調査・データ矢野経済研究所は21日、電動ミニカーや超小型モビリティーなどの次世代モビリティーは今後、国内で需要が拡大し、2035年には国内販売台数が10万2100台にまで増加する可能性があるとするレポートを公表した。日本ではこれまで小型モビリティーの普及が進まなかったが、用途の特化や低価格化、カーシェアリングやカーリースの普及などで、利用者が広がるとしている。
世界的に見ると、次世代モビリティーの導入は、環境規制の強化や、車と人の関係を見直した都市の設計が進む欧州で進んでいる。「Ami」の成功でシェアを獲得したシトロエン(フランス)に続こうと、ルノー(同)やセアト(スペイン)といった大手欧州自動車メーカーだけでなく、中小メーカーも第2のAmiを狙った都市型EVのラインナップを拡充している。さらに欧州トヨタや中国企業も欧州市場に参入を計画するなど、競争が激化しつつある。
日本市場でも、次世代モビリティーには一定のニーズが認められるものの、軽自動車や原付バイクなどがあるなか、敢えて超小型モビリティーや電動ミニカーを選ぶ理由に乏しいのが実状といえる。超小型モビリティーのトヨタ「C+pod」の生産が終了した影響もあり、国内の次世代モビリティーの新車販売台数は24年に1280台まで縮小し、市場の成長は見込めないとの見方もある。
しかし、広島県東広島市のスタートアップ、KGモーターズが開発した1人乗りEV(電気自動車)「mibot」が好評で、市場に変化がみられてきた。今後は、単に競合製品との価格差を強調するのではなく、利用イメージが明確化された電動ミニカーが続々と市場に投入される可能性がある。
また、次世代モビリティーは価格が安く、収益率が低いため、サブスクリプションやモビリティサービスなどのバリューチェーンで稼ぐ方法が模索され、利用者のコストを軽減する方法として期待されている。
一方、業界で警戒感が高まっているのが、中国BYDの軽自動車EVで、国内では26年後半の投入が予定されている。中国のEVは破壊的な低価格で、BEV技術に関する技術力も高いため、次世代モビリティーのニーズを大きく侵食する可能性がある。
そうした状況を踏まえたうえで、同社は24年の運転免許返納者数が5年振りに増加に転じる一方、公共バスの空白エリアが広がるなどしており、次世代モビリティーへの潜在的なニーズは高いと指摘。都市型MaaS(Mobility as a Service)による都市交通システムの拡大や、観光地周遊、訪問販売業務、ラストワンマイル物流といったさまざまな用途に特化した次世代モビリティーの需要が広がると推測した。今後、実用性と価格のバランスが取れた新型モデルが登場し、カーボンニュートラルの推進に向けて自治体や企業を中心に需要が増加すれば、35年に販売台数は年間10万台を超えると予想している。
同社は「日本では真正面から軽自動車や二輪車と競合を避け、車両設計では低価格化と用途特化、事業モデルでは継続収益ビジネスを実現することが次世代モビリティー市場の成否を分ける」としている。
■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。
※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。
LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com
LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。
ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。