調査・データ日本貿易振興機構(ジェトロ)がまとめた「インド自動車産業サプライチェーン実態調査」によると、インドの自動車産業は二輪・三輪・四輪を含む市場規模が2023年度に2400億ドルに達し、26年度には3000億ドルへ拡大する見通しだ。四輪販売は世界3位、製造業GDPの40%を占める基幹産業となっており、日系メーカーも乗用車市場で半分のシェアを持つなど存在感を維持している。
乗用車生産はコロナ禍で落ち込んだ後に回復し、24年度は506万台となった。国内販売は430万台、輸出は77万台に達し、市場は再び拡大局面に入っている。需要面では消費者の嗜好変化が鮮明で、SUV・MPVの構成比は18年度の29%から24年度には65%へ上昇した。1人あたり可処分所得の増加を背景に、低価格車から高価格帯モデルや高機能車への志向も強まっている。
一方で、電動化の進み方は欧州や中国とは異なる。政府はエコカー普及政策「FAME」や生産連動型奨励策「PLI」などの支援策でEV(電気自動車)普及を後押ししているが、四輪市場では当面、内燃機関車が主力にとどまる見通しだ。24年のEV登録台数は10万台超、25年には18万台超へ増加したものの、充電インフラ不足や車両価格の高さから急速な全面移行には至っていない。
ジェトロは、30年までの移行期にはハイブリッド車がEV普及の橋渡し役になる可能性が高く、CNG(圧縮天然ガス)車やE20(ガソリンにバイオエタノールを混合した低炭素燃料)対応車を含め、内燃機関関連部品の需要はなお一定期間続くとみている。商用車分野では40年ごろまで内燃機関が残るとの見方も示した。
サプライチェーン面では、OEM、部品メーカーともに北部、南部、西部の主要自動車集積地に集中している。OEMはティア1を起点に体系的な調達体制を構築しており、品質、供給安定性、コスト、現地化対応力を重視してサプライヤーを選定している。ただし、共通課題としてティア2以下の品質管理の未成熟、半導体や高精度部品の供給制約、輸入依存に伴うコスト増が挙がる。在インドの日系企業では、高品質を維持できる一方で、現地化の遅れや輸入部材の高さが価格競争力を圧迫している。
部品分野では、日本企業にとって参入余地が比較的大きい領域も浮かぶ。調査は、電子部品、EV関連部品、先端材料、精密加工分野で現地供給がなお不足していると指摘した。特にセンサー、ECU(車載小型コンピューター)、ワイヤーハーネス、バッテリーマネジメントシステム、駆動モーター、軽量合金、高張力鋼、マグネシウム加工などは、日本の中堅・中小企業が技術優位を発揮しやすい分野と位置付ける。高精度加工、品質管理、工程管理、デジタル品質トレーサビリティーといった日本企業の強みも、現地のティア2・ティア3の弱点を補完し得る。
もっとも、参入のハードルは低くない。部品の標準規格であるBISやAISなどの認証取得には時間を要し、PLIの適用には50%以上の国内付加価値が求められる場合がある。政策変更の不透明さ、輸入規制、関税、ESG対応、インフラ未整備に加え、インド企業との意思決定スピードや商習慣の違いも障壁となる。ジェトロは、いきなり単独進出するより、技術提携や合弁を起点に現地ネットワークを築き、中長期的に現地拠点設立を視野に入れる段階的な参入が現実的と整理した。
インド市場は、規模の大きさだけでなく、日系OEMやティア1がすでに一定の基盤を持つ点でも日本企業にとって参入しやすい側面がある。一方で、求められるのは単なる輸出ではなく、現地化へのコミットメント、コスト対応、現地サプライヤーとの協業、規制順守を含めた総合力だ。成長市場であることは確かだが、成功の条件は「高品質」だけでは足りない。現地適応と持続的な体制構築まで踏み込めるかが鍵となる。
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