ロジスティクス物流DX(デジタルトランスフォーメーション)開発のアセンド(東京都新宿区)は22日、「第3回ロジックスカンファレンス」を開催した。2026年4月に開始されるCLO(物流統括管理者)の設置義務化を控え、物流がコストから経営の核へと昇格する歴史的転換点において、その真の役割を議論することを目的に、グロービス経営大学院東京校とオンラインのハイブリッド形式で実施された。サプライチェーン(SC)の第一線をけん引する有識者や実務家3人が登壇した。
元キユーピー上席執行役員でFujita Office社長の藤田正美氏は、現在の物流危機を「供給側の供給能力が足りてない構造の問題」であると指摘。過去30年にわたり、価格競争や過剰なサービス要求が固定化し、「SC全体で意思決定の主体がいなかった」ことが問題の背景にあると説明した。これからのCLOには、単なる自社内の効率化にとどまらず、「社外も業界も含めた構造を読んで判断を引き取って未来を設計する経営機能」としての役割が不可欠であると強調した。

▲Fujita Office代表、元キユーピー上席執行役員の藤田正美氏
また、キユーピー時代にリードタイムを翌日から翌々日へと見直した事例を交え、危機回避だけでなく持続可能な標準への復帰の重要性を語った。
流通経済研究所理事長の加藤弘貴氏は、サプライチェーン(SC)マネジメントの本質は機能別組織の壁を打破し、SC全体を一つのシステムとして捉え統合し最適化することにあると語った。特に、過度な高頻度配送や納品期限ルールについて「三分の一ルールみたいな形で意味のない管理をして、そこでコストアップになっていることが消費者価値を毀損している」と問題視した。解決策として、顧客価値を起点とした商慣行の見直しと、エンドツーエンドでのガバナンス構築の必要性を提言した。

▲流通経済研究所理事長の加藤弘貴氏
さらに、業界横断でのビジネスプロセスやデータ標準化を推進し、「普及してない標準は意味がない」と述べ、普及をセットにした生きた標準を作ることが重要であると語った。
日清食品専務取締役でCLOの深井雅裕氏は、社会課題の解決と企業価値の向上を同時に実現する同社の取り組みを紹介した。社内においては「売上対比何パーセントかみたいな議論が多いが、SCでいかに価値を創造していくかがゴールだ」と述べ、各工場が行っていたデリバリーオーダーをSCM部門へ移管し集約することで、効率化とトラック台数の削減を実現したと語った。

▲日清食品専務取締役業務変革推進部長[兼]サプライチェーン本部長[兼]組織開発部管掌・物流統括管理者(CLO)深井 雅裕氏
社外においては、着荷主である卸や小売を起点とした共同保管と共同配送モデルへのシフトを進めていると説明した。CLOは「社内の各部門をつなぐ、社外のサポーターもしくは取引先とつなぐ、あとは社会とつなぐ」という3つをつなぐ役割を担い、ゼロサムゲームではなくパートナーシップ型の共創を牽引することが求められると締めくくった。
アセンド社長の日下瑞貴氏がモデレーターを務めたパネルディスカッションでは、登壇した3人が過去30年の総括と未来への設計について意見を交わした。

▲アセンド社長の日下瑞貴氏
過剰サービスについて加藤氏は「発注側が欠品を嫌がり無理な物流を強いているのに、そのコストを発注側が負担しない構造に大きな問題がある」と指摘した。深井氏は「卸店からの欠品を防ぐための調整に多大なコストがかかっているが、最終的な消費者への店頭欠品は実際には少ない。CPFR(共同計画・予測・補充)のような仕組みで下流の在庫を下げ、効率的なSCを作りたい」と実情を語った。藤田氏は「品質の要求が行き過ぎており、過剰なサービスにかかるコストは最終的に消費者が負担することになり、真の利益を損なっている」と述べた。
また、売上高物流費の指標について藤田氏が「値上げなど物流活動と関係ないところで数値が変動するためナンセンスであり、作業区分別に単価を決めるべきだ」と語ると、深井氏も「売上高物流費は全く気にしておらず、どのような新しいSCを作るかという議論をしている」と同調した。最後にこれからの物流変革に向けて、加藤氏は「消費者に対してどうモノを届けるべきか、あるべき姿を自らのSCでデザインし実行していくことがCLOの役割だ」と述べ、藤田氏は「構造の変化を認識し、平準化、リードタイムの共有、優先順位、そして発注制度の再構築を組み立てていく必要がある」と語った。深井氏は「それぞれの立場の正しさを理解し共有することで新しい物流が生まれる。社会の価値を創造し、元気な日本にしていくことを経営視点で引っ張っていくのがCLOだ」と熱いメッセージを送り、カンファレンスは幕を閉じた。(土屋悟)
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