イベントスタートアップ展示会「Startup JAPAN EXPO 2025 in 大阪」が、17日・18日の2日間にわたり大阪市内で開かれた。併催の「製造業AI・DX EXPO」(MDX 2025)および「物流&SCM変革テックEXPO」(LGX 2025)を含む会場は連日多くの来場者でにぎわい、展示と並行して行われたセミナーでも満席や立ち見が相次いだ。なかでも18日のカンファレンスは、前日を上回る熱気に包まれた。

2日目の18日は、LGX 2025朝一番のセミナーから高い関心が集まった。東京海上ホールディングス高度専門人材プリンシパルの大野有生氏が登壇した生成AI(人工知能)をテーマとするセッションには、事前申し込みの段階から参加希望が殺到。当日の飛び入り参加も含めて会場は早々に満席となり、座席を増設しても収まり切らず、立ち見や会場外から聴講する来場者の姿も見られた。18日のLGXカンファレンスは、象徴的な盛り上がりの中で幕を開けた。

▲東京海上ホールディングスの大野有生氏
大野氏が語ったのは、生成AIを「次の当たり前」として物流現場にどう根付かせるかという実装の視点である。生成AIは業務効率化の切り札として注目を集める一方、現場では「何から手を付けるべきか分からない」「導入自体が目的化してしまう」といった戸惑いも根強い。大野氏は、AI活用を単なる省力化ツールとして捉えるのではなく、現場で起きている課題の可視化や判断の高度化に結び付ける必要性を指摘。業務プロセスやデータの前提条件を整理しないままツールを導入しても効果は限定的であり、運用設計と現場理解を伴って初めて価値を発揮すると強調した。

▲フジトランスポートの松岡弘晃社長
続くセミナーでは、フジトランスポート(奈良市)社長の松岡弘晃氏が登壇し、「トラック新法で物流が激変!──運賃上昇・荷主責任・輸送の再設計」をテーマに議論を展開した。松岡氏は、運賃水準の是正や荷主責任の明確化が進むなかで、物流事業者が従来の受け身の姿勢を改め、輸送そのものを再設計する局面に入っていると指摘した。制度対応を単なる負担増と捉えるのではなく、経営の転換点と位置付けることが重要だとし、価格交渉や契約条件の見直しを含め、荷主と物流事業者が役割とコスト構造を共有する必要性を訴えた。

午後からは、ロボティクス導入を巡る実務論に焦点が移った。アイオイ・システム営業本部第三営業部シニアマネージャーの大久保雄司氏と椿本チエインマテハン事業部第一営業部部長の藤田義昭氏が登壇したセッションでは、単なる自動化ではなく、「人とロボットをどう掛け合わせ、共創させるか」という視点が強調された。両氏は、人が必ず関与する工程が残る現場を前提に、ロボットを“人の代替”としてではなく、“人の作業を分解・再構成する存在”として設計する重要性を指摘。人の判断力や柔軟性と、ロボットの処理能力や安定性を組み合わせることで、現場全体の生産性と安定稼働を高めるという考え方だ。

▲アイオイ・システムの大久保雄司氏
大久保氏は、バーコード管理やロケーション整備といった基礎が整っていない現場では、ロボット導入がかえって混乱を招くとし、スモールスタートで人とロボットの役割分担を見極めながら段階的に拡張すべきだと説明。

▲椿本チエインの藤田義昭氏
藤田氏も、自動化を省人化と短絡的に結び付けるのではなく、「同じ人数で処理量を高める」発想への転換が不可欠だと述べた。人とロボットの共創を軸に据えた現実的な自動化論が、来場者の関心を集めた。
2日間の大トリとなるセミナーでは、国土交通省中国運輸局自動車交通部貨物課長の田中幸久氏が登壇し、「改正物流二法とトラック・物流Gメンが変える“荷主と物流”」をテーマに語った。自身がトラック・物流Gメンである田中氏は、その役割を監視や摘発ではなく、荷主と物流事業者の間で途切れがちなコミュニケーションをつなぐ「仲介役」と位置付ける。運賃水準については、標準的運賃の5割を下回る水準を一つの目安として指導していることを明かし、ボトムラインを示すことで是正が進みやすくなると説明した。

▲中国運輸局自動車交通部貨物課長でトラック・物流Gメンの田中幸久氏
この田中氏のセミナーでは、事前に募ったアンケート内容に加え、会場スクリーンに投影したQRコードから来場者がその場で質問や意見を投稿できる仕組みも取り入れられた。寄せられた声に田中氏が即座に答える双方向の進行は、制度解説にとどまらず、現場の疑問を正面から受け止める姿勢を印象付けた。行政が踏み込めるのは一歩に過ぎないが、その一歩を本気で示すことで、現場の対話を後押しするという考えが随所ににじんだ。
現場実装、制度対応、技術導入──4つのセミナーはいずれも切り口は異なるものの、共通していたのは「部分最適にとどまらず、持続可能な形へどう移行するか」という問いである。Starup JAPAN 2025 in 大阪と併催で行われたLGX 2025の2日目は、その現実的な論点を強く印象付ける一日となった。
なお、「Startup JAPAN」は次回、26年4月16日-17日に東京・幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催される予定だ。すでに出展社募集も始まっており、大阪開催で示された現場実装への関心と熱量が、次回どのような広がりを見せるのか注目される。
■「Startup JAPAN 2026」
https://eight-event.8card.net/climbers/startup-japan/for-exhibitors/
















