荷主三菱自動車工業は5月29日、2026年度から2030年代に向けた新中長期ビジョンを発表した。地政学リスクの拡大や環境規制の見直し、資材費高騰、中国メーカーの攻勢など事業環境の不確実性が増すなか、「尖った商品・ブランドの強化」を軸に、成長戦略と構造転換を同時に進める。29年度に営業利益1600億円、営業利益率4.5%、ROE(自己資本利益率)10%を目標とし、30年度以降は営業利益2000億-2500億円、営業利益率5.5%以上を目指す。
商品戦略では、同社の強みを発揮しやすいASEAN商品群とオフロード商品群に経営資源を集中する。26年度から31年度までに13車種を投入し、このうちHEVを5車種、PHEVを5車種とする。今年度中に「パジェロ」を投入し、将来はシリーズ展開を図る。地域戦略では、フィリピン、ベトナム、日本を重点国に位置付け、中東や中南米はブランド力を生かした育成市場とする。
物流・生産面では、部品・コンポーネントの共用化とグローバル調達戦略を進め、コスト競争力を高める。プラットフォームは5種類から3種類に集約し、部品共用化と調達数量の拡大によってコスト低減を図る。あわせて、AI・DXの活用により車種開発期間を現状の45か月から36か月へ短縮する方針を示した。市場投入までの期間を短くし、需要変化や規制変更に対応しやすい開発体制へ移行する。
生産能力の適正化も進める。中国、ロシア、日本ではすでに55万台分の能力を調整しており、27年度にはタイ第3工場を休止し、さらに10万台分を引き下げる。タイや豪州を含めた構造改革により、グローバルで間接人員1500人の削減も見込む。多品種少量生産によるコスト負担を抑え、事業規模に見合う損益分岐点への見直しを進める。
同社は25年度までの中期計画「Challenge 2025」で、ベトナムやフィリピンで販売を伸ばした一方、タイ、インドネシア、豪州では台数・収益が減少。半導体や船腹不足による車両供給制約、米国関税、中東情勢、資材費高騰、タイバーツ高なども収益を圧迫した。新ビジョンでは、こうした外部変動を前提に、販売地域、商品群、生産能力、調達構造を絞り込み、収益体質の強化を急ぐ。
26年度から29年度までの4年間では、成長投資として1兆円を投じる。内訳は研究開発費5000億円、設備投資5000億円で、尖った商品への集中、電動化・知能化対応、販売ネットワーク強化、AI・DXによる生産性向上に充てる。
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