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自動化の現実とCLOの覚悟──SC再設計を問う

2025年12月17日 (水)

イベント17日にマイドームおおさか(大阪市中央区)ほか、大阪市内複数会場で開幕した「Startup JAPAN EXPO 2025 in 大阪」では、併催の展示会を含め、全16会場で多彩なセミナーが催されている。18日も引き続き開催されるなか、物流業界の構造改革をテーマに掲げた展示会の「第1回 物流&SCM 変革テックEXPO」(LGX 2025)では、現場実装から制度設計まで、物流を巡る本質的な議論が展開された。

▲SBSホールディングス LT企画部長 曲渕章浩氏

SBSホールディングスLT企画部長の曲渕章浩氏は「混沌のサプライチェーンを変革せよ──SBSと読む“次の10年”」と題したセッションに登壇し、物流現場における自動化の現実と、次の10年を見据えた取り組みについて講演した。モデレーターは、本誌・赤澤裕介編集長が務め、現場視点と経営・構造視点を行き来しながら議論を深めた。

曲渕氏は、物流業界を取り巻く環境を「加速度的な人手不足」と「自動化技術の急速な進化」という2つの潮流で捉え、「自動化は入れればうまくいくものではない。正直に言えば、うまくいっている例は多くない」と率直に語った。投資回収の源泉が省人化や省スペースに限られる一方、日本は人件費水準が相対的に低く、海外と比べてROIが成立しにくい。加えて物流は、荷姿や物量、波動、作業条件などの変数が多く、製造業のFAと異なり標準化が難しい点が、自動化のハードルを押し上げていると整理した。

それでも同社は、自動化を「止められない経営課題」と位置付ける。現場での実装を通じて学びを蓄積する実践型の取り組みに加え、本番導入前にロボットの特性を把握するラボ活用、AI(人工知能)を用いた科学的アプローチによって、複雑な条件設計や組み合わせの最適化に挑んでいるという。対談では、単発の省人化ではなく、複数荷主の波動を束ねる「共同化」と、商材特性と設備の相性を見極める「特性理解」が、今後の自動化投資の前提になるとの認識で一致した。

続いて、赤澤編集長が単独で登壇し、「CLO選任期限まで半年──荷主・物流の“SC構造問題”を読み解く」というテーマのもと、物流を巡る構造問題に切り込んだ。冒頭、赤澤編集長は「今日話したいのは、CLO(物流統括管理者)を誰にするかではない」と強調。制度の本質は人選ではなく、企業がこれ以上“物流から目を背け続けることができなくなった”という現実にあると指摘した。

▲LOGISTICS TODAY 赤澤裕介 社長兼編集長

いわゆる2024年問題についても、「ドライバー不足」や「高齢化」といった現場要因に還元する見方に疑問を投げかけ、実態は無理な時間指定や短納期、急な変更、属人対応といった負荷を、現場が飲み込み続けてきた構造の限界だと整理。発荷主・着荷主、元請け・下請けといった区分が責任を分断し、サプライチェーン全体に責任を持つ主体が不在となっている点、経営と現場が別の言語で語られ続けてきた断絶を、根本課題として挙げた。

特に赤澤編集長が重視したのが、「発荷主と着荷主を分けて考える時代は終わった」という視点だ。多くの企業は、出す側であると同時に受ける側でもある。着荷側の都合が次工程の無理を生み、そのしわ寄せが物流現場に集中してきた現実を直視しなければならない。CLOとは、発荷主としてだけでなく、着荷主としての自社の振る舞いを厳しく問い直す存在だと位置付けた。

最後に、CLOを単なる調整役にしないこと、コスト偏重のKPIを見直すこと、現場の無理を努力談ではなく経営への警告として受け止めることを、経営に求められる変化として示した。CLOとは肩書きではなく、企業の物流に対する覚悟そのもの──。LGX 2025での議論は、自動化の現実と責任の再設計という二つの視点から、物流変革の核心を浮き彫りにした。

18日も引き続き、多様な講演や展示を通じて、スタートアップと製造・物流業界の接点が広がる。

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