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EUで排出量取引の新基準案、産業界へ無償配分継続

2026年5月12日 (火)

国際欧州委員会は11日、EU排出量取引制度(EU ETS)の2026-30年向け新ベンチマーク案を公表し、加盟国・一般向け協議を開始した。産業界向け無償排出枠配分の算定基準を見直すもので、欧州産業の脱炭素化と競争力維持の両立を狙う。

EU ETSでは、製造業などに対して排出枠を一部無償配分している。基準は各業界で最も効率的な上位10%の設備性能をもとに設定され、それを上回る排出分については企業が排出枠を追加購入する仕組みだ。今回の見直し後も、産業界全体では平均して排出量の75%相当を無償配分でカバーする見通しとなる。

欧州委は今回、産業界の懸念に対応する形で制度上の柔軟措置を最大限活用したと説明。特に電化促進を目的に、14の製品分野では電力使用に伴う間接排出分もベンチマークへ反映する。これにより、26-30年期間で40億ユーロ相当の財務影響が生じるとしている。

今回の基準改定は、4月1日に提案された市場安定化準備金(MSR)改革とも連動する。欧州委は、将来的な排出枠供給ひっ迫や価格変動リスクへの対応力を高め、炭素市場の安定性と予見性を強化する狙いを掲げる。

物流業界への影響も大きい。EU ETSは既に海運分野へ適用が拡大されており、今後は輸送時のCO2排出コスト管理や低炭素輸送への転換圧力が一段と強まる可能性がある。特に欧州域内物流では、電化車両導入、低炭素燃料利用、倉庫設備の脱炭素化などサプライチェーン全体での対応が求められている。

また、欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は3月、ETS排出枠4億枠を活用した総額300億ユーロ規模の「ETS投資ブースター」構想を発表済み。中小企業も含めた脱炭素投資支援を進める方針だ。産業熱利用や温度帯別熱需要など、業種ごとの実情に応じた脱炭素支援も検討されている。

欧州委は7月にもEU ETS全体見直し案を公表予定で、産業別補完ベンチマーク導入など追加改革も議論される見通し。気候政策と産業保護を両立させる制度設計が物流・製造分野を含めたサプライチェーン全体へ波及し始めている。

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