荷主旭化成は5月12日、水島製造所(岡山県倉敷市)の一部誘導品事業を30年度を目途に再構築する方針を取締役会で決議した。スチレンモノマー(SM)と高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、低圧法高密度ポリエチレン(HDPE)は生産を終了する。アクリロニトリル(AN)は水島の年20万トンラインを停止し、年5万トンのAN・MAN(メタクリロニトリル)併産ラインと韓国子会社の東西石油化学で供給を継続する。ポリカーボネートジオール(PCD)は水島での年3000トン相当の生産を停止し、中国子会社などで生産する体制に切り替え、供給を継続する。
サプライチェーン全体で代替品への切り替えに時間を要するとして、約4年の移行期間を設定した。同日、旭化成、三井化学、三菱ケミカルの3社は、26年1月に基本合意した西日本のエチレン製造設備統合について、共同事業体の出資比率を三井化学45%、三菱ケミカル45%、旭化成10%とすることを前提に検討を進めると発表した。ナフサ不足を背景に石油化学製品の供給不足が報じられるなか、旭化成は5月12日時点でAMEC水島工場と関連誘導品設備が稼働を継続しており、当面の供給に支障が出る事態は想定していないと説明している。(編集長・赤澤裕介)
旭化成は同日の発表で、ナフサ不足を背景とした石油化学製品の供給不足報道に触れたうえで、5月12日時点では三菱ケミカル旭化成エチレン(AMEC)水島工場のエチレン製造設備、関連する誘導品設備とも稼働を継続していると説明した。AMECは当面のナフサ調達について目途を付けており、誘導品についても当面、供給が滞る事態は想定していないとした。
今回の再構築決定は短期需給とは切り離した中長期の経営判断との位置づけで、国内人口減少に伴う内需縮小、東アジア地域での競争力低下、カーボンニュートラル対応という同社が掲げる事業環境認識への回答となる。
対象製品について、同社はサプライチェーン全体で代替品への切り替えに相応の期間を要するとの認識を示し、移行期間として約4年を確保した。SM、LDPE、HDPEは30年度を目途に生産を終了するものの、販売終了時期は未定で当面販売を継続する。
SMは樹脂原料、ポリエチレンは各種フィルム・包装資材・日用雑貨向け、ANは樹脂・繊維原料、PCDは合成皮革などポリウレタン樹脂原料として広範な需要家を抱えており、移行期間中の安定供給維持を最優先するとしている。このうちSMは1965年、LDPEは64年、HDPEは70年、ANは62年に水島で操業を開始しており、いずれも50年以上にわたり国内外の需要家に供給してきた基幹品目となる。
対象品目と再構築内容は次のとおり。
ANは水島の縮小ラインと韓国の東西石油化学を組み合わせた供給体制となり、完全な海外移管とは異なる。PCDは水島生産停止に伴い旭化成精細化工(中国・南通)などへ生産機能をシフトする。
SM、LDPE、HDPEの3品目について、旭化成は国内生産能力が他社を含め国内需要を十分に上回っており、自社の生産終了は産業全体の関連設備の稼働率向上を通じて石油化学産業のサプライチェーン強靭化に資する、と説明する。各品目の国内能力、旭化成能力、国内需要、生産・輸出入量は次のとおり。
物流側では、PCDで中国拠点、ANで韓国子会社を含む供給体制となることで、国内需要家向け供給の一部で輸入フローの比重が高まる可能性がある。需要家のBCP設計上は、国内一貫生産を前提とした調達から、海外拠点と海上輸送を含むサプライチェーンへの切り替え対応が課題となる。化学品物流事業者にとっても、ISOタンクコンテナやケミカルタンカーなどを含む取扱品目構成の見直し材料となる。
エチレン統合、旭化成10%出資を前提に検討
3社の共同発表によると、西日本エチレン製造設備の統合に向けた共同事業体の出資比率は、基礎化学品の引き取り量の比率に基づき、三井化学45%、三菱ケミカル45%、旭化成10%を前提に統合検討を進める。出資比率を含む詳細は、今後締結する共同事業契約で最終的に確定する。
26年1月の基本合意では、30年度を目途にAMEC水島工場のエチレン製造設備を停止し、三井化学子会社の大阪石油化学(OPC、堺市)の設備に集約することが決まっていた。統合後のエチレン能力は95万1000トン/年から45万5000トン/年へ52%減となる。
旭化成の出資比率10%は、同社が水島誘導品の主要品目を撤退・縮小することと符合する数字で、各社の基礎化学品の引き取り量比率を反映した形だ。
水島地区について、旭化成はエチレン製造設備跡地の30年度以降の活用を検討するとしており、誘導品設備は生産終了後に速やかに撤去する方針だ。倉敷・水島臨海工業地帯は、岸壁、タンクヤード、パイプラインなど石化向け物流インフラが集積する地域で、SM・LDPE・HDPE・AN・PCDの大型拠点の機能縮小は、関連物流の取扱品目変化を促す。
一方、エチレン製造設備が集約される統合後の大阪地区は、バイオエタノールからエチレン、プロピレン、C4オレフィン、ベンゼン、トルエン、キシレンといった基礎化学品をワンストップで製造する技術「Revolefin」の商業化検討地に位置づけられており、グリーン基礎化学品の生産・物流拠点としての性格を強める見通しだ。
中期経営計画「Trailblaze Together」(25〜27年度)で、旭化成はマテリアル領域(24年度売上1兆3688億円)の2割規模の再編を掲げる。今回の水島誘導品再構築は、中計上の進捗では連結ベース概算780億円分に相当する。一方、対象事業の26年3月期単体売上高合計は1161億7400万円で、こちらは連結内部取引を含む数字となる。
25年6月のMMAなどの事業撤退、25年12月の延岡ヘキサメチレンジアミン生産終了、商社機能の経営統合、鉛蓄電池用セパレータ事業の譲渡、26年1月のAMEC水島工場のエチレン設備停止合意、26年3月のUVC-LED事業終了などと合わせ、中計目標の7割相当の事業再編の意思決定が完了した。残る再編対象はケミカル事業を中心に検討を継続する。
当該事業の従業員251人は社内で再配置する。今期(27年3月期)連結業績への影響は軽微で、設備撤去費用は30年度以降の進捗に応じて計上する。発表は工藤幸四郎社長名で開示された。
■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。
※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。
LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com
LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。
ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。






























