イベント日本産業車両協会のデータによると、国内フォークリフトの2022年度年間販売実績の66%、5万5000台が電動フォークリフトという時代になった。電動フォークリフトの増加に伴って、そのバッテリーの賢い運用を支援するソリューションも登場している。
バッテリー製造のエナジーウィズ(東京都千代田区)が昨年9月にリリースしたサービス「withBMS(ウィズビーエムエス)」は、「電動フォークリフト用電池状態監視サービス」として、すでに複数の企業に採用されている。ウィズビーエムエスとはどんなソリューションなのか、新事業統括部監視システム事業推進グループ担当部長、鳥海英郎氏に話を聞いた。
賢いバッテリー運用によるコスト削減、現場改善のデータ収集が可能に
「導入企業は、主に2つの課題解決に目的が分かれている。まず1つ目は、運用している電動フォークリフトのバッテリーをより有効に運用したい、バッテリー交換などのコストを削減したいという課題。もう1つが、電動フォークリフトの最適な台数や配置を、バッテリー稼働状況のデータから見直したいという課題」だと鳥海氏は言う。
ウィズビーエムエスは、電動フォークリフトのバッテリーのデータ(電圧・電流・温度・液面レベル)をモバイルデータ通信でクラウドサーバーに自動収集し、同社の電池監視サービスセンタで分析してユーザーと共有する見守りサービスである。温度異常や補水不足などを検知すれば即時に通知し、現場対応を促す。「バッテリーを寿命まで使い切ることは、バッテリー交換ごとのコストや作業工数の削減につながる。また、予期せぬバッテリートラブルにより稼働停止などという致命的なリスクを避ける上でも有効なサービス」(鳥海氏)となる。
電動フォークリフトのバッテリー劣化を招く不適切な充電やバッテリー液補水など、これまでの運用は現場担当者の経験や勘に頼らざるを得なかった。「ウィズビーエムエスは、電池の運用管理状況をデータで見える化し、定期レポートによるユーザーへの注意喚起や改善提案を実施、バッテリー本来の寿命まで有効に使い切ることを助ける」(鳥海氏)。バッテリーの稼働状況データを積み上げることで、現状のままの運用での電池寿命がいつ頃になるのか、交換を準備するタイミングや、バッテリーの運用改善で電池寿命をどれくらいまで延長できるかなどを提示し、電池の寿命を見える化する。
「また、電池計測データからフォークリフトの実稼働状況も定期データで見える化し、現場での適正なフォークリフト台数や人員、配置などを見直すことにも貢献する」(鳥海氏)という。収集したデータから、車両ごとの稼働時間、休止時間、充電時間を把握することができるので、稼働時間データに基づいた台数の集約や、あるいは台数が不足しているために作業停滞している現場環境の見直しにつながる。フォークリフト現場見直しの根拠となるデータを、大掛かりなソリューションを導入することなく活用できるのが、ウィズビーエムエスの強みなのである。
物流現場の属人的なブラックボックスを解消、経営の抜本的改革に貢献
フォークリフト稼働現場は、現場監督者やフォークリフトオペレーターの経験などに基づいた領域となりがちで、現場ならではの勘や経験則を覆すデータがないために、属人的運用からの脱却、改革が難しかった。「経営部門や管理部門からの問い合わせが多いのも、事業の抜本的な見直し、効率化の追求のために、これまで可視化が進んでいなかったフォークリフト運用現場まで見直す領域の拡大が進んでいるからではないか」(鳥海氏)。経営・管理の観点では、ブラックボックスなき全領域の経営改善を推進するために、バッテリー運用、車両配備などが適正かどうかまで、しっかりと把握する姿勢が問われている。電動フォークリフト運用の拡大が続く将来に向けて、その現場運用管理状況を見える化しておくことこそが、より大きな効率化、より根本的な経営改善につながる取り組みの第一歩と考えなくてはならない。
蓄電池メーカーとしての100年以上の知見で、ただバッテリーを供給して終わるのではなく、その有効な運用法など提案型サービスにまで拡張できるのは、電池のことを知り尽くしたエナジーウィズならではの事業と言えるだろう。「国際物流総合展2024」の出展では、賢いバッテリー運用や、属人的現場の改善を提案し、「過去最大規模で物流課題を持ち寄る場となり、多くの方々との交流に期待している」(鳥海氏)
カテゴリー:産業車両・運搬車両活用
ブース番号:1-302