イベント名刺管理アプリ「Eight」(Sansan)が主催する日本最大級のスタートアップ展示会「Startup JAPAN EXPO 2026」が、15日・16日の2日間にわたり幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催された。併催の物流・SCM領域専門展「物流&SCM変革テックEXPO(LGX 2026)」では、LOGISTICS TODAYが企画協力し、変革をけん引する業界リーダーたちを招いた特別講演が行われた。4月からCLO(物流統括管理者)の選任が義務化され、物流変革が「努力目標」から「経営の義務」へと変わった今、会場には実装を急ぐ来場者たちの鋭い熱気が満ちていた。

まず登壇したのは、3PL大手として数々の現場変革を主導してきたロジスティードロジスティクスイノベーション部部長の田代肇氏だ。田代氏は「物流はもはや現場任せで済む時代ではない」と述べ、CLO義務化により物流責任が経営課題に直結した現状を鋭く指摘した。同氏が説くCLOの真の役割は、分断された「調達・生産・販売」を物流視点で統合し、経営判断の精度を高めることにある。デジタル化や可視化はあくまで手段であり、目的は「現場の納得」と「経営の科学的な決断」を支えることだ。実業務のデータに基づき、拠点配置や輸送ルートの変更がコストや環境に与える影響を精緻に算出する「物流デジタルツイン」。このテクノロジーを武器に「物流を科学する」姿勢こそが、新時代のCLOに求められる資質であると示した。

▲ロジスティードの田代肇氏
続いての対談セッションは、終始、本音の切り込みが交わされる展開となった。
「CLOという役職を置いただけの企業は間違いなく取り残される」。日清食品専務取締役業務変革推進部長兼サプライチェーン本部長兼組織開発部管掌の深井雅裕氏は、CLOとしての不退転の決意を露わにした。対話は、毎年300品目以上の新商品を世に送り出す同社の「物流効率」という経営の急所にまで及んだ。

▲日清食品の深井雅裕氏
深井氏は、売上のための新商品乱立が現場を圧迫している事実をデータで突きつけ、「積載率を下げ、効率を阻害する商品は勇気を持って整理する」という、営業・マーケティング部門をも巻き込む踏み込んだ経営判断を断行している。モデレーターの本誌・赤澤裕介編集長からコスト削減に伴う「サービスレベルの低下というトレードオフ」について問われると、「ドライバーのリソースという『制約条件』の中で、何を優先し何を捨てるか。商習慣の変革まで含めて、今こそパートナー企業と共に新しい解を作るべきだ」と逆質問を交えて熱弁。現場と経営の摩擦を乗り越えてきた者だけが持つ「変革の温度感」を会場に焼き付けた。

「人手不足の解消としてロボットを導入するだけでは、真の競争力は生まれない」。Exotec Nihonアジア・パシフィック地域取締役社長の立脇竜氏は、自動化をめぐる「部分最適」の罠に鋭い一石を投じた。立脇氏は、従来の自動化投資が「単なる人の作業の置き換え」に終始し、ビジネスの急激な変化に対応できない「動かせない設備」(負の遺産)を生んできた弊害を指摘。今、企業が追うべきはROI(投資利益率)を超えた「ROIC」(投下資本利益率)の視点であり、倉庫単体ではなくサプライチェーン全体の顧客体験から逆算した「全体最適」への舵切りだ。物流を「コスト削減の対象」から「企業の成長を支える資産」へ変容させる戦略こそが、26年以降の自動化の真の解であると詳説した。

▲Exotec Nihonの立脇竜氏
プログラムの最後を締めくくったのは、不動産デベロッパーの枠を超えた新戦略を提示した野村不動産インフラ・インダストリー事業本部事業部副部長兼事業開発課長の宮地伸史郎氏だ。宮地氏は26年を「フィジカルAI元年」と定義。AI(人工知能)が画面を飛び出し、現実世界のロボットや自動運転を動かし始めた今、物流施設に求められるのは立地や面積以上に「電力供給能力」と「データ処理機能」であるという。同氏が描く新戦略では、デベロッパーはもはや「不動産屋」ではない。太陽光発電や大型蓄電池を備えた「巨大なバッテリー」であり、膨大なデータを処理する「エッジデータセンター」を担うインフラプロバイダーへと進化する。共創プラットフォーム「Techrum」(テクラム)を通じ、パートナー企業と共に次世代の「物流OS」を構築する動きは、物流を軸にした新しい産業構造の誕生を予感させた。

▲野村不動産の宮地伸史郎氏
現場実装、制度対応、技術導入──4つのセッションはいずれも切り口は異なるものの、共通していたのは「部分最適にとどまらず、持続可能な経営へどう移行するか」という問いである。本誌・赤澤編集長がモデレーターを務めた対談を含め、そこで交わされた熱い議論は、荷主・物流事業者・テック企業の枠を超え、物流に携わるすべての関係者が変革の当事者として進むべき「CLO時代の羅針盤」となるはずだ。
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