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タクシーアプリ開発のGOが語る、AIドラレコと24年問題

運送業界の事故防止対策にAIは必要なのか

2024年2月29日 (木)

話題2024年問題がかまびすしい昨今、貨物・旅客運送ともに自動車がその主役の座を明け渡しそうにないのは、なぜか。有力な回答のひとつとして、AI(人工知能)の進化が、ヒトによる運転リスクを大きくカバーしつつあるということが挙げられる。

こういうと、まだそこまで「使える」ことを実感できていない読者もいるだろう。そこで、国内タクシーアプリ最大級の45都道府県で展開するGO(ゴー、東京都港区)にあって、AIを活用したドライブレコーダー「DRIVE CHART」(ドライブチャート)事業を受け持つ武田浩介部長に、AIドラレコが、自動車運送事業者にいかほどのインパクトを与えるのか、24年問題の「当事者」たるトラックドライバーの運転体験がどう変わっていくのかを聞いた。

AIドラレコに何ができる?

「GOに何ができるのか」。事業用トラックによる死亡事故がいまだ年200件近くもある現状が脳裏をよぎり、失礼な問いかけから取材は始まった。武田氏は爽やかに笑みをたたえつつも「現状、我々のAIの技術を使って他社にはできないものを提供できている」とよどみなく言い切り、ここだけは揺るがないという気迫が伝わってきた。

▲スマートドライビング事業本部ビジネス開発部の武田浩介部長

ならば、GOが提供するDRIVE CHARTは、ほかのデジタルツールと比べ、運送会社の事故削減に直結するものなのか。これに対しては、「我々のやりたいことは交通事故を削減することで、言ってしまえばドライブレコーダーを売りたいわけではない。あくまで事故を減らす手段の一つであって、その目的に到達するためにはほかのツールでも成り立つかもしれない」と語る。

武田氏が言いたいのは、どのような利便性の高いツールも、使う側の手によって無用の長物になってしまう可能性があるということだ。ITリテラシーが高いとは言えない運送業界にとって、デジタルツールがそうならないようにするために重要なことは、DRIVE CHARTのサービス全体のあり方から見えてくる。

▲車内外を撮影するDRIVE CHARTのカメラ

DRIVE CHARTは、カメラで捉えた車内外の映像から、AIを駆使して車両ごとの危険運転の兆候を分析。アラートが運行管理者に通知されるだけでなく、危険箇所は映像として保存されるため、危険運転の場面をドライバー自らに認識してもらったり、研修資料としてほかのドライバーへの注意喚起に利用したりできるサービスだ。

これらの機能を見れば、DRIVE CHARTがドライバーの事故防止に寄与する、あるいは運行管理者の負担軽減につながるツールであることがわかる。しかし、肝要なのは機能そのものではなく、このツールを安全運転に向けた手段として、最終的には現場の意識改革につなげることにあると、武田氏は語る。

「DRIVE CHARTは確かに事故の未然防止につながりますが、結局はドライバーとのコミュニケーションが大事。ただ取り付けたから事故が減るというものではなくて、会社としての考え方、企業文化みたいなものを伝えるためのきっかけとしてこういうサービスがあると考えている」(武田氏)

▲事故未然防止の仕組み作りに寄与するDRIVE CHART(クリックで拡大)

DXの必要迫られる運送業界、24年問題におけるDRIVE CHART

話は変わり、冒頭の24年問題である。人口減少による人手不足から、今後物流の担い手となるドライバーが減少することは明白ななか、その穴を補完するべく、DX(デジタルトランスフォーメーション)は運送業として生き残るための絶対条件となってくる。運送業界にあって、DRIVE CHARTが果たせる役割とはなにか。

まず、デジタルツールを用いた業務改善に取り掛かる上で重要となるのは、自社のステータスをしっかりとした証拠(エビデンス)をもって認識することにある。安全運転計画を立案、実行に移すには、アナログに頼った、言い換えればヒトの人情によって微調整されたり、法律の網をかいくぐるために改ざんされたりできる数値は意味を持たないのである。ここで真価を発揮するのがデジタルツールであり、運送事業者は確固たるエビデンスを手に入れるため、正確なデータを取得できる方法を何らかの形で用意しなくてはならない。

▲検出シーンの一例。カメラを通して、まぶたの動きなどでAIが危険運転を検出。

その観点から考えれば、DRIVE CHARTのようなAIドラレコが、物流業界で示す存在感は今後ますます大きくなっていくだろう。事故はあくまでも確率論であり、危険な運転をしているドライバーでもたまたま事故を起こさないかもしれないし、いつも安全運転しているドライバーが、外的要因で事故を起こしてしまうかもしれない。ドライバーを適正に評価するには、無くすべきリスク運転を見逃さない精度の高いAIの技術が必要となってくる。また、検知した危険運転の兆候をドライバー自身にタイムリーに伝えることで、自ら振り返る機会を与えられるという意味でも、確固たる個々の評価というエビデンスを確保するために、AIは必要不可欠なものとなっていくのではないだろうか。

