
話題物流大手のSBSロジコム(東京都新宿区)は、今夏の熱中症対策として、ネスレが販売する経口補水液「アクアソリタ」の導入を行う。同社では従来から塩タブレットや空調ベストなどの対策を講じているが、より効果的な水分・電解質補給を目的として新たに追加採用する。また、ネスレと協業しグループ各社への販売もスタートしている。
物流企業のみならず、製造業や建設業など、高温下で負荷の大きな作業が必要となる産業では、熱中症対策への対応が急ピッチで進んでいる。この背景には、6月1日から施行された改正労働安全衛生法により、熱中症対策が事業者の義務となったことがある。違反した場合は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されるため、各企業は対策を急いでいる。

▲SBSロジコム営業情報部の栗生浩延氏
同社が「アクアソリタ」を選択した理由について、同社営業情報部の栗生浩延氏は「他社製品よりも飲みやすく、スポーツドリンクよりもカロリーが低い点」を挙げる。アクアソリタは100ミリリットル当たり6キロカロリーと低カロリー。水分補給のために糖質が多いスポーツドリンクやジュースを飲むことは、糖質やカロリーの配慮が必要とする方への懸念点が拭えなかった。また、塩分濃度も一般的な経口補水液とスポーツドリンクの中間に設定されており、「重篤な症状の治療よりも、普段の作業中の予防に適している」という。

▲各飲料のナトリウム濃度の違い。アクアソリタは子供から中高年まで幅広い人が利用しやすく、飲みやすいナトリウム濃度になっている
製品の特徴として、ナトリウムなどの電解質をしっかりと摂取でき、かつカロリーを抑えられる点が評価された。また、青りんご味で常温でも飲みやすく、現場での使いやすさも検討の加点ポイントとなっている。同社ではすでに塩タブレットを導入しているが「冷やして飲んで体温を下げるといった効果も期待できる」ということで、経口補水液などの飲料も追加検討していた。しかし、どの拠点にも冷蔵庫を設置できるわけではないので、常温でも飲めることも大きなポイントだった。「経口補水液は常温ではちょっと飲みにくいものもあるが、アクアソリタは常温でも美味しく飲めるので、冷蔵庫がない拠点でも運用しやすい」のも有効だという。栗生氏らは導入前にサンプルを取り寄せて試飲。味や飲みやすさを確認した上で本格導入を決定した。販売を手がけるネスレでは、法人向けに無料サンプルの送付を行っているという。

▲水やお茶では発汗で失われた電解質を補給することができない
同社では年間2、3人のドライバーが熱中症で労災扱いとなっており、対策は急務だった。特に問題となるのは、「水を飲まない世代」のドライバーたちの意識改革だ。
同社業務運営部業務課の増子明仁氏は「昭和世代のドライバーは『部活では水を飲むな』という指導を受けていたりすることもあり、自分は大丈夫だと過信している人が多い」と指摘する。実際、今年に入ってすでに1人のドライバーが熱中症で倒れており、本人に自覚症状がないまま体温が38度を超えていたという。

▲SBSロジコム業務運営部業務課の増子明仁氏
物流業界の作業環境の厳しさも浮き彫りになった。海上・鉄道コンテナからの荷物積み替え作業(デバンニング)では「コンテナ内が50-60度ほどになることもある。10分も経たないうちに下着までびっしょりになり、靴の中に汗が溜まる」ほどの過酷な環境だという。倉庫作業でも空調設備がない施設もまだあり、「スポットクーラーの前で作業員が一時的に涼を取りながら作業を続ける」(増子氏)状況が続いている。
同法では「体制整備」「手順の作成」「関係者への周知」の3点が義務付けられており、具体的な予防策として環境管理、作業管理、健康管理、教育の実施が求められている。
SBSロジコムでは今回の導入検討をきっかけに、SBSグループ各社への販売をスタート。同社グループの従業員数は相当規模に上り、物流業界への波及効果も期待される。
「荷主企業も現場の安全対策に責任を持つ時代になった。大手荷主企業の中には、配送業者に対し熱中症対策費として協賛金を提供するケースもある」と栗生氏は業界の変化を指摘する。
■アクアソリタのサンプル請求
https://forms.office.com/e/EuxCLDDA4A
■製品紹介ページ(ネスレ ヘルスサイエンス企業サイト)
https://www.nestlehealthscience.jp/brands/aji-ons-aqs