話題野村不動産が昨年発表した物流事業の中長期計画では、物流施設供給が一時期のピークから落ち着きを見せ始めている市況や、2024年問題や改正法の施行、製造業の国内回帰や建築費高騰、DX(デジタルトランスフォーメーション)技術やAIの進歩など、さまざまな環境変化を受けた新たな変革フェーズにおける、同社の方向性が打ち出された。
事業の中核「Landport」シリーズの開発では、26年から28年3期までの3年間で15棟、総延床面積130万平方メートルを開発。投資総額としては3400億円を見込み、これは前の3か年の2.6倍にあたる開発投資となる。これによって、物流施設の累計開発・運用棟数は60棟、延床面積365万平方メートルに達する。3か年の累計投資額は8000億円を予定するとともに、さらにその後も、毎年1000億程度の新たな投資を着実に実行するとしており、31年度までで累計1兆3000億円に及ぶ投資計画を明らかにするなど、より積極的な開発で、市場における存在感を増していく姿勢だ。
こうした積極投資による具体的な戦略の柱となっているのが、「マルチ型物流施設の開発への注力」と「地方エリアの開発を加速」だ。
食品物流高度化と地方展開に対応、野村不動産の中長期戦略
同社による積極開発の背景には、適切な場所に適切な施設を供給して物流を支えるという、デベロッパーとしての使命感がうかがえる。特に、地域ごとの食品事業者などでは、EC(電子用取引)需要の増加に伴い、新たにtoCに力を入れた機能再編や事業成長を目指すケースが増加し、それに対応する拠点の必要性も増している。食品関連ECは、利用年齢層が広がりとともに、これまでの都市圏中心の物流だけではなく、地方の主要都市それぞれに向けての最適な配送拠点の必要性も高まる。また、既存の自社倉庫のリプレイス時期を迎え、より効率的で柔軟性の高い賃貸施設利用への転換を模索する動きも盛んだ。
食品物流環境の変化に合わせ、施設利用者も多様化している。さまざまな規模、さまざまな地域の事業者にとって、野村不動産が示したマルチ型物流施設、地方エリアの開発加速は、まさに、それぞれにマッチした拠点計画の選択肢を広げるものとなるだろう。
Landportでは、マルチ型らしい利便性・柔軟性と、BTS型らしい専門性とを両立できる、フロア別カテゴリーマルチ型物流施設を展開し、ただ利用しやすいだけではなく、それぞれの商品特性に特化した物流をサポートできる体制を用意してきた。食品物流においては、低層階に冷凍冷蔵施設を完備し、上階は定温ドライとした3温度帯センターなどを提供するほか、小規模区画の提供などで施設利用の間口を広げ、多くの食品物流の課題となる季節波動などにも、賃貸借区画の増減などで柔軟に運用できるような環境を提供してきた。
エリア開発では、首都圏中心の開発だけではなく、中部圏ではこれまでの2棟から4棟に、関西圏では3棟から5棟に、九州エリアでは1棟から6棟へと積極開発を表明。各地域の主要エリアごとに最適な拠点を再配置して、食品を含む地域産業の活性化や、全国展開における地域ごとの最終拠点としての役割を担う姿勢である。
なかでも注目されるのは、これまで施設提供のなかった東北エリアでの開発だ。
宮城県岩沼市には、Landport仙台岩沼を東北エリア第1号物件として26年2月に完成。さらに27年8月には、「Landport北上」を完成させる予定で、これまでのLandport空白地帯に、相次いで2棟の最新施設を供給し、東北エリアの物流再編を後押しする。

▲「Landport仙台岩沼」完成予想図
東北初のLandportが物流の空白を埋める
都市開発第二事業本部 物流営業部営業一課 課長代理の篠大樹氏は、「Landportにとって初となる東北エリアの開発施設、Landport仙台岩沼は、この地域の物流課題解決を目指す私たちからの挨拶状といえるもの」と語る。
同施設が立地するのは、仙台空港至近の岩沼臨空工業団地内。岩沼市が地域の製造業や物流機能が集積するエリアとして整備した地域産業活性化の中核エリアに位置する。仙台東部道路・仙台空港インターチェンジ(IC)まで2.75km、さらに国道4号への接続の利便性も高く、仙台市内まで20km、30分程度でアクセスできる物流拠点となる。「東北の中心地、仙台市をターゲットとしたラストワンマイル配送においては格好の立地で、1日あたり複数回の往復も可能。今後も拡大が予想される仙台市内への配送需要をカバーする施設として、まだまだ絶対数が不足している賃貸施設による物流再編を実現する」と篠氏は語る。
