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データ把握で効率化、自動化だけではない物流DX

2024年9月19日 (木)

ロジスティクスGuide Robotics(ガイド・ロボティクス、東京都千代田区)は、アメリカの研究機関SRI International(旧スタンフォード研究所)の技術を産業分野に応用するため、同研究所のスピンオフとして2020年に設立された。SRI Internationalに端を発する技術としては音声認識のSiri(シリ)、遠隔手術装置のda vinci(ダヴィンチ)のソフトウエア、古くはコンピューターのマウスなどが挙げられる。

▲Guide Robotics共同創業者兼最高技術責任者のアヴィーク・ダース氏

Guide Roboticsは研究所発の確かな技術基盤を持ち、米国大手物流企業との取引実績もある。そんな同社が提供する「GuideNS」(ガイドエヌエス)は、屋内測位技術を用い、屋内位置特定とマッピングを行うナビゲーションシステムだ。

SRI International出身で同社共同創業者兼最高技術責任者(CTO)のアヴィーク・ダース氏は、技術の展開先に日本を選んだ理由を、労働力不足がより深刻になるからだとする。同氏が言う通り、日本は他国と比べて移民の流入が少ない上、少子高齢化によって国内の人口も先細りになりつつあり、労働人口の減少は避けられない。

システム活用で客観的データに基づく経営判断へ

物流業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が思うように進んでいないのが現実だ。理由の1つは、ほとんどの物流施設がDXが話題になる前に設計されたものであること。自動倉庫やロボットを導入しても、施設側の制約で十分に活用できないのだ。

▲Guide Robotics共同創業者兼CEO最高経営責任者の宇城学氏

「『ロボットを入れたら労働力を減らせる』との勘違いが多いが、人が動かすことを前提に設計されている物流施設では、全自動化は無理がある。導入しても稼働率が低い、動かなくなったら放置という話も多い。これは世界的な傾向だ。人に依存するオペレーションは当分続くので、人の生産性を上げるのが最重要課題と考えている」と同社共同創業者兼CEO最高経営責任者の宇城学氏。

GuideNSは、フォークリフトや台車にカメラの付いたエッジデバイスを取り付け、特徴点の画像情報をエッジコンピューティングにて位置座標データに変換して、管理画面上にリアルタイムに、または履歴データとして表示する。「ビーコンなどの電波を利用するシステムに比べ、正確で詳細なデータを常に得ることができる」と宇城氏。単純位置情報に加え、走行距離、所要時間、ルート、稼働率などを記録し、運転者を結び付けることも可能だ。クラウド経由のため、遠隔地からも閲覧できる。

▲「GuideNS」のサービス概要(クリックで拡大)

▲フォークリフトなど物流機器に取り付けるエッジデバイス。カメラやセンサーを通じて得た画像情報を位置座標データに変換する。

「誰がどのように作業しているのか、どの設備機器がどれだけ使われているのかは、作業日報や不完全なデータでしか把握できなかった。それだけでこれ以上作業効率を上げていくのは難しい。われわれのシステムは、現場をデジタルに把握して、より精緻なデータをベースに経営判断をしていこうという提案」と宇城氏は話す。その経営判断の想定は、現場の効率化だけでなく、荷物の紛失や運転者の違反行為を防止する安全管理、客観的な根拠を持った価格交渉にまで及ぶ。

それでいて導入ハードルが低いことも魅力だ。データの網羅性、粒度、精度を高く保ちつつも、既存の機材にエッジデバイスを取り付けるだけで運用でき、レイアウト変更時も設定要らずの手軽さがある。コスト面でも導入しやすい。物流施設のブラックボックスを白日のもとに引きずり出すには、最適のツールといえそうだ。

▲「GuideNS」の位置座標データ画面(クリックで拡大)

システム連携で実現する本当のDX

Guide Roboticsは今後、他社・他システムとの連携に力を入れ、より多くの物流の課題に向き合っていく予定だ。

例えば、トラックの到着予定を受け、屋内位置情報をもとに、最適なフォークリフトが最適なルートとタイミングでバースにたどり着く。「自動配車システムがGPSなしに機能しないのと同じで、われわれの測位システムがなければ物流施設内外の作業のシームレスなつながりはできない」(宇城氏)。本当のDXはこのシームレスなつながりの実現にあるという。

また同時に、「現在は日本が中心ではあるが、当然グローバル展開も視野に入れていきたい」。宇城氏とアヴィーク氏は、ともにGuide Roboticsの力強い将来を語ってみせた。

Guide Roboticsソリューション