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日仏鉱物ロードマップ、カレマグ以外も共同投資へ

2026年4月1日 (水)

▲(左から)ロラン・レスキュール氏、赤澤亮正氏(出所:経済産業省)

産業・一般経済産業省は4月1日、エマニュエル・マクロン仏大統領訪日に合わせ、赤澤亮正経済産業大臣がフランスのロラン・レスキュール経済・財務・産業主権・エネルギー主権・デジタル主権大臣と会談し、「日仏重要鉱物協力ロードマップ」に署名したと発表した。ロードマップには、フランス南西部で建設中のカレマグ重レアアース精錬工場への原料調達にとどまらず、第三国での鉱山開発への共同参入やカレマグ以外の共同投資案件の検討が明記された。(編集長・赤澤裕介)

ロードマップは、2024年5月に齋藤健経産大臣(当時)が署名した「重要鉱物分野の協力に関する日仏共同声明」の後継文書にあたる。フランス側の提案をもとに策定され、協力事項として3点を掲げた。

▲日仏重要鉱物協力ロードマップの主な協力事項(クリックで拡大)

1点目は、カレマグプロジェクトへの原料を生産する第三国への共同アプローチだ。カレマグは年間5000トンの鉱石とリサイクル磁石2000トンを原料に使う計画で、親会社であるカレスターの社長は「鉱石原料は少なくとも当初数年間は欧州域外から調達する」と述べている。カレスターは25年10月、カナダ・ケベック州のトルンガット・メタルズとジスプロシウムとテルビウムを含む重レアアースの10年引取契約を締結しており、調達先の1つはすでに確定している。ロードマップはこうした第三国の鉱山開発に日仏が共同で関与する枠組みを明記した。あわせて、カレマグでの追加の重レアアース分離精製に関する協議も盛り込まれており、当初の年間600トン(世界の15%相当)を超える能力拡大も視野に入った。

2点目は、カレマグ以外の重要鉱物分野での共同投資案件の検討だ。本紙が既報した通り、カレマグには岩谷産業とJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)が最大1億1000万ユーロを出融資し、重レアアース生産量の50%を日本向けに長期契約で確保している。今回のロードマップは日仏間の鉱物協力をカレマグ1件に限定せず、別のプロジェクトの検討に言及した。対象鉱物や候補地は明示されていないが、ロードマップが「日本、フランス又は第三国において」共同プロジェクトを推進すると記しており、欧州域内に限定されない。

3点目は、JOGMECとOFREMI(フランス産業部門鉱物資源調査所、仏地質調査所BRGM運営)の連携強化だ。JOGMECは日本の資源探査・調達を担う公的機関で、OFREMIはフランスで同様の機能を持つ。両機関が直接つながることで、鉱山情報の共有や共同評価の基盤ができる。個別案件ごとに政府間で交渉するのではなく、機関同士が継続的に情報を交換する体制になる。

原料・製品の輸送経路

カレマグの生産規模を日本のレアアース輸入全体と比較する。財務省貿易統計によると、24年の日本のレアアース輸入量は8335トンで、中国が62.9%(5246トン)、ベトナムが32.2%(2688トン)を占めた。ただしこの数字は軽レアアースを含む全量であり、重レアアースの分離精製はほぼ全量が中国に依存してきた。カレマグから日本向けに供給される重レアアース酸化物は年間300トン(生産量600トンの50%)で、経産省は日本需要の2割に相当するとしている。

▲重レアアースの主な供給構造(日本向け、クリックで拡大)

ライナス・レア・アースは25年5月にマレーシア工場でジスプロシウムの分離生産を開始し、6月にテルビウムを加えた。同工場の重レアアース分離能力は年間1500トンだが、ジスプロシウムとテルビウムの実際の生産量は公表されていない。双日が25年10月から日本向けの輸入を始めており、中国以外から分離精製済みの重レアアースが日本に届いた初の事例となった。

カレマグの原料供給網は以下の通りだ。リサイクル磁石2000トンについては、カレスター社長が「回収元は主に欧州域内で、フランスからの割合が大きい」と述べている。カレマグはリヨン近郊のヴェニシューに解体・脱磁サイト(700平方メートル)を持ち、EV(電気自動車)、風力発電機、電子機器から取り出した使用済み永久磁石を買い取って解体する体制を整えている。欧州域内の廃磁石回収はカレマグ稼働に合わせて27年から本格化する見通しだ。一方、鉱石5000トンの調達先は欧州域外で、トルンガット・メタルズ(カナダ)との10年契約が確定している。同社はケベック州ストレンジ・レイク鉱山の開発を進めており、カナダからフランスへの鉱石海上輸送が新たに発生する。

▲カレマグ関連の主な輸送経路(クリックで拡大)

カレマグの精錬製品は出融資者である岩谷産業・JOGMECが重レアアースの50%を確保し、欧州向けでは仏自動車大手ステランティスがレアアース酸化物3400トン超の10年契約を結んでいる。原料側ではトルンガットとの契約が確定した一方、5000トン全量の調達先が確保されたわけではなく、残りの原料供給元と輸送契約はこれからだ。

ホルムズ海峡の通航量が3月以降大幅に減少するなか、エネルギーと鉱物の両面で調達経路に関する国家間の合意や企業間契約が重なっている。フランスは26年G7議長国であり、6月のエビアン・サミットで今回の日仏ロードマップがG7全体の行動計画に格上げされる可能性もある。

◆ この記事をより深く理解するために ◆

・日仏ロードマップの前段となる日米の枠組み。鉱物13プロジェクトと原油備蓄の合意内容を整理した。
「日米が原油備蓄と鉱物で4文書合意」(3月20日)
・ホルムズ海峡の通航減少が日本のエネルギー調達全体に与える影響
「中東原油9割依存の日本、備蓄頼みに限界も」(3月2日)

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