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改正物効法成立、中継輸送を共用拠点化

2026年5月14日 (木)

ロジスティクス長距離トラックの荷物を途中で別のドライバーに引き継ぐ「中継輸送」を国の認定制度に位置付ける改正物流効率化法が13日、参議院本会議で可決、成立した。国土交通大臣が基本方針を定め、2以上の一般・特定貨物自動車運送事業者が共同で作る「貨物自動車中継輸送実施計画」を認定し、認定計画には税制、機構出融資、運行経費補助、開発許可上の配慮、関係法令の許可等の特例という5本の支援措置を組み合わせる。中継輸送が個社の取り組みから、地方公共団体が関与する多事業者共用の幹線拠点政策に組み替わる。(編集長・赤澤裕介)

改正は内閣提出法案として3月6日に閣議決定され、衆議院国土交通委員会で4月10日、本会議で14日にそれぞれ可決して参議院に送付された。参議院国土交通委員会で5月12日に可決し、13日の本会議で成立した。施行は公布の日から6か月以内に政令で定める日となる。

改正の柱は2つで、1つは中継輸送の促進に向けて、国は情報提供や助言などの措置を講じる努力義務、地方公共団体は助言と協力を行う努力義務、一般貨物・特定貨物自動車運送事業者は相互に連携・協働して中継輸送を実施する努力義務、荷主と倉庫業者らは業務に支障のない範囲で協力する努力義務をそれぞれ置き、同大臣が「中継輸送の実施に関する基本方針」を定める規定を新設したこと、もう1つは、2以上の一般貨物・特定貨物自動車運送事業者が共同で作成する「貨物自動車中継輸送実施計画」を同大臣が認定する計画認定制度を創設したことである。施行5年を目途として規定の運用状況を検討し、必要があれば見直す附則も置いた。

認定計画に5本の支援メニュー

認定計画の核に位置付けられるのが「特定貨物自動車中継輸送施設」である。要綱が定義する特定貨物自動車中継輸送施設は、2以上のトラックが駐車・停留して相互に貨物を積み替えるまで一時的に保管する施設で、高速自動車国道など物資流通を結節する道路の近傍に立地し、入浴設備を備えた待機所など運転者の疲労を回復する施設を併設し、出入りの円滑な管理に資する装置や情報処理システムなど荷役・荷さばき効率化の設備を備えることが法令上の要件として明記された。全日本トラック協会が中継物流拠点とサービスエリア・パーキングエリアのシャワー施設拡充を継続要望してきた経緯と重なる。

5本のうち施設整備側にとって焦点となるのが、家屋と償却資産で軽減率を書き分けた課税の特例である。国土交通省の令和8年度税制改正事項によると、認定計画に基づき新たに取得した家屋は固定資産税と都市計画税の課税標準を5年間にわたって2分の1に、新たに取得した償却資産は固定資産税の課税標準を5年間にわたって4分の3に軽減する。適用は2026年4月1日から28年3月31日までに取得した資産が対象で、26年度税制改正で2年間延長された。物流効率化法の認定計画に基づく倉庫用建物等の課税特例を、中継輸送機能を備えた基幹的物流拠点の整備に広げる形となる。関係法令の許可等の特例は、認定を取得した事業者が個別の事業許可手続を省ける枠組みで、手続き負担を軽減し、物流不動産デベロッパーや倉庫業者が参画しやすい環境を整える。

予算面では、26年度物流効率化関連予算が25年度補正57億3000万円と26年度当初25億4500万円を合わせ82億7500万円となり、25年度当初予算比3.5倍に膨らんでいる。このうちモーダルシフト、ダブル連結トラック、中継輸送、貨客混載を含む「日本全体の物流ネットワーク再構築の推進」分は26年度当初3100万円と25年度補正10億3000万円を合わせ10億6100万円。既存の総合効率化計画に基づくモーダルシフト、幹線輸送集約化、ラストワンマイル、共同輸配送向けの物流効率化推進事業と、認定計画への支援メニューがどう接続するかは、26年度の公募要領と施行政省令でどこまで具体化されるかが焦点となる。

認定対象には公共性の観点が色濃く反映される。国交省は法案概要で「多くのトラック事業者が利用できる中継輸送施設の整備促進が必要」と明記しており、税制特例も「地方公共団体が関与した公共性を有する、幹線上の中継輸送機能等を持った物流拠点」を対象とする。施設整備のイメージとして、国交省は京都府城陽市で三菱地所が整備を進める拠点を概要資料に掲げ、自社専用ではなく多事業者共用の幹線中継拠点像を示した。さらに国交省は「中継輸送施設は、今後、自動運転トラックによる運送を支えるインフラとしても機能を発揮」すると概要に明記し、認定拠点を自動運転時代の幹線基盤として位置付けている。

