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ITで未来を切り拓く先駆者が、アナログな貿易業務の転換を推進

眼前の貿易課題を解決するDX、Trade Hub

2024年12月26日 (木)

話題貿易事務業務ではいまだにアナログでの連携や業務プロセスが常態化しており、非生産的な貿易事務現場の効率化に取り組む双日テックイノベーション(東京都千代田区)は、さらなる貿易業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指す。

同社の目指す貿易業務革新について、アプリケーション事業本部事業開発部副部長の木村悦治氏、同部ビジネスデザイン課で貿易DXクラウドサービス「Trade Hub」(トレードハブ)のPdM(プロダクトマネージャー)を務める千葉矢貫氏に話を聞いた。

貿易業務ならではの現場課題に特化したTrade Hub

貿易業務に必要な書類の種類は膨大であり、そのどれもがフォーマットや用語、ルール、システム、コードなどがバラバラで、標準化プロセスに落とし込むことが難しい。法規やグローバルでの専門性の高さも求められるとともに関係者が多数介在することも、アナログからの転換や標準化を困難にしている。

▲アプリケーション事業本部事業開発部Trade Hub PdMの千葉矢貫氏

また、現場事務作業にかかる負担の削減、効率化ソリューションへの投資が軽視され、対策が後回しとなりがちであることもアナログ業務からの脱却を妨げている。貿易関連の書類手配、作成、チェック、報告など、個人の能力で処理しようとする“ムリ”、工程ごとで繰り返されるチェックや転記作業、個別ごとの管理による“ムダ”や、属人化によるプロセスのバラつきなどの“ムラ”など、現場のさまざまな課題が生産性の低下を招き、経営課題へとつながっている現状を、その経営層が把握できていなければ、改善に向けた取り組み、投資も進みようがない。

同社が提供するTrade Hubは、こうした貿易業務の“ムリ・ムダ・ムラ”を解消し、アナログからデジタルへのプロセス効率化、標準化を後押しする。貿易書類をアップロードするだけで、煩雑な照合や計算補助、さらには自動書類作成、関連システムへの登録まで、貿易に関わる一連の作業工程を自動化できる。「これまで書類のバケツリレーとなっていたムダな業務やミスをなくし、書類のデジタルデータ化やプロセス自動化によって、現場の生産性を飛躍的に向上させることが可能」(千葉氏)だ。

Trade Hubは、貿易に関する膨大な書類ごとの用語やルールの違いを吸収して、自社システムに対応するコード、データへの変換、各社ごとの業務プロセスに合わせた各種作業を実行する。こうした機能を実装できたのは、AI-OCRによる書類読み取り精度や、貿易の勘所を抑えたデータ書類化機能など、総合商社・双日グループの貿易業務ノウハウを基盤として、現場の実情を熟知した貿易業務に特化したシステム開発に取り組んできた同社だからこそ実現できたと言えるだろう。現場での業務のやり方はこれまでと変えることなく、手間のかかる人の手による作業部分でのオートメーションを実現することができる。

▲Trade Hubが実現する貿易DXイメージ(クリックで拡大)

さらに今後の機能拡充に向けては、「社内外の複数担当者が案件を共有し、メッセージ、書類のやり取りなどでのコミュニケーション精度を向上させる機能も導入する」(千葉氏)という。アナログ運用で遅滞していた社内外の連携や調整を円滑にして、連絡・確認業務にかかる負荷や非効率な単純業務を削減し、貿易プロセスにおける業務の標準化、リアルタイムでの情報共有機能の強化を進める予定だ。

貿易現場が求めるのは、今そこにある課題への対応

貿易業務で改善すべき領域は、各事業者それぞれ多様であり、Trade Hub以外の貿易DXツールとしては、デジタルフォワーダーや貿易プラットフォームにおいても”標準化”を掲げた機能開発が続けられている。しかし、貿易現場が求めているのは、未来の理想的な標準化ではなく、書類のデジタルデータ変換やプロセス自動化など「今目の前にある貿易事務の効率化を実現する機能」だと千葉氏は語る。ある製造業の輸出業務では、Trade Hub導入でベテラン作業者が3時間程度を要していた書類作成業務を30分にまで短縮した例や、新人作業者でも転記ミスの回避、原産地証明書発行をこれまでの30分から3分に短縮し、すべて手打ちしていた100ページを超える梱包明細を即時データ化した事例など、業務効率化での具体的な成果が報告され、まさに今そこにある課題解決への貢献が実証されている。

▲貿易業務の「ムリ・ムラ・ムダ」が引き起こす企業への影響(クリックで拡大)

見方を変えれば、効果的なツールを導入してアナログからの転換を進めるだけで、貿易業務の現場担当者にかかる負荷や、非効率な作業をここまで劇的に改善できるということでもある。今後、貿易担当部門の実情を把握していない、あるいはフォワーダーに委託しているため自社貿易現場の問題点がわからない荷主などが、ブラックボックス化している現場を可視化することこそ、物流の上流を預かる事業者の重要な責務となるはずである。

物効法の改正によって大手特定荷主企業などの物流統括管理者(CLO)が主導する事業構築が進めば、貿易現場で顕在化する過酷な労働環境やムダな業務を放置せず、経営課題として効率化の対応を進める事業者も増加するのではないだろうか。人的業務負荷の高かった手作業でのシステム登録作業などの自動化やチェック業務負荷の軽減などにより、人的リソースの有効活用、少人数体制の貿易業務を実現することができれば、今後の人材不足への対応策、コスト見直しにおいても有効だ。クラウドサービスのTrade Hubは、初期投資を小さく抑えた試験的導入から始めることも可能であり、効果測定が難しい導入効果を短期間で実感することにも役立つのではないだろうか。

ツールとともに企業も成長し、貿易現場のニーズ対応力を高める

Trade Hubは24年4月に本格的な事業化をスタートしたばかりだが、「こんなツールを探していたとの声も多く、貿易現場にとって今必要な効率化ツール、目の前の課題を今すぐ解決したいという需要がどれだけ多いかを実感している」と木村氏は語る。来年度へ向けては、これまでのExcel(エクセル)形式での書類生成から、ウェブ上で書類を共有、管理、連携できるよう操作性と利便性を高めるのに加え、AI-OCR機能においても、より高レベルな読み取り技術を標準仕様に取り込むハイブリッドAI-OCRへと強化して実運用での精度を高めるとともに、フォワーダーの実務に特化した機能も追加整備するなど、より“現場”が使いやすいシステムへとブラッシュアップする予定である。

▲アプリケーション事業本部事業開発部副部長の木村悦治氏

物流展示会やセミナーでTrade Hubを紹介した後は、1月あたりの問い合わせが20件から30件に及ぶ状況も続いたという。「ツールの方向性が間違っていなかったことは実感できたが、予想を超える反響の大きさに、嬉しい悲鳴をあげたことも」(木村氏)と、その実情を明かしてくれた。Trade Hubの機能拡充とともに、事業自体も急速な成長、スタッフ増強が必要な現状こそが、切実に求められていたツールとして現場から評価された証明と言えるだろう。

木村氏は、「貿易の現場で育てられたソリューションだけに、貿易実務がわかるメンバー、貿易現場の課題について知見のあるメンバーで、営業やカスタマーサクセス機能もさらに強化していきたい。興味のある方は、ぜひ連絡を」と語り、同社の目指す「ITで未来を切り拓く先駆者」として、ともに成長する仲間が増えることにも期待を寄せた。

「Trade Hub」サービスページ