空港に隣接し、港にも接続しやすい地域は、食料品をはじめ、日雑品、紙製品など地域の豊かな産業にとっての事業成長の舞台である。仙台市内へ30分という利便性は、競合する物流施設の集積地となるが、「エリア開発を重要目標に掲げるLandportにとっては、そのブランド名を東北の人々にも知ってもらい、開発コンセプトを理解してもらうためにも外すことができない開発エリア」と、あえて競争激しい物流要衝での勝負に挑む。「競合が激しいのは、物流適地である証拠。その中でも、1,650坪から分割できる小区画運用や全区画での両面バース利用など、多頻度配送が多い地域ニーズを的確に捉えた施設開発こそLandportの強みと理解を深めてもらうきっかけにしたい」
Landportの思想貫く、仙台エリアの実情に即した施設供給

▲都市開発第二事業本部 物流営業部営業一課 課長代理 篠大樹氏
篠氏は、特に仙台では2,000坪以下の小区画からの運用から必要に応じて拡大していくという地域特有の需要が顕著だと語る。「仙台岩沼は、2層式のボックス構造を最大4区画に分割可能で、最小区画は1階と2階合わせて1650坪という小割区画を用意。まずは小さいスペースから賃貸運用をしたいという地域のニーズに対応する」(篠氏)。初めて賃貸型マルチ倉庫を施設運用するといった企業や、既存倉庫のリプレイスに伴う逃げ場所が必要な企業、手狭になっている施設からステップアップに挑戦する成長企業、共同配送による複数荷主の荷役を行う物流会社、宮城県南向けのデポ機能を切り出したい荷主企業など、現実的な拠点再編が想定できる施設となっている。Landport岩沼のように最小1,650坪の区画を利用できる物件は希少価値が高く、地域特有のニーズにマッチした仕様で、周辺施設との差別化を目指す。
また、仙台市内への配送力、機動力もエリア物件にとってもっとも重視される機能である。「仙台市内への多頻度小口配送にも対応できる機動力を発揮できるよう、1階はすべて両面バースを採用。最大の4区画に分割しても、すべての区画で両面バースを使用した迅速な作業が可能で、スピーディーな配送業務など、通過型やクロスドック拠点としての運用に最適」(篠氏)。篠氏は、周辺の賃貸施設で、複層階かつ両面バースで迅速性にこだわった施設はほかに見当たらないという。
働きやすさと人材確保の優位性支える総合力
また、雇用の確保においても「施設内には、このエリアにはほとんど前例がないカフェテリアを用意し、施設で働く人々の環境にも配慮する。働く方々にとっても、周辺施設とは違う魅力ある環境と感じてもらえるのではないか」(篠氏)。JR東北線の館越駅や岩沼駅、仙台空港アクセス線・仙台空港駅などの鉄道駅から、岩沼市民バスや仙台バス臨空循環バス便で施設近隣のバス停へとアクセスできるなど、工業団地・産業集積地区として、地域就労者の通勤の足も整っているが、さらに、人材募集サイトへの掲載サポートや、スキマバイトサービス利用で入居者特典を用意するなど、積極的に人材確保を支援できる体制も、野村不動産ならではの総合力が生かせる領域だ。「自動化やマテハン導入といった相談にも、物流課題解決のための共創型コンソーシアムTechrum(テクラム)での知見を通してそれぞれに最適な提案ができるのが私たちならではの強み」
物流の変化に対応し、必要な物件を必要なエリアへ展開
もちろん、引き続き首都圏でも、食品産業が盛んなエリアから、都心への配送機能に強みを持った最新設備も用意していく。関東では醤油産業で知られる野田市周辺エリアも食品物流のニーズが高い地域だが、野村不動産はこの野田市周辺エリアで常磐道・柏インターチェンジ(IC)や国道16号による都心配送、首都圏・関東一円への配送拠点として、新たな物流施設「Landport野田」「Landport柏II」を開発し、地域ごとの物流への最適解を用意する。それぞれ26年3月、同7月の完成に向けて、関東物流適地における希少な最新施設として開発中であり、食品をはじめとする新たな事業の配送拠点となることも期待される。
所在地:宮城県岩沼市下野郷字新関迎124-1 他
交通:仙台東部道路・仙台空港インターチェンジ・2.75キロ
仙台空港アクセス線「仙台空港駅3キロ
敷地面積:1万9878.55平方メートル
延床面積:2万5810.27平方メートル
規模:S造・耐震・地上2階建・1階両面接車
用途地域:工業専用地域
完成:2026年2月予定

































