物流業界全体の底上げやステータスを上げるほどには、到底及ばない」との見方を示した。

また、24年問題を迎えることしの取り組みについて、山田社長は「大変な年だからこそ、ドライバーの絶対的な数を増やすことを至上命題として、絶対にやらなくてはならない」と力を込めた。メーカー側からも、付帯作業は一切させないと、納品先などに通告してもらっているという。これは同社では前例のないことだという。山田社長は「そういう協力を得ているからこそ、私たちが運べませんというのは、シャレにならない。運ぶ力を持つことを、至上命題だと思い、全社で取り組んでいく」と語った。

取材には、求荷求車マッチングサービスを手がけるトラボックス(東京都渋谷区)の吉岡泰一郎会長も同席した。

▲トラボックスの吉岡 泰一郎会長

吉岡会長は、運賃が上がらない一因と指摘される多重請負構造について言及した。その上で、「(サービスの)会員を含め、すべての運送会社の方が、プライドを持って、高い運賃をしっかり取れるように働きかけないといけない。安く運んでしまうと、雪崩のように運賃が下がっていく」と話し、「みんなが踏ん張って、ドライバーがなくてはならない職業だと自覚を持ってやっていかなければ、ほかの業界から人が入ってこなくなる」と危機感を示した。

会員には、車両台数の少ない企業も多い。24年問題に積極的に取り組む一定規模の運送会社からのメッセージを、セミナーで伝えてもらうなどしているという。吉岡会長は「諦めずに、とにかく攻めていかなくてはならない。規模のある運送会社の手法を真似してもらいたい」と語った。