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改正物効法、パブコメから読み解く課題点

2025年9月5日 (金)
LOGISTICS TODAYがニュース記事の深層に迫りながら解説・提言する「Editor’s Eye」(エディターズ・アイ)。今回は、「改正省令が公布、荷主負担と評価制度に懸念の声」(8月29日掲載)を取り上げました。気になるニュースや話題などについて、編集部独自の「視点」をお届けします。

行政・団体国土交通省が公布した改正物流効率化法の関係省令は、来年4月から施行される。特定荷主や物流事業者に中長期計画や定期報告を義務付ける制度だが、パブリックコメントには現場の不安や課題が数多く寄せられた。重量算定方法や届出様式の複雑さ、事務負担の増大など、施行を前に解決すべき点は少なくない。

国土交通省は8月29日、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(物流効率化法)」および「貨物自動車運送事業法(トラック法)」の一部改正に伴う関係省令を公布した。今回の改正により、一定規模以上の荷主や物流事業者が「特定事業者」として指定され、中長期計画や定期報告の提出が義務付けられる。特に特定荷主には物流統括管理者(CLO)の選任も課され、日本全体の貨物量の約半分を占める事業者が規制対象となる。

この省令公布に先立ち、政府はパブリックコメントを募集し、150件の意見が寄せられた。最も多かったのは「貨物重量の算定方法」に関する意見である。実測や容積×比重、単位数量当たりの重量を乗じる方式、契約書記載の重量など、算定方法が複数並列されている点に「複雑すぎて結果が変動する」「どの方式を優先すべきか分からない」といった声が集中した。

荷主によっては容積ベースと重量ベースで結果が大きく異なり、特定荷主に該当するか否かが変わる可能性があることが特に問題視された。政府は「事業者の実態に即した合理的な方法を選択可能」としながらも、恣意的な運用を避けるため省令に列挙された手法を優先すべきであると回答。ただし、「単位数量当たりの標準的な重量の活用」や「POSデータ・マスタデータの換算」を認める柔軟姿勢も示した。

様式1の解釈巡り不安、実務に即した整理を要望

次に意見が多かったのは、様式1「貨物の運送委託・受渡し状況届出書」に関するものだ。第一種荷主(委託側)と第二種荷主(受渡側)の区分が直感的に分かりにくく、社内拠点間輸送や得意先配送をどう合算するかといった実務上の疑問が多数寄せられた。

様式1「貨物の運送の委託及び受渡しの状況届出書」

省庁サイドは「委託=第一種荷主、受渡=第二種荷主」と明示し、両方が基準重量を超える場合は双方記載が必要と回答した。また、作成担当者欄を複数に分けられるかといった実務上の細部まで質問が及び、「原則は1名だが相互連携を前提とする」と整理された。

さらに様式3(中長期計画書)や様式5(定期報告書)についても、記載の粒度や変更時の再提出範囲、荷待ち時間がない場合の記載方法など細かな疑問が出た。これに対して、省庁は「すでに達成している場合はその旨を記載すればよい」「計画変更があれば翌年度7月末までに再提出」と柔軟な運用を示したが、現場には依然として不安が残っている。省令が文言上は合理的に整っていても、現場担当者にとっては直感的に理解しづらい点が多く、制度が十分に浸透するまで時間がかかる可能性がある。

事務負担と制度の整合性、施行へ残された課題

パブリックコメント全体を通じて浮き彫りとなったのは、制度運用上の課題である。まず、事務負担の重さが指摘された。すでに事業者はGマークやグリーン経営認証、IT点呼データを行政に提出しており、同じデータを再入力させるのは非効率だとの批判が相次いだ。API連携による自動転用や電子システムの整備を求める声は、とりわけ中小事業者にとって切実だ。

また、物流効率化法と省エネ法の制度間不整合も目立った。省エネ法はエネルギー原単位(GJ/トンキロ、原油換算KL/トンキロ)を基準とし、物流効率化法は積載率やCO2削減率を指標とする。この違いが現場で混乱を招き、「どちらを優先すべきか分からない」との声が多かった。官庁横断のタスクフォース設置を求める意見まで出ている。

さらに、特定荷主の取り組みが不十分な場合、行政勧告から社名公表、改善命令に至るまでの段階的な措置を明文化すべきだとの要望もあった。国交省は「勧告に従わない場合は公表、さらに正当理由なく従わなければ命令可能」と回答し、一定の強制力を認めている。

今回公布された関係省令は26年4月に施行される予定だ。現場の声をどこまで制度運用に反映できるかが、改正法の実効性を左右する。物流効率化という目的に異論はないものの、簡素化や明確化、負担軽減といった課題は依然残されている。施行に向けた今後の運用次第で、制度が真に機能するかどうかが決まりそうだ。

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