ロジスティクス物流現場の重要工程である仕分け領域にテーマを絞ったシリーズ企画「SHI・WA・KE25」が、26日に開催された。EC(電子商取引)需要拡大など物流現場の多頻度小口化によって、「仕分け」作業の効率化、スピードアップ、正確性の向上は喫緊の課題であり、多様な方策が提案されている。
庫内効率化といえば、自動化やロボット導入ばかりが注目されるが、仕分け工程においては、人による仕分けをあえて選択する現場も多い。仕分け効率化の最適解とは何なのか、物流エンジニアリングのタクテック(東京都文京区)が解説した。代表取締役社長の山崎整氏、LE部シニアエンジニアの藤巻陽二朗氏、システム部課長の田代奈音氏という仕分け現場を熟知した3人が登壇し、本誌、赤澤裕介編集長とともに、仕分け作業をどう変えていくべきかが議論された。

▲左から、本誌赤澤編集長、タクテック山崎社長、田代システム部課長、藤巻LE部シニアエンジニア
対症療法ではなく抜本的改革へ、物流構造や仕分けツールの理解を
山崎氏はまず、仕分け工程の課題は「対症療法」に陥りがちなことであると指摘する。倉庫内の物流業務を「作業」と「流れ」で解析したマテリアルフロー図で物流構造を再検証して、根本的な課題を洗い出す作業が十分ではないことを例示した。そこから、仕分け工程において、そもそも現状のピッキング方式が最適なのかの検証も必要となる。出荷作業のピースピッキングにおいては、1件ずつ対応するオーダーピッキングがもっともシンプルで簡単。また、WMS(倉庫管理システム)導入後の運用では、WMS標準装備のハンディターミナル(HHT)によるオーダーピッキングの活用で止まってしまうことが多いことが指摘され、抜本的な仕分け工程の見直しに至らない理由が分析された。
ひとつの業務フローだけを検討するのではなく、複数のやり方を考え、それぞれのやり方の生産性やメリットをまとめ、判断をしていくことが重要であり、オーダーピッキングだけではなく、トータルピッキングと仕分けを合わせた運用や、HHT以外のツール活用も検証するなど、知識と視野を広げることが仕分け課題解決には必要だと示された。
DAS、仕分けマテハンなど多様な選択肢で、GASの優位性とは
現在運用されている主な仕分けシステムを、人手による仕分けからマテハン機器による仕分けへと、自動化の「進化」として順番に並べると、紙ベースのアナログ運用、HHT運用、ランプによる仕分け指示運用、DAS(Digital Assort System、デジタルアソートシステム)、GAS(Gate Assort System、ゲートアソートシステム)といった人が介在する仕分け、スライドシュー型自動仕分け機、チルトトレー式自動仕分け機、t-sortに代表される仕分けロボット、オムニソーターのような多段式ソーターなどのマテハン仕分けの順に並べることができるだろう。
紙リストの仕分けから、HHT活用への転換が最初の一歩となることは多いが、その後もさらにツール見直など、自社の物量や商品特性から、最適な仕分け方法やツールの選択、レイアウト配置などを検証し、何を目標として(正確性、スピード、ROIなど)投資できるかが事業成長の転換点となる。人による仕分け運用をベースとしたDAS導入などは、早くから運用実績も積み上げられている。ただ、ランプやデジタル表示による仕分け指示器では、人為ミスが避けられず、後工程の再検品が不可欠となる。
仕分けマテハンとGASは検品レスに対応するが、機械ですべて仕分けできる商品ばかりではない。人手を必要とする仕分け運用で、かつ検品工程が必要ないのは、GASだけということになる。
GASは、ただ仕分け品の投入間口を指示するだけではなく、ゲートフラップの開閉によって誤作業を防止することができる。山崎氏は、「人力による仕分けシステムながら、人のミスを排除し、より幅広い商品や運用に対応できる柔軟性にも優れている」ことを、現場運用の成功事例とともに紹介した。タクテックの提案する仕分け改善策として、同社の新コンセプト「with GAS」を掲げる理由だ。
正解は1つではない、議論をさらに深めることが必要
物流現場で拡大するGTP(Goods to Person)システムの運用では、GTP搬送後の作業ステーションに、GASを設置するといった運用も拡大している。人が行う仕分けであることが、GTP運用シーンでも生かされ、適切なソリューションの組み合わせが成果を示している。
一方、GASの課題もある。時間あたりの処理能力で見ればマテハン仕分けが圧倒的に有利である。人の作業能力に依存するGASは、そもそも「人の運用を見越してあらかじめ低い能力値を提示する」(山崎氏)といい、数字だけではなく運用現場を見て納得してもらう必要があるという。藤巻氏からは、作業量削減による人件費削減シミュレーションでGASの効果を示すとともに、人材の確保においてもGASでの作業が有効との見解も示された。
また、GASにおいては投入間口の制限が課題となることも提示された。田代氏は、GAS間口のカスタマイズに加えて、GASの間口が適さない運用ではDASと併用するなど、GAS単体ではなく最適な組み合わせで運用シーンが拡大する事例も紹介された。組み合わせ次第で解決の選択肢は拡大すること、スモールスタートのニーズに合わせた運用などにも、GASだけに縛られない最適な提案ができるという同社の強みを示す。
物流現場で人気が根強いDASとの比較も示された。日配品のTCセンターなど、いまだにGASよりもDASが有効な事例も紹介。GASよりもDASが最適解となる現場もあること、投資したいのがROIなのか、作業精度なのか、はたまた人員削減なのかで、導き出される解答はもちろん違うことが明示され、「正解は1つだけではない」と山崎氏は語る。仕分けをどう再定義すべきかとの問いかけには、「これと断言できる答えはないだけに、もがき続けることが必要」と、現場ごとに違う解決策への取り組みを、ときにはライバルとされるソリューション提供者とも協力しながら、ユーザーにとって有効な回答を模索していく姿勢だ。
この仕分け特化イベントは全3回にわたって開催予定。第2回開催では、具体的な課題対策や協調のあり方について、仕分けマテハンの競合企業も交えた組み合わせの実例などを交えて、より深く議論することを予定している。第2回「SHI・WA・KE25」は、8月29日開催。
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