個社運行から共同インフラへ

24年4月から運用が始まった改善基準告示は、トラック運転者の拘束時間を1日原則13時間、延長時でも最大15時間、1か月284時間、1年3300時間を原則とした。労使協定がある場合は、上限を月310時間、年3400時間まで延長できる。1運行が450キロ以上で住所地以外で休息する週は2回まで最大16時間まで延長できるが、休息期間は継続11時間以上を基本とし、継続9時間を下回らないことが求められる。長距離幹線を1人で走り切る運行形態はこの基準への適合が難しく、複数のドライバーが幹線を分担して走るリレー方式に切り替えることで日帰り勤務を実装し、女性、若年層、育児・介護期世代の採用拡大につなげる狙いがある。政府は当初、対策を講じなければ30年度に34%の輸送能力不足が生じると試算した。官民の取り組みで一部は緩和される一方、長距離幹線輸送ではなお中継輸送などの追加策が必要とされており、認定制度はその政策パッケージの実装手段に位置付けられた。

既存の物流効率化法体系とは、補完関係に立つ。24年に成立した前回改正は25年4月にすべての荷主・物流事業者に積載効率向上、荷待ち時間短縮、荷役時間短縮の努力義務を課し、26年4月には年間取扱貨物重量9万トン以上の特定荷主、保有車両150台以上の特定貨物自動車運送事業者、保管量70万トン以上の特定倉庫業者、本部チェーン全体で9万トン以上の特定連鎖化事業者に対し、中長期計画の作成、定期報告、特定荷主への物流統括管理者(CLO)選任を義務付ける枠組みを始動させた。今回の改正は、これら特定事業者が中長期計画に位置付ける実装手段としての中継輸送を、国の認定と支援で後押しする。

民間でも、改正の議論と並行して先行事例が出ている。自動運転接続型では、西濃運輸とT2が4月20日、関東-九州・中四国の最大1000キロを超える特別積み合わせ貨物運送(特積み)の中継輸送のうち、相模原市から兵庫県姫路市までの550キロと、神戸市から相模原市までの515キロにレベル2自動運転トラックを組み込み、特積み幹線輸送への自動運転導入は国内で初めてとなった。同区間のうち東名・厚木インターチェンジから中国道・吹田ジャンクションまでの430キロを自動運転で走り、24時間以内の往復に成功している。共

同拠点型では、センコーと福山通運が福島県須賀川市に貨物集約機能を持つ中継輸送拠点を4月に共同で開所し、鈴与は25年10月時点で全国18か所の中継拠点を保有して拡充を続けている。高速道路接続型では、NEXCO中日本が新東名・浜松サービスエリア隣接の「コネクトエリア浜松」、山陽道・宮島サービスエリアの「コネクトパーキング宮島」を商用拠点として運用している。国交省が法案概要で示した自動運転トラック対応のインフラ整備という政策軸は、これら民間の自動運転接続型の実装を制度面から後押しする設計となる。

ただし、認定制度の発足だけで輸送能力不足が埋まるわけではない。中継輸送には、貨物の積み替えコスト、拠点の立地確保、夜間運用のオペレーション人員、冷凍・冷蔵帯の温度管理、幹線と地域配送のダイヤ接続、復路の貨物確保という運用上の制約がつきまとう。認定拠点の利用料金、荷役責任の所在、トラック予約受付システムによる遅延吸収の仕組みを設計できなければ、5本の支援メニューがあっても実運用は機能しない。制度の実効性は、今後示される施行政省令、補助金の公募要領、認定基準が、共用拠点の利用料金、荷役責任、予約システムまで踏み込めるかにかかる。

◆ この記事をより深く理解するために ◆

「中継輸送を法制化、計画認定と施設整備で後押し」
(26年3月6日掲載/本記事が扱う認定制度を予告した閣議決定報)

「西濃とT2、「特積み」幹線で自動運転組み込み」
(26年4月27日掲載/本記事言及の特積み自動運転中継事例の一次報)

「センコーと福山通運、福島に幹線TC開設」
(26年4月10日掲載/共用型の中継輸送拠点共同開所事例の一次報)

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