国際ホルムズ海峡の実質封鎖は、原油輸入の9割を中東に頼る日本のエネルギー安全保障を直撃する。(編集長・赤澤裕介)
日本の原油輸入は日量270万バレル前後で、中東依存度は9割を超える。ホルムズ海峡はその大半の輸送ルートにあたり、封鎖が長引けばエネルギー供給の根幹が揺らぐ。
木原稔官房長官は「現時点で供給への即時影響の報告はない」との認識を示した。ただし、これは国内の石油備蓄が当面の需要を賄える前提に立ったものだ。資源エネルギー庁の公表データ(2025年12月末時点)によると、国家備蓄146日分、民間備蓄101日分、産油国共同備蓄7日分の合計254日分を確保している。数字の上では余裕があるように見えるが、民間備蓄の大半は精製・流通に組み込まれた在庫であり、全量を危機対応に回せるわけではない。封鎖が数週間に及べば、備蓄放出だけで需要を賄い続けることは難しくなる。
代替調達の選択肢は限られる
代替調達先としてはロシア(サハリン)、米国(シェールオイル)、ブラジル、西アフリカなどが候補に挙がるが、即時に日量200万バレル超の不足分を補える体制は整っていない。サウジアラビアの東西パイプラインやUAEのフジャイラ向けパイプラインで一部は海峡を迂回できるものの、容量に限界がある。紅海側のターミナルも処理能力が不足しており、完全な代替にはならない。
OPEC+は4月の会合で増産を検討しているが、日本向けに即座に振り向けられる余剰はない。封鎖が2週間を超えるシナリオでは、備蓄の全面放出に加え、ロシアや米国からの緊急輸入交渉が不可避となる。
日本郵船、商船三井、川崎汽船の邦船3社はいずれもホルムズ海峡の通過停止を発表しており、原油タンカーの運航再開には海峡の安全確保と戦時保険の復活が前提となる。保険ブローカー大手の推定では、ペルシャ湾の戦時保険料は25-50%上昇。保険コストの増加は原油調達コスト全体を押し上げ、最終的にガソリンや物流運賃に転嫁される。
出光興産やコスモエネルギーホールディングスなど国内精製会社は在庫の確認を進めている。エネルギー価格の上昇は輸送費や消費者物価を押し上げ、日本経済全体にインフレ圧力をかける。化石燃料の輸入依存度が8割を超える日本と韓国は、アジア諸国の中で最も影響を受けやすい。
ブレント原油先物は週末の店頭取引で1バレル80ドル前後まで上昇した。前週末の73ドル前後から1割の急騰だ。封鎖が1-2週間続く場合、アナリストは95-105ドルへの上昇を見込む。2週間を超えれば110-130ドル以上と、1970年代のオイルショック級の水準に達するリスクがある。
週明け3月3日の原油先物市場が最初の試金石となる。日本の物流業界にとっては、燃料費の高騰がトラック輸送や航空貨物のコストにも波及するだけに、封鎖の行方を注視する必要がある。
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