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国家備蓄放出を検討、物流コストへ波及

2026年3月8日 (日)

行政・団体ホルムズ海峡の封鎖が長引くなか、日本政府が国家石油備蓄の放出検討に入ったことが分かった。国際エネルギー機関(IEA)加盟国の協調放出だけでなく、単独での放出も選択肢に含まれている。実現すれば、2022年のウクライナ侵攻時のIEA協調放出とは異なり、1978年の制度創設以来初の単独放出となる。ブレント原油は週末にかけて92ドル台まで急騰しており、トラック運送業界への影響が広がり始めている。(編集長・赤澤裕介)

元売り各社はすでに政府に対し、国家備蓄と産油国共同備蓄へのアクセスを要請している。入札プロセスの迅速化も求めた。海外メディアによると、日本向け原油1400万バレルがペルシャ湾内で動けない状態にあり、製油所への供給が細り始めていることが背景にある。

政府の姿勢は急速に変わった。木原稔官房長官は2日の会見で「石油製品の供給に直ちに影響はない」と述べ、赤澤亮正経済産業大臣も4日に備蓄放出を否定していた。だが元売り各社の要請を受けた6日には放出検討が表面化した。

ブレント原油先物は6日に92.69ドル/バレルで引け、週間の上昇率は28%に達した。米ゴールドマン・サックスは100ドル超えもあり得るとの見方を示している。イラクが日量150万バレルの減産に入り、クウェートも貯蔵容量の不足から減産を開始するなど、供給不安は湾岸全体に広がっている。

日本の原油輸入は95%超が中東依存で、うち70%がホルムズ海峡を経由する。25年12月末時点の備蓄量は合計254日分(国家146日分、民間101日分、産油国共同7日分)。IEAが求める90日分を大きく上回るが、海峡封鎖が長期化すれば民間備蓄の目減りは避けられない。アジアではタイが原油・石油製品の輸出を停止し、中国も大手製油所にディーゼル・ガソリンの輸出制限に動いた。

軽油価格の「底」が抜ける懸念

備蓄放出が実現しても、軽油価格への抑制効果は限定的だ。放出の目的は民間備蓄の補填であり、市場価格を直接押し下げる仕組みではない。

運送業界にとって厳しいのは、原油高を吸収する緩衝材がもう残っていないことだ。軽油引取税の暫定税率(1リットルあたり17円10銭)は4月1日に廃止されるが、その効果はすでに先取りされている。政府は25年11月から元売り各社に暫定税率分と同額の補助金を支給しており、足元の軽油小売価格(全国平均143-145円台)にはこの軽減分が織り込み済みだ。4月の廃止は補助金から法的な減税への切り替えであり、店頭価格が追加で下がるわけではない。

つまり暫定税率廃止というカードはもう切られている。全日本トラック協会の推計で年間2978億円とされる軽減効果を享受した状態で、原油90ドル超という新たなコスト圧力が上乗せされた形だ。

▲原油市況と軽油価格、日本の備蓄・税制の主要指標(クリックで拡大)

トランプ米大統領は7日にイランへ無条件降伏を要求しており、短期的な事態収束は見通しにくい。原油高が長引けば、燃料サーチャージの再設定や運賃交渉のやり直しは避けられない。暫定税率廃止で得た「浮き」を経営改善に振り向ける余裕は、ホルムズ危機によって急速に縮んでいる。

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