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止まらぬ新聞部数減から、一般物流への転換点目指す

2025年10月14日 (火)

記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「西日本新聞総合オリコミが社名変更、物流を強化」(9月3日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

ロジスティクス西日本新聞総合オリコミは10月1日付で「株式会社西日本新聞ロジメディア」に社名を改めた。これは、長年担ってきた新聞・折り込みチラシ輸送から、一般貨物や新たな物流事業へ重心を移す節目と位置づけられている。新聞部数減少と広告のデジタル化、さらにコロナ禍の影響で折り込み需要が大きく後退するなか、同社は持続可能な物流モデルへの転換を迫られている。

▲左から西日本新聞総合オリコミ・物流事業本部の緒方司部長、同佐々木優一副本部長

新社名には「ロジスティクス(物流)」と「メディア」の双方を組み込んだ。同社物流事業本部の佐々木優一副本部長は「新聞関連輸送の経験を土台にしつつ、その枠を越えて一般貨物やEC(電子商取引)商材の取り扱いを拡大する」と今後の展望を語る。

同社の収益は現在も8-9割が新聞・折り込み関連だが、減少傾向は止まらない。折り込み専業のままでは事業基盤が脆弱化するのは必至であり、一般物流を柱に据える姿勢を明確にすることで、荷主・協力会社・地域社会に対して方向性を打ち出す狙いがある。

▲同社が香椎浜に開発した新拠点

折り込みは集客が前提のため、コロナ禍では配布自粛が広がり売上は一時「半減」。以後も需要は完全回復せず、新聞発行部数の減少と歩調を合わせる形で縮小が続く。結果として倉庫には空きが生じ、輸送も“満載にならない便”が増えた。こうした環境が、一般貨物への進出を後押ししている。

新聞・折り込み輸送で多く使われてきた平ボディ車は、一般物流では希少だ。この特性を生かし、同社はユニットバスやシステムキッチン、フローリング材など建材の配送に進出。朝刊配送後に建材を積み、夕刊前に戻るといった“プラスワン運行”で車両稼働率を引き上げている。同・緒方司部長によると「地下駐車場や狭隘路でも搬入しやすい低全高の特性が評価され、建築現場や商業施設搬入で重宝されている」という。

案件は増えているが、昼間稼働のドライバー確保が大きな課題だ。利用運送に依存しているため利益率は圧迫され、自社車両・自社ドライバーを抱える方向の検討が始まっている。ただし、新聞輸送の時間制約と建設現場の“一日拘束”の相性問題は残る。小型2トン車や箱車を導入し、案件ごとに最適化することが鍵とみられる。

福岡市東区・香椎浜の新拠点は6600平方メートル(2000坪)の規模を誇る。佐々木氏は「折り込み専用設備を外部移転したことで一般物流のスペースが確保され、旗艦拠点として拡張が進んでいる」とし、「今後は2号店、3号店展開も視野に入れる」と一般貨物事業の拡大の展望を語った。

▲同社拠点内観

さらに、コンテナターミナル・税関至近の立地を生かし、保税倉庫機能の導入を検討。中国-韓国からの輸入貨物やEC関連商材を対象とした“港湾起点物流”に乗り出す構想を描く。

売上構成の8-9割はいまだ新聞・折り込みだが、部数減少に伴い路線数は縮小。新聞社は単価引き上げで輸送会社の事業継続を支えており、同社も「荷主として輸送会社を守る」立場を強く意識する。一般貨物案件を組み合わせ、協力会社の稼働を平準化する取り組みも進めている。

九州各地の新聞販売店を“デポ”とし、新聞・折り込みと同便で一般貨物を届けるラストワンマイル事業にも再挑戦したい考えだ。地域新聞社との折り込みネットワークを利用すれば、宮崎や鹿児島まで輸送ルートを延ばせる。販売店の収益機会創出につながり、結果的に新聞輸送の持続性も高められる可能性がある。

博多湾岸では大型倉庫の新設が相次ぎ、供給過多で賃料下落が起きている。同社は「大規模汎用品」での競争を避け、港湾近接の立地▽平ボディなど希少車両▽販売店網──という独自インフラを組み合わせた差別化を進める方針だ。

6600平方メートルの旗艦倉庫、博多港の地の利、平ボディ車両、そして販売店網。これらを束ねた独自モデルを磨けるかどうか。同社が、新聞折り込みから一般物流への転換を成功させる試金石となるだろう。

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