「アナログだとヒトの感情や恣意的な部分が入り込む余地があり、安全運転という目標からぶれてしまうことが多い。デジタルは、特に我々のAIの基準が入っていると、どの車両でも同じ基準で全く同じ条件でデータ抽出できるし、そういうところは信頼性につながる」(武田氏)

もう一つ、DRIVE CHARTによる効能として、運行管理者の業務効率化といった点でも効果を発揮する。通常のドライブレコーダーで一日の7〜8時間に及ぶ運転を確認する作業は、3倍速で見ても2〜3時間はかかる。DRIVE CHARTであれば、AIが自動で危ないシーンだけを抽出するため、指導、教育に充てる時間を確保することにもつながる。

「こういったPDCAサイクルがないと、ドライバーの意識は簡単には変えられない。その一方で、管理者もいろんなことをやらなければならない。時間が制限されるのはドライバーだけでなく、管理者も同じ。オペレーションを見守る側として、自分たちで回る仕組みを作り上げるという点で、DRIVE CHARTは有効だと思う」(武田氏)

▲負荷の少ないPDCAサイクルを繰り返すことが、安全運転意識の醸成につながる(クリックで拡大)

さらに、DRIVE CHARTには「カスタマーサクセス」という導入企業の相談に乗り、交通事故削減のために伴走するメンバーが控える。効果的な使い方を事業者に教示するだけでなく、ドライバーを指導する立場である管理者などに対し、「どのシーンで、どういった声掛けをドライバーにするかなど、従業員のモチベーションを上げるようなコミュニケーションの取り方も提示する」(武田氏)という。DRIVE CHARTでは、リスク運転を削減し安全運転が実践できている事業者を評価し、表彰する取り組みも行っており、事故削減効果の高い取り組みノウハウが事業者に共有される仕組みが整っている。

「デジタルツールは数多くあるが、使いこなせなければ意味がない。弊社がカスタマーサクセスによる支援に力を入れるのは、導入する事業者様にしっかりと活用してもらい、交通事故の削減という効果につなげることを重視しているから。単なるAIドラレコのサプライヤーではなく、事業者様にとって一番頼りになる存在となることを目指している」(武田氏)

▲安全運転の目標達成へカスタマーサクセスが伴走(クリックで拡大)

AIという強み自負するGO、さらなる進化を追求

経営者は誰でも、交通事故をなくしたいという思いがあるなか、市場にあふれた多様なデジタルツールから何を選べば良いのか。

IT領域に強みを持つGOには、AIを教育するスペシャリストがそろっており、今後も精度向上が見込まれ、成長領域であるAIを事業のコアに据えているのは他社と差別化される明確な強みだ。取得したデータをエビデンスとして担保する上で欠かせないのがAIの発達であるが、「我々は誤検知を究極まで削るというところに注力している。AIといえども、精度が悪くて全然違ったものを検知してくると、信頼性が落ちてくる」(武田氏)という向上心も併せ持つ。

GOが自社の強みを認識し、その長所を事業に落とし込み、絶えず進化させていく姿勢があれば、DRIVE CHARTは運送事業者にとって、今後も選ばれるべき安全対策支援サービスとなり得るだろう。それでも、「AIってよくわからない」という事業者、経営者の言い分もわかる。事業形態や規模などの関係でデジタルツールを十分に使いこなせず、結果的に割に合わなかったとなる懸念もあるかもしれない。

「自分たちが本当に必要としているデータを取得できているか、日常の業務に生かせるか、の2点がデジタルツールを導入する上で重要だと思う。安くてもそれが達成できるのであればそれで良いし、機能的に適していないということであれば少しグレードを上げるとか。価格帯が違うものをテストして、自分の会社に合うのかテストをして判断するとわかりやすのではないか」(武田氏)

DRIVE CHARTは、もちろんトライアル運用にも対応している。「自社ではうまく運用できないとか、ITリテラシーがそこまでないとか、ドライバーの意識をうまく変えられないという事業者様に使ってほしい」と武田氏は話す。AIの技術力があるからといって、アタマでっかちにふんぞり返るわけでは決してない。物流の現場と二人三脚で、交通事故の未然防止を推進していく、そのための手段としてAIがある。

「DRIVE CHART」概要

LOGISTICS TODAY編集部 関連イベント情報

物流事業者にとって不可欠な事故防止活動。現状の運行管理体制ではこれ以上の成果が望めなくなってきているなか、ポスト24年に求められる事故防止のあり方を検討する。協力会社を中心に、100台を超える車両のリスク運転を9割以上削減した最新事例も紹介する。
登壇・解説
赤澤裕介(LOGISTICS TODAY編集長)
武田浩介氏(GO株式会社 スマートドライビング事業本部 部長)
相沢誠氏(株式会社OCS 運行管理部門)
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