ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

「運送会社社長のためのポスト24年問題生存対策会議2days」day2レポ

経営者の覚悟が、中小運送業と物流の未来を変える

2024年6月28日 (金)

ロジスティクス本誌企画イベント「運送会社社長のためのポスト24年問題生存対策会議2days」の2日目となる6月28日のパネルディスカッションに、サンウェイ、エコランドの社長を務める高嶋民仁氏と、カワキタエクスプレス社長の川北辰実氏が登壇した。ポスト24年の運送事業者のあり方について考える今回のイベントの1日目では、M&Aによる事業拡大戦略などの観点から運送事業の集約や再編について議論されたが、2日目は高嶋、川北両氏が中小事業者を代表する形で、中小運送事業者ならではの生存戦略がテーマとなった。

▲サンウェイ、エコランドで社長を務める高嶋民仁氏

高嶋氏は運送事業現場で得た知見からエコランドなどの新規事業を立ち上げるなど、新しい試みを取り入れながら、ポスト24年にふさわしい運送を事業者としてのあり方を追求してきた。運送業界を活性化する人材獲得のためには、適正な労働環境作りが必須として、勤怠管理システム「勤怠ドライバー」を提供しており、コンプライアンスを守る経営、順法精神に則って物流改革を先導する、これから選ばれる事業者を支援する立場でもある。適正な事業者であることこそが付加価値となり、経営者の手腕によってそれを実現できるのが中小事業者だと位置付ける。

確かに、中小事業者にとってピンチである人材獲得を、リーダーシップによってチャンスに変えた川北氏の取り組みは、まさに中小経営者の手腕が光る事例と言えるだろう。

三重県亀山市に本拠地を置く運送業、カワキタエクスプレスは、25台の車両を抱える平均的な地方の中小運送事業者といえるが、それを率いる川北氏の人材獲得戦略は独自のものだ。09年から高校新卒者をターゲットにした人材獲得を進め、若手ドライバーを中心とした社員構成で、その平均年齢は29.9歳だという。高卒人材の獲得に合わせ、これまでの歩合制や出来高制の給与体系から給料制に切り替え、利益を生む事業体制への見直しとして長距離輸送から撤退するなどの事業変革を進めてきた。

▲カワキタエクスプレスの川北辰実社長

また、TikTok(ティックトック)で自ら動画を発信して会社の魅力をアピール。その結果、地方からの移住者も含めた未経験者の採用にも成功したという。その活動の原動力となっているのは、若いドライバーがプロドライバーとして成長することが事業を支えるという信念と「やれることからやってみる」の精神だ。何もせず人材不足を嘆いても仕方ない、そのためには自らSNS発信もいとわない。ドライバーが獲得できれば事業を成長させるチャンスと、できることから成果を残した同社にとっては、「24年問題はすでに解決済み」と語る。

一方、周りの運送事業者の中には、24年問題へのあきらめに近い意見も聞こえてくるという。改革する意思はあるが、その方法がわからないといった経営者に、川北氏は自身の若手ドライバー獲得の取り組みも10年以上かけて挫折を繰り返しながら形にしてきたとして、「次を考えれば、今やるか、やらないか」の判断が、経営者に求められているのではと語った。まさに、経営者の取り組みへの覚悟次第で、事業の未来が大きく変わり、その取り組みが大きくなることで物流の未来も変わるといえる。

中小事業者にとっては、DX(デジタルトランスフォーメーション)も高いハードルだ。運送事業のコスト削減、効率化の取り組みも求められるが、「まずは、勤怠のデジタル化、時間管理や給与計算が見えるようになることがDXの一丁目一番地」と高嶋氏は語る。高嶋氏自身、ITツールの普及においては、アナログなフォロー体制による伴走型の導入支援が必要だったという経験を語り、さらには、それを扱うドライバーの教育が課題となる実情からも、安全以外の広範な領域でもドライバーへの教育が事業成長のカギとなることも指摘された。

対荷主との交渉においても、ドライバーのコミュニケーションスキルによって解決できる場面もあり、運転技術だけではなく、そうしたスキルを磨くこと、またそうしたスキルを評価できる会社とすること、そうした教育ができる人材を評価できる会社とすることが、これからの中小運送経営では重要となる。

運送事業全体の活性化に向けて、まだまだドライバー業務、運送事業の魅力を伝えきれていないというのが2人の共通した認識だ。プロのドライバーのカッコ良さ、必要不可欠な仕事としての大切さ、若い人たちの就労意識に合わせた職場作りに向けて、経営者にはまだまだできることがたくさんある。持続的な事業成長を求めるなら今からでも取り組みを始めなければいけないこと、デジタル化が進んでも、それをアナログな「人」を中心にした事業展開につなげることの大切さ、また、そうしたドライバー教育ができる事業者を、正当に評価できる物流業界となることが大切であることも確認されるディスカッションとなった。

逆境に強い、フジトランスポートの生き残り戦略

■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。

※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。

LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com