ロジスティクスSpectee(スペクティ、東京都千代田区)は5月29日、サプライチェーンリスク管理クラウド「Spectee SCR」の事業戦略と新機能を発表した。ホルムズ海峡の緊張、関税摩擦、台湾有事への懸念、自然災害の頻発などを背景に、製造業や物流現場で高まる供給途絶リスクに対応する。あわせて、同社は現在の資金調達ラウンドを18億円で最終クローズし、累計調達額が38億円に達したことも明らかにした。新規投資家としてインパクト・キャピタル(渋谷区)が参画したこと、既存投資家の東芝、アスエネと連携して、供給管理やESG領域を統合した包括ソリューション構築を目指すことなども解説した。
同社の村上建治郎CEOは、製造業のサプライチェーン(SC)について「見えないものは守れない、80%が見えずにブラックボックス化しているSCを解き明かすことが必要」と説明した。1次サプライヤーまでは把握できていても、その先にある2次、3次以降の取引関係は見えにくい。どこで災害や地政学リスクが発生し、それがどの部品、どの工場、どの物流拠点に波及するのかを即座に判断できないことが、企業の大きな課題になっているという。
Spectee SCRは、SNS、世界各国のニュース、公的機関の発表、道路・河川カメラ、気象、車両走行、衛星データなどから収集する「世界トップクラスのリスク情報プラットフォーム」(村上氏)をAI(人工知能)で解析し、災害、事故、紛争、サイバー攻撃などのリスク情報をリアルタイムに可視化する。これに企業のサプライヤー情報や拠点情報を組み合わせることで、どのサプライヤー、どの製品、どの拠点に影響が及ぶ可能性があるかを把握できるようにする。製造業はもちろん、内閣官房、防衛省、外務省など政府・省庁からの採用実績も多い。
中核となるのが、SC連携機能による可視化だ。Spectee SCRを導入した企業は、取引先に無償のサプライヤーIDを発行できる。1次、2次と連なる取引先サプライヤーは機能限定版を無償で利用し、自社の製品ツリーや調達先情報を登録することでつながつことで、より長い領域のSC把握と、リスク対応の精度を高めることができる。
さらに、同社はサプライヤーの協力だけでは見えないSC領域が残ることも前提に置き、未可視の下層サプライヤーや取引関係をAIによって推定する機能の実装に向けて検証を続けている。直接把握できていないサプライチェーン上の弱点を早期に検知することで、サプライヤーの協力に頼らずにリスクを可視化し、補完する機能となる。
さらに発表では、Spectee SCRの新機能についても紹介。4月には渋滞情報の可視化・予測機能を追加した。災害情報と交通情報を連動させることで、被災地域周辺の輸送ルートや配送遅延リスク把握を支援する。さらに、6月には全国2万台の道路・河川カメラとの連携を予定し、7月には気象情報やSNS投稿をAI解析して浸水危険度を数値化する機能を投入することにより、倉庫、工場、配送拠点、幹線輸送ルートにおけるリスクを、状況把握にとどまらず「先手の意思決定」をサポートする。
また、AIエージェント機能の実装も進める。チャット形式で「どこで何が起きているのか」「どのサプライヤーに影響があるのか」「次に何を確認すべきか」といった問いに回答し、社内マニュアルと連携して初動対応や選択肢を提示する。将来的には、複数の対応策ごとの損失や影響度を比較し、人の意思決定を支援する機能へ拡張する方針だ。
導入企業では、自動車部品メーカーや自動車メーカー、半導体・電子部品、建設機械、化学メーカーでの利用が広がっている。有事の際に影響を受けるサプライヤーの特定や状況確認を自動化し、初動対応の迅速化や抜け漏れ防止につなげている事例や、地震発生時の対応フロー(企業リストアップ、個別連絡、状況ヒアリング、リスト化、経営トップへ報告など)が従来の12時間から2時間程度に短縮された実例を公開した。
一方で村上氏は、中東情勢やナフサ流通の混乱などでは、まだ予想もしていなかったリスクがあることが顕在化したと語る。製品の原材料不足ではなく作業用の手袋不足が事業停滞を招くなどは想定外だったとする企業も多く、SpecteeとしてもSC全体をトレースしてリスク影響範囲予測の精度をさらに高める必要があるとする。外部公開情報や商用データ、OSINT(オープンソースインテリジェンス)を組み合わせたAI推定機能を高めることにより、こうした広範な連鎖影響の早期兆候を捉え、分析できる精度を高める考えだ。
将来的のロードマップとしてはSpectee SCRをサプライチェーン・リスク・プラットフォームとしての拡張を目指す。従来のピラミッド型SCから、自律分散・共創型のネットワークへと複雑化するSC管理可視化において、メーカー、サプライヤー、物流を包含するネットワーク化を進める。今後はSCを構成する要素としてサプライヤーのつながりだけではなく、その間の輸送・物流領域も可視化し、SCリスク管理を「調達先の把握」から「供給網と輸送網を一体で捉える仕組み」へ広げる姿勢だ。(大津鉄也)

▲村上建治郎CEO
■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。
※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。
LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com
LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。
ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。






























