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絶対量不足に老朽化も、賃貸型冷蔵倉庫の現状分析

2024年4月16日 (火)

調査・データCBRE(東京都千代田区)は16日、「コールドストレージの今」と題した調査レポートを公表した。

コールドストレージ(冷凍冷蔵倉庫)は、扱う荷物による個別性が強く汎用的な開発が難しいが、需要が増加していることから、多くのデベロッパーが市場に参入し、賃貸型コールドストレージの普及が進んでいる。これは食品のEC(電子商取引)化の拡大とともにさらに増加する見込みで、冷凍食品の消費量は2000年以降、年平均プラス1.1%のペースで増加しており、パンデミックの影響で家庭用は伸びた一方で業務用は減少している。22年には消費量が過去最高を更新するなどしたことから需要を後押しする要因となっている。食品EC市場も拡大しているが、EC化率はまだ低く、まだ成長余地があるとされる一方、伸び悩みもみられ、冷凍食品を含む食品類のEC利用の拡大には過度な期待はできないという見解もある。

▲冷凍食品の国内消費量(クリックで拡大、出所:CBRE)

しかしながら、絶対量の不足、施設の老朽化、機械化ニーズの高まりから、新規のコールドストレージの需要は大きい。特に横浜、東京、神戸などの都市部ではコールドストレージの収容能力が不足していることが顕在化しており、重要な国際貿易港の近くでは、国際的な価格変動や政情不安への対応として大容量の保管倉庫が必要とされている状況から、コールドストレージの利用が増加していると見られる。

また、コールドストレージの容積が多い都道府県では、東京のように築40年以上(冷凍冷蔵設備の耐用年数は25年程度とされる)の物件が全容積の45%を占めるなど老朽化した倉庫が高い比率を占め、庫腹占有率も上がっていることから荷物の移管先もなく、建て替えが進まない状況にあるとしている。

▲主要都市の庫腹占有率(クリックで拡大、出所:CBRE)

また、コールドストレージの厳しい作業環境が、さらなる人手不足を招くことから自動化も進められ、食品の安定的なサプライチェーンを守るために、建物の老朽化対策とも相まって、機械化に適した新しいコールドストレージへのニーズが高まっていると指摘している。

このように、コールドストレージの更新需要はあるが、利用者である物流企業にとっては、単価や利益率が低い食品を扱う設備の新設や建替えの投資負担は相対的に重く、これまでは自社施設やBTS型専用センターが圧倒的多数であったコールドストレージ市場でも、施設を賃借する事例が増加。22年以降に開発は本格的に増え始め、首都圏と近畿圏を合わせると、26年までにマルチテナント型のコールドストレージは20棟が数えられるまで拡大する見通しを示す。湾岸部での既存施設の代替や増床のニーズを中心に、内陸部でも最終消費地に近いことから高い配送効率を目指した小容量での開発が進むとしている。

▲主なマルチテナント型コールドストレージ(クリックで拡大、出所:CBRE)

新規のマルチテナント型コールドストレージは、建築費の高騰もあり、高めの賃料設定による高利回りが期待されることからデベロッパーや投資家から関心も高く、マルチテナント型のコールドストレージ開発に参画する企業は26年竣工物件まで含めると10社を超える見通し。

今後は、可変温度帯仕様や、賃借面積の柔軟性、自然冷媒を使用した環境負荷とランニングコストの低減など、施設のスペックが重視されることとなり、普及までの時間や投資を粘り強く継続することで、マーケットが開拓されることになるとまとめている。

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LOGISTICS TODAY編集部
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