ロジスティクス茨城県トラック協会(小倉邦義会長)は6月23日、水戸市内で令和8年度定時総会を開き、長年続いた県内13支部を廃止して4つの広域ブロックに集約する組織再編案を会員に示した。2030年に向けて本格化するトラック運送事業の許可更新制で会員の2-3割が減るとの見通しを背景に、来年総会での承認を目指す。協会は今後1年をかけて会員の意見を聴く。(編集長・赤澤裕介)

▲茨城県トラック協会の小倉邦義会長
総会では令和7年度の事業報告、収支決算報告などを承認したのち、小倉会長が「協会組織のあり方について(案)」と題して組織再編の全体像を説明した。会長は冒頭のあいさつで、業界自らが議員立法という形で進めた一連の制度改正を「痛みを伴う変化だと、我々自身が受け止めている」と述べ、適正運賃の確保と、ドライバーが安心して働ける労働環境、賃金水準の実現を「最大限の急務」と位置づけた。
再編案の柱は、13支部の廃止と、県内を県西、県南、県北・県央、六方の4つの広域ブロックに集約することにある。会員数は県西ブロックが最も多く、県南、県北・県央が続き、霞ヶ浦を挟んで他のエリアと行き来しにくい六方地区を含むブロックが最も少なくなる。ブロックの区割りは、県内に8つある労働基準監督署の管轄が一つのブロックに収まるよう設計する。市町村合併や労基署の管轄と、現行の支部区割りのずれを解消し、外部機関との連携をしやすくする狙いがある。
運営面では、各ブロックにブロック長を置いて責任区分と職務を定める一方、ブロック専用の事務所や事務局は設けず、本部に担当者を置いて集約的に支援する。これまで支部ごとに行ってきた集団研修は本部の一括運営に移し、地域による受講機会の差をなくす。交通事故・労働災害防止大会は8つの労基署エリア単位で、管轄内の警察署などと合同で開催する。協会からの配布物は支部経由をやめ、路線事業者などを使って会員へ直接配送する方式に改める。連絡手段は原則メールとし、対応が難しい会員にはFAXや文書で補う。経費は、支部への支払いを停止し、ブロック単位の会議や大会に対して本部が定める基準で支給する。役員体制の簡素化、委員会構成の見直し、規程・定款の改定、役員の年齢層に関する基準の導入も併せて検討する。

長い歴史を持つ支部については、親睦団体としての活動を続けられるものとし、これまで支部に配分してきた予算は協会から切り離した各団体の資金として、各団体の裁量で運用できるとした。
移行は段階的に進める。今後1年かけて会員全体から意見を聴き、来年の総会で承認を諮る。承認後は既存の支部運営と新たなブロック体制を2年間並行で運用して課題を検証し、問題がなければ29年度にブロック運営へ一本化する。小倉会長は再編案について、あくまで「案」であり決定事項ではないことを繰り返し説明した。
更新制と財源難が背景
協会が再編を進める背景には、トラック運送業界を取り巻く環境の変化がある。総会で示された資料は、厳しさを増す業界課題として、時間外労働の上限規制をめぐる「2024年問題」への対応、若手不足による「人手不足倒産」の増加、後継者不在による廃業の増加、協会員数の減少を挙げた。
そのうえで、30年に向けて本格化する事業許可の更新制が重なる。いわゆる「トラック新法」(トラック適正化二法)の成立により、これまで一度取得すれば基本的に続いた事業許可に更新制が入る。財務要件などを満たせない事業者は事業の継続が難しくなり、協会は会員の2〜3割が減るとの見通しを示した。許可更新審査は30年4月以降、年に5分の1ずつ、1年あたり1万2000-1万3000社が対象となる見通しで、これに先立ち28年には適正原価の遵守義務などが始まる。
会員が減る局面で、現行の支部体制そのものが立ちゆかなくなるという事情もある。13支部は会員規模にばらつきがあり、県北や常陸那珂・水郡の支部が減る一方、県南・県西は増えている。支部は協会本体と直結しない任意団体であるため、予算統制や事業の均一化が難しく、会員への情報の届き方にも差が出ていた。
財源面の制約も重なる。協会収入の柱である運輸事業振興助成交付金は、今年度は5億7000万円ほどが交付され、協会予算の7割を占める。その原資となる軽油引取税の暫定税率が令和8年4月に撤廃されるのに伴い、交付金制度は見直された。5年間は続くものの、国の財源次第で減額もありうる。公金としては令和13年3月末で廃止され、代替の予算措置があるかは決まっていない。総会資料は、これらを踏まえ、協会の事業運営が厳しさを増すと説明した。
再編の狙いは、会員が減る局面でも研修や情報提供といった支援を地域差なく届け、本部主導で効率化を進めることにある。会員から見れば、研修機会の地域差が縮まり、配布物は本部から直接届くようになり、労基署や警察との連携単位が整理され、活動経費の配分は本部の基準に一本化される。支部長の力量に左右されてきた運営は、ブロック単位の責任制に移る。
来賓として出席した国土交通省関東運輸局の田中幸久・茨城運輸支局長があいさつした。田中支局長は前任地の中国運輸局でトラック・物流Gメンの中心として現場を回ってきた。

▲国土交通省関東運輸局の田中幸久・茨城運輸支局長
田中支局長は、物流効率化法や改正トラック法など相次ぐ制度改正の目的が、持続可能な物流の維持と適正な取引環境の実現にあると説明した。トラック・物流Gメンによる荷主への直接指導を続け、真っ当な経営を行う事業者が不利益を被らない事業環境の実現に取り組むと述べた。適正原価制度や許可更新制の具体化を見据え、運送原価を把握し、根拠を持って適正価格を示すことが、荷主や社会からの信頼につながると指摘した。田中支局長は、物流への社会的関心が高まる今こそ、業界自らが変わる好機だと呼びかけた。
再編案は、ブロック境界の最終確定、ブロック長の配置、役員・委員会の新体制、規程・定款の改定、経費支給基準の詳細など、詰めるべき論点を残している。協会は1年かけて会員や青年部の意見を集約し、来年の総会で承認を諮る。7月3日には本誌主催の「運びとキャラバン」が茨城県内で開かれ、小倉会長と田中支局長が登壇する。総会で示された再編案を、運送会社の経営の見直しや荷主の輸送力確保にどうつなげるかが、当日の議題となる。
■小倉邦義氏インタビュー
「台数より付加価値、誇りを持てる運送業へ」
■田中幸久氏インタビュー
「運べないものは作っても売れない、荷主計画の限界」
■小倉氏・田中氏登壇イベント概要
「元Gメン×茨城ト協会長、水戸で次代の物流を議論7/3」
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