ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

価格転嫁は改善も多重構造の下流で停滞、公取委

2025年12月15日 (月)

調査・データ公正取引委員会は15日、2025年度の「価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」の結果を公表した。コスト上昇局面での価格転嫁を巡り、価格協議を行わず取引価格を据え置く行為が独占禁止法上の問題となり得るとの考え方を示して以降、公取委は調査と是正を継続してきた。今回の調査では、注意喚起文書の送付割合が低下するなど一定の改善が確認された一方、サプライチェーンの取引段階が深まるほど価格転嫁が進みにくい傾向は引き続き見られた。

▲価格転嫁が円滑に進んでない業種のサプライチェーンの例(クリックで拡大、出所:公正取引委員会)

調査は、通常調査(書面)、前年度に注意喚起文書を受けた事業者へのフォローアップ調査(書面)、立入調査で構成される。通常調査では、労務費の割合が高い、または転嫁が進みにくいとされる「労務費重点21業種」を含む43業種を対象に、11万事業者へ調査票を発送した。フォローアップは、前年度に注意喚起文書を受けた1万3929者を対象に実施。立入調査は7-11月に462件行い、労務費重点業種の発注者を中心に確認を進めた。

受注者が価格転嫁を要請した割合(要請率)について、「7割以上」と回答した割合は53.9%で、前年度とほぼ同水準だった。価格改定の実現度合いを示す、要請した品目のうち価格が引き上がった割合(引き上げ品目率)では、「7割以上」との回答が82.5%となり、前年度から1.8ポイント上昇した。一方、道路貨物運送業は72.0%と、全体と比べ低い水準にとどまった。

▲引上げ品目率が7割以上の受注者の割合(クリックで拡大、出所:公正取引委員会)

取引段階別にみると、製造業や流通業では各段階を通じて緩やかな改善が見られたが、サービス業では1次受注者以降で引き上げ品目率が低下する傾向が確認された。サービス提供業者では77.8%だったのに対し、1次受注者は62.9%、2次受注者は58.0%だった。

要請額に対して受諾された割合(要請受諾率)では、労務費が67.4%、原材料が72.8%、エネルギーが69.0%と、いずれも前年度から上昇した。ただし、取引段階を遡るほど低下する傾向があり、サービス業では需要者からサービス提供業者への65.7%に対し、2次から3次では45.3%まで下がった。

独占禁止法Q&Aに基づく調査の結果、価格協議を行わず据え置くなどの行為が確認された発注者4334者に注意喚起文書を送付した。通常調査の回答者に占める送付割合は9.8%で、前年度までと比べ低下した。

また、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の認知度は59.6%と前年度から上昇した。指針を認知していた受注者の方が、価格引き上げが実現した割合は高かった。一方、発注者が全ての受注者と定期的な協議の場を設けている割合は27.1%にとどまった。

物流分野との関係で注目されるのは、価格転嫁が円滑に進んでいない業種例として、道路貨物運送業や倉庫業、運輸に附帯するサービス業などが、サプライチェーン別の分析の中で挙げられている点だ。調査では、道路貨物運送業のほか、放送、広告、不動産賃貸・管理など、自業種内での受発注が行われる業種において、取引段階が進むにつれて転嫁率が低下する傾向が整理されている。

公取委は、元請けから1次、2次と取引段階が重なる構造のなかで、需要者側の価格改定が進まない場合、その影響が下流に及びやすい状況があると分析している。物流分野はサービス業に分類され、再委託が行われるケースも多いことから、こうした傾向が価格転嫁の進捗に影響している可能性が示唆される。

■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。

※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。

LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com

LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。

ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。