ロジスティクスかねてから深刻なドライバー不足に陥っている物流業界では、女性を含む多様な人材の雇用が必要不可欠である。しかし、物流業界は他の業界と比べて女性の割合が極端に少なく、女性進出が進んでいるとは言いがたい。そんな現状を少しでも打破し、女性の業界進出を後押しするため、美容室TAYAと総合物流企業ギオンのコラボレーションが実現した。
そこで見えてきたのは物流事業者の人手不足の実態、女性ドライバーが増えにくい仕組み上の問題だった。
ドライバーは女性にも開かれた職業
今回、この企画のために集められたのは20代(Sさん)、30代(Zさん)、40代(Tさん)の女性ドライバー3人。皆、ギオンで実際にハンドルをとる女性たちだ。
今回のコラボレーションはギオンとTAYAの双方のプロモーションを手掛ける会社を通じて実現したという。企画発案者の一人であるギオン人事部の須藤亮平氏は「現段階では情報を発信すること自体が大事。そのなかで会社のこと、物流課題のことを知ってらもらうことができればいい」と話す。
まずはドレスアップした3人がトラックの前でポーズを決め、記者を交えての写真撮影。随時、TAYAのスタイリストが髪型を整える様子はモデルさながらだった。

▲撮影の合間に髪型を整える様子
その後すぐに3人は普段の作業着に着替えた。女性とはいえ、操るのは迫力満点の貨物トラック。座席に収まり、ハンドルを手にした姿は勇ましくすらある。「女性だから」といった違和感はまったくなく、ドライバー職が男性だけに開かれた職業ではないことを再確認できた。
女性進出を阻む仕組み上の問題
室内に場所を移し、プログラムは須藤氏を交えての座談会に移った。トークテーマは「女性ドライバーの夢と現実」。このパートではドライバーになろうと思ったきっかけ、仕事のやりがい、苦労話などを3人が忖度なく語った。
特に印象的だったのは配送に関する苦労話。3人は一様に「女性だからといって優遇されたいわけではない」としつつ、Zさんは男性社員との体力差を如実に感じている。「男性とは荷下ろしのスピード、かかる時間も違う」(Zさん)。
近年、物流業界では荷物の手積み、手下ろしが問題になっている。パレットごと運ぶ場合と比べて圧倒的に時間がかかる上、ドライバーにかかる負担も大きい。こういった仕組みを是正しない限り、男性よりも体力的にハンデのある女性の業界進出は進まないだろう。
Zさんはさらに続けて「私の取引先では液体を扱うので特にきつい。体を壊してしまって長続きしない方も多い」と話した。このことからも、男女を問わずドライバーに多大な負担がかかっていることが分かる。
男性でもきつい現場で働く3人だが、男性社会ならではの楽しさも感じているようだ。Zさんは「周りは年上ばかり。私は娘のようにかわいがってもらえる」と話す。
また、やりがいを問われ、店舗配送を手掛けるSさんは「納品先のスーパーの方から『ありがとう』と言ってもらえたとき、自分が配送した商品が手にとられるのを見たときにやりがいを感じる」と話す。それに対してセンター配送を手掛けるZさん、Tさんは荷物をうまく捌けたときや、定刻通りに荷下ろしができたときに達成感を覚えるという。ひとくちにドライバーといっても、その業務内容は多種多様だ。
今回の企画も仕事を続けていく上での刺激になったという。Zさんは「父親のような年代の人たちに囲まれているとどんどんおしゃれをしなくなる。これを機に少しがんばってみようと思えた」と笑顔を見せた。
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