話題物流効率化は、「さらにその先」へ向けた取り組みを続けていかなくてはならない。現状の施策に妥協せずさらにその先へ、直接のつながりのさらにその先へと、効率化の領域を広げていかなくては物流革新は実現しない。
サプライチェーンにおいても、工程ごとの細切れの効率化ではなく、各工程が連携して大きな効率化を実現することが求められている。先進的な物流ベンダー6社が集まり、個別のバラバラな最適化を超えた全体最適化へ向けた協調領域の構築が議論された「物流DX会議」は、そのビジョンと方向性など総論では賛成ながら、その実現に向けての課題も浮き彫りとなり、各論として検証が必要であることがまとめられた。
モノフル(東京都中央区)、KURANDO(クランド、品川区)も、昨年の物流DX会議の立ち上げに参画し、システムベンダーによる協調領域を先導する意欲に溢れる2社である。

▲モノフルのトラック予約・受付サービス「トラック簿」
モノフルと言えば、トラック受付・予約サービス「トラック簿」を展開し、バース部分の効率化に貢献する代表的サービスベンダー。
また、クランドは、倉庫内の作業データの集積、分析、活用による庫内領域の効率化に貢献するサービスベンダー。
バース部分、倉庫内部分と、それぞれのソリューションによる効率化は実証済みであるが、それらがつながることでの、さらにその先の効率化はどんな課題があり、成果をもたらすのか。まさに物流DX会議の各論に触れる連携が、検証されている。
バース領域と庫内領域、効果的で合理的なデータ連携
トラック簿でバース予約までを効率化していたとしても、荷受け後の作業工程などでのボトルネックはないのか。バースと庫内作業との連携を停滞させるような要因はないのか。トラックの発着時間の予定変更が庫内のオペレーションにどんな影響を与えるのか。また、庫内の作業の遅延が、バース現場での作業停滞、さらには荷待ちに波及していないかなど、バースだけ、庫内だけでなく、連携する2つの現場を一体として可視化することで、より効率的な構内物流が実現できるのではないだろうか。トラックバース発着現場と倉庫内作業を合わせて可視化することで、新たな改善点なども浮き彫りになるかも知れない。

(イメージ)
モノフルのトラック簿は、バース領域を可視化できる。受付、呼び出し、作業開始、作業完了、退場時刻を記録し、待機時間や作業時間などを自動で見える化する。
庫内の作業状況を可視化するのはクランドのロジボードだ。スキル管理、進ちょく管理など集積した作業データを基に、適正な人員配置などへ迅速に反映させることができる。
それぞれの領域での見える化はできているのだから、それらを同時時間軸で確認できれば、より広域でのスムーズな運用におけるデータ基盤としての活用に反映できる。例えば、ロジボードには1日の時間帯ごとに、どの作業を何人で作業していたか一覧表示できる機能に、トラック発着時間とトラック車両台数も合わせて確認できるようにすれば、バース部分の適切な人員計画など、より適正なシフトへと改善することも可能だろう。
データに基づく作業計画、進ちょく状況に応じた配置変更などをより広い連携でも実行できれば、さらに一歩先の効率化、改善への打ち手も明確になっていく。それぞれの可視化領域をつなぐことで今まで見えなかった「課題のつなぎ目」を検証し、適切な対策を講じることができれば、属人化した環境から平準化した運用への転換や、管理者の業務効率化へ向けた次なる一手となり、さらに広い領域、前後工程への波及効果も期待できるのではないだろうか。
また、今回の連携は、トラック簿、ロジボードそれぞれの標準サービス同士の連携でのサービス実装を目指しているのも、ユーザーにとっての「使いやすさ」「普及しやすさ」を目指す物流DX会議の取り組みにおける理想的な検証と言えるのではないか。連携することで効率化の精度や分野を広げることは大事だが、そのためのオプション購入や、新たな機器やソリューション導入が必要とあれば、物流業界に広く受け入れられるサービスとはなり得ない。モノフル、クランドとも、すでに多くの現場での効率化に貢献しているソリューションだからこそ、連携による次の効率化も、現実的な提案となるのではないだろうか。
両社は「共通のユーザーに、コスト負担、手間をかけることなく、さらなる業務改善を進められるサービスとして、引き続き検証を続ける」としている。物流DX会議旗揚げ時に提起された連携実証の各論は、第2回開催に向けて着実に前進している。