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非接触でもひき逃げに、事業者は今すぐ事故対策を

2026年6月1日 (月)

ロジスティクス日本事故防止推進機構理事長の上西一美氏は5月29日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された運輸安全・物流DX EXPOで、「法改正を踏まえた今やるべき自転車事故対策」と題して特別講演を行った。

講演で上西氏は、相次ぐ法改正や新制度の導入を踏まえ、事業者やドライバーが今まさに取り組むべき具体的な事故防止策を、豊富な映像資料や数値根拠をもとに解説した。

▲日本事故防止推進機構理事長の上西一美氏

自転車「青切符制度」の開始とプロドライバーに迫る「変質」

冒頭、上西氏は自転車の違反に対する「青切符制度」(反則金制度)の開始に言及した。これは手続きの効率化であるとしつつも、警察の検挙数増加は確実視されている。ここで注意すべきは、自転車側の取り締まり強化に伴い、トラックなど「車側の安全対策の性質」も変質している点だ。自転車の違反や事故への社会的な関心が高まるなか、万が一プロドライバーが自転車を巻き込む事故を起こした場合、事業者やドライバー自身が負う社会的・法的なペナルティはこれまで以上に厳しくなる。上西氏は「自己破産しても免れることはない」と強く警告し、企業は「自転車通勤者の賠償保険加入調査」や「通勤ルールの早急な整備」など、雇用段階からの防衛策が不可欠になっていると警告した。

9月施行、生活道路の法定速度引き下げと行政処分リスク

特に実務に直結する大きな変化として、9月に予定されている「生活道路の法定速度引き下げ」が挙げられた。対象は、中央線がなく一車線で幅員5.5メートル以下の道路である。これらの道路では、標識がなくても法定速度が「時速30キロ」に制限される。

上西氏は、標識がないために従来の時速60キロと誤認し、時速30キロオーバーで一発赤切符(刑事罰対象)となる危険性を指摘。さらに商用車(緑ナンバー)の場合、重大な違反行為として公安委員会から通報されれば、即座に「3日間の事業停止」などの重い行政処分を受ける可能性があるため、9月までに改正法に対応した社内通達と教育を完了させる必要がある。

事故を誘発する「ながら運転」の盲点

また、交通事故全般のトレンドとして「ながら運転(スマホなど)」のリスクについても時間を割いた。2025年データで148件の重傷過失事故が起きているほか、自転車側のながら運転による重傷加害事故も発生している。上西氏は、法律で直接検挙されない「オーディオ操作」「落ちた物品の拾い上げ」「ずれた包帯の巻き直し」といった日常的な不注意動作が、一瞬の視認遅れから重大な追突・衝突事故を誘発しているリアルなドライブレコーダー映像を紹介。「やってしまった時にパニックにならないよう、日頃の客観的な教育が必要だ」と語った。

求められる「心構え」の変化と実務ガイドライン

自転車の青切符交付がスタートした今、プロドライバーに求められるのは「単に交通ルールを守る」ことではなく、自転車が「突然思いがけない動きをするかもしれない」という前提に立ち、事故を未然に防ぐ具体的なプロトコルを身体に染み込ませることだ。安全の担保は、感覚的な安全運転から「数値と動作に基づいた客観的防衛」へと変わってきている。

まず、自転車の側方通過・追い越しにおいては、道路交通法第18条(3項)に基づき十分な側方間隔(目安1メートル以上)を確保し、困難な場合は時速20-30キロまで減速して通過する。直接の接触がなくても、自車の動きに驚いた相手の転倒を誘発してそのまま立ち去れば、救護義務違反(ひき逃げ)などの刑事事件として立件され、刑事裁判での敗訴(有罪判決)や免許取り消しに至るリスクがある。これを防ぐためには通過後のミラー確認が不可欠であり、後方視認時の前方不注意を防止するため、追い越し前にはあらかじめ「8.33メートル以上(時速30キロで1秒間に進む距離)」の十分な車間距離を確保しておくことが必須となる。

さらに、歩道からの自転車の飛び出しに備え、路面の「自転車ピクト」手前ではあらかじめブレーキに足を乗せる「構えブレーキ」を徹底し、交差点進入時は時速10キロ以下(推奨5キロ)まで減速して、確認回数と制動距離の余裕を確保すべきとした。また、重篤化しやすい大型車の左折事故対策としては、法第34条に定められた「左折の4手順(合図、左寄せ、沿って進入、徐行)」を遵守し、減速や一時停止により自転車との明確な速度差を作ることで、死角への滞留を防ぐ必要がある。大型車はミラー越しに二輪車との距離を見誤りやすい特性を前提に置き、ミラーに影が映った時点で直ちに左折を中止するほどの厳格な運用を求めた。

最後に上西氏は、「たった時速7キロでも人を長期意識不明にさせる過失事故になり得る。客観的な数値や根拠に基づき、感覚任せにしない指導を現場へ反映してほしい」と締めくくった。

法改正をきっかけに変質していく「車側(プロドライバー)に求められる責任と備え」。事故を未然に防ぎ、自社とドライバーを法的・社会的な危機から守るためには、今まさに指導体制のアップデートが必要だ。

上西氏は、今後開催される以下のイベントにも登壇。イベントでは物流・運送事業者が今すぐ実践すべき具体的な安全対策と、経営リスクマネジメントの手法が議論される。9月からの生活道路の法定速度引き下げに伴い、行政処分リスクが上昇することも踏まえ、今一度、自社の安全運行体制の見直しをしてみるべきだろう。(土屋悟)

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