ロジスティクスセイノーグループの地区宅便(東京都練馬区)は16日、千葉市緑区の自社倉庫で「自動倉庫始動セレモニー」を開催した。同社は、物流スタートアップのROMS(ロムス、東京都大田区)が開発した自動倉庫「ナノストリーム」を導入し、ラストワンマイル領域における省人化と高密度保管、小口特化オペレーションの本格稼働を開始した。
背景には、国内のEC(電子商取引)化率上昇に伴う宅配需要の増大と、深刻化するドライバーや倉庫人員の不足がある。多品種少量化が進むなかで、従来の棚と人手に頼るオペレーションでは効率低下が課題となっていた。今回の導入により、中小EC事業者の出荷業務(保管・ピッキング・仕分け・出荷準備)を一体化したフルフィルメント機能を構築し、同社の低コストな輸配送ネットワークと連動してスケーラブルな対応を目指す。

▲ROMSの自動倉庫「ナノストリーム」の前で行われたセレモニーの様子
新たに稼働した「ナノストリーム」は、設置面積200平方メートルと自動倉庫としてはスモールスタートに適した規模でありながら、5メートルの天井高に対して保管有効高4.7メートルを活用した12段構成となっている。1つの間口に2つのコンテナを格納するダブルディープ方式や、50ミリの段ピッチ設定により、従来の中軽量棚と比較して3倍の保管効率を実現した。マテハン制御面では、クレーンが上段から抽出したコンテナを内製の小型AGV(無人搬送車)が4口ある作業ステーションへ搬送する。また、ステーションからはピッキングだけでなく、仕分け作業も行うことができる。画面UIや制御システム、AGVを含め、国内で企画・設計・製造・保守まで一貫して内製化されているのが特徴だ。
作業支援機能として、バッチピッキングとその場での仕分けを同時に行う「マルチオーダーピック」を採用。コンテナ内を最大8間口に仕切り、プロジェクションマッピングで対象を照射することで誤投入を防止する仕組みも備える。これにより、作業者が倉庫内を歩き回る必要がなくなり、従来の4人体制から1人運用相当へと変更可能。効率は、目安で4倍に向上するという。

▲地区宅便社長の河合秀治氏
また、本自動倉庫の導入に伴う投資額は非公開とされているものの、年率4-5%の将来的な人件費上昇リスクをあらかじめ考慮に入れた試算のもと、10年スパンでの投資回収を見込んでいる。
セレモニーの冒頭、地区宅便の河合秀治社長は「EC化が進み荷物が小口化するなか、ナノストリームの高保管効率と省人化は大きな強みになる。配送網と組み合わせてお客様に新しい価値を提供したい」と挨拶。また、従業員に向けて「人間の仕事がすべて置き換わるわけではない。超効率的な同僚が10人できたつもりで、既存のオペレーションにテクノロジーを組み込み、使い倒してほしい」と呼びかけた。半年後には効果検証の場を設け、実績を公開する方針も示された。
続いて、ソリューションパートナーであるROMSの前野洋介社長が登壇し、「自動化システムは入れてからが始まり。現場の声を迅速に反映し、一気通貫で伴走していくのが我々のポリシー」と、導入後の継続的な改善へのコミットメントを語った。

▲ROMS社長の前野洋介氏
プロジェクトの成功において、インテグレーターとしての重要な役割を担ったのが、T5(ティーファイブ、東京都新宿区)だ。「自動倉庫の導入を検討しているが、高額なシステムを自分たちの現場が本当に使いこなせるのか不安だ」「現場が混乱して出荷が止まるのではないか」と導入を躊躇する物流事業者は非常に多い。T5はこうした現場の恐怖心を取り除き、「絶対に失敗させない導入」を担保するため、2年前から地区宅便の現場に深く入り込み、挨拶や清掃などの基礎的な改善から、泥臭い事前検証までを一貫して引き受けて伴走してきた。
具体的にT5が主導した現場検証や、すり合わせのプロセスは極めて緻密かつ徹底されたものだった。まず自動倉庫を導入する前の段階から、従来の現場で「作業者がどこを何歩歩いているのか」を克明にトラッキング。そこから自動倉庫の「ステーション」を配置する位置をシミュレーションし、どのようなオペレーションを組めば「作業者の歩行時間ゼロ化」を最も安全かつ効率的に実現できるかを検証。
さらに、大量の異なる注文の中からどの注文をまとめて1つのバッチとして処理すれば、AGVが最も無駄なく、渋滞を起こさずにステーションへ荷物を運べるかを、実機導入前にデータ上で検証。これが最適な上位システム連携を構築するための強固な基礎となった。

▲T5代表の大西弘基氏
加えて、倉庫が昼夜問わず稼働する特性を踏まえ、T5のメンバーは夜間の現場での検証も行い、実運用が始まった後の生産性の変化や作業者の心理的な負荷、物理的なボトルネックとなる箇所をストップウォッチ片手に詳細に検証した。こうした地道な実測プロセスを重ね、万全の運用体制を確立した。
セレモニーで挨拶に立ったT5の大西弘基社長は、自動倉庫の選定や導入に際して現場と徹底的なすり合わせを行ってきたプロセスを明かした。「自動倉庫を導入する前の段階から、設備が入った後にどのようなオペレーションになるのか、人の動線や最適配置はどうなるのかを現場スタッフと一緒に徹底的にシミュレーションし、実測検証を重ねてきた」と語った。立ち上げ期に懸念される一時的な生産性の揺らぎを最小限に抑えるため、バッチ設計の最適化や目標生産性(4倍)の達成に向けたボトルネック対策があらかじめ組み込まれているのが同社の強みだ。

▲来場者の前でピッキングのデモンストレーションを行う河合社長
さらに導入後について大西社長は、「本日が本当のスタート。実際に稼働して初めて浮き彫りになる実運用上の課題を、今後は運用のチューニングを通じて迅速に改善していく」と強調。また、ナノストリームの導入によって高密度保管が可能となり、倉庫内に新たに生まれた「空床」(スペース)の有効活用にも着手する。新規荷主の獲得や、今後予定されている「ささげ業務」「ライブコマース」用のエリア構築なども視野に入れ、ビジネスと運用の両面から中長期的な伴走支援を継続する方針を示した。
出荷においては同社便だけでなく、ヤマト運輸や佐川急便などのマルチキャリア出荷にも柔軟に対応し、顧客の要望に応じた最適な組み合わせを提供する。
今後は、既存顧客の出荷業務から運用をスタートし、実運用の課題を検証しながら拠点の段階的な拡張を進める。将来的には、場内へのスタジオ設置によるライブコマース支援や、撮影・採寸などの「ささげ業務」の受託など、付帯サービスの早期実装を目指すとともに、セイノーグループの全国拠点への横展開も検討していく。
■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。
※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。
LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com
LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。
ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。





























