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部分最適を崩せ、CLOカンファレンスで議論

2026年7月6日 (月)

ロジスティクスフィジカルインターネットセンター(JPIC)は3日、「CLOカンファレンス2026」を開催した。テーマは「CLOの法対応に猶予なし。今すぐすべきこと虎の巻」。改正物流効率化法に基づくCLO(物流統括管理者)制度への対応を起点に、物流を単なる法令対応にとどめず、企業経営やサプライチェーン全体の改革へどうつなげるかを議論した。

同日午前には、フィジカルインターネット(PI)の社会実装に向けた企業事例を紹介する「フィジカルインターネットフェス2026」も開催された。JPICは、今年度PIロードマップ上の「離陸期」を迎えていることから、PI実装とCLO制度対応を連動させながら、企業・業界を超えた物流改革を進める考えを示した。あわせて同日、PIの実現度を評価する「フィジカルインターネット成熟度モデル(PIMM)Ver.1.0」の正式リリースと審査受付開始も発表している。

カンファレンスの冒頭、JPIC理事長の森隆行氏が「JPICが目指すフィジカルインターネット」と題して挨拶した。森氏は、労働力不足、2024年問題、環境対応を背景に、個々の企業が自社最適を追うだけでは持続可能な物流の実現は難しいと指摘。CLOを「物流部門の管理者」ではなく、調達、生産、販売を含むサプライチェーン全体を見直し、企業価値を高める経営改革の担い手と位置づけ、荷主企業のCLOだけでなく、物流事業者側も同じ目線で議論し、改革を支えるパートナーになる必要があると呼びかけた。

▲森隆行氏

続いて、経済産業省商務・サービスグループ流通政策課長兼物流企画室長の平林孝之氏が「国からのCLOへの期待」をテーマに講演した。平林氏は、改めて改正物流効率化法の意義について解説し、CLOについては、法令上の職務に加え、物流全体の最適化、物流を通じた企業価値向上、社会課題への対応を担う存在として、議論や先行事例が共有されることへの期待を示した。

基調講演には、流通経済大学教授で工学博士の矢野裕児氏が登壇。矢野氏は、物流改革の核心を「部分最適を崩せるか」という問いに置いた。全体最適の重要性は広く語られてきたものの、実際の物流現場では、販売、製造、調達、物流、取引先それぞれの事情が積み重なり、個別最適が固定化してきた。顧客要望に応えるための現場努力が、結果として持続不可能な物流条件を生んできた面もある。矢野氏は、CLOに求められるのは、単に物流部門を管理することではなく、部門間・企業間にあるトレードオフを可視化し、どの部分最適を見直すのかを経営として判断することだと整理した。

▲矢野裕児氏

後半のパネルディスカッションでは、矢野氏がモデレーターを務め、ダイキン工業物流本部長の生地幹氏、梅の花グループ物流部部長の三井田浩二氏、ロジスティード業務執行役員CTOエンジニアリングイノベーション本部長の櫻田崇治氏と、平林氏が登壇した。テーマは、CLOと物流パートナーの共創。CLOに求められる役割、社内体制のつくり方、物流事業者との連携のあり方を議論した。

生地氏は、空調機器物流における季節波動、長距離輸送、重量物・大型製品の荷役といった課題を紹介した。ダイキン工業では、顧客倉庫への在庫前倒し配置や拠点同居による輸送削減、モーダルシフト、オーダー締め切り条件の見直し、パレット輸送、開発段階からの荷姿改善などに取り組んできた。今後は、販売情報や在庫情報の共有、鉄道・トラック・海上輸送の組み合わせ、販売・製造・調達部門を巻き込んだサプライチェーン改革を進める考えを示した。

三井田氏は、外食・中食事業を展開する梅の花グループで、営業主導だった物流を経営課題として捉え直してきた経緯を説明した。同社では19年に物流部門を立ち上げ、当初はコスト削減を主眼としていたが、在庫や輸送実態の可視化を起点に、航空輸送から陸送への切り替え、製造・販売・物流の連携強化へと取り組みを広げてきた。三井田氏は、物流コストが上がること自体を否定するのではなく、それをどう吸収し、事業全体の最適化につなげるかがCLOや物流部門の役割だと述べた。

▲(左から)生地幹氏、三井田浩二氏

ダイキン工業、梅の花グループはともに、経産省の「CLO事例集」にもその取り組みが紹介されるとともに、本誌「The CLO」連載でも生地氏と三井田氏、それぞれの知見を公開している。こうした先行事例の普及もまた、社会全体のCLO体制構築の後押しになるものと期待される。

また、櫻田氏は、物流事業者の立場から、荷主企業の改革を支えるパートナーの役割に言及した。パネルでは、CLOは一人で機能するものではなく、社内の各部門や物流事業者、納品先、施設側など、多様な関係者との対話を通じて改革を進める必要があるとの認識が共有された。平林氏も、CLO設置を制度対応で終わらせるのではなく、荷主が「選ばれる荷主」となるための行動変容につなげることが重要だと指摘した。

▲(左から)櫻田崇治氏、平林孝之氏

議論を通じて浮かび上がったのは、CLOは「選任」で終わる役職ではないという点だ。自社物流の見える化、社内部門との対話、物流事業者との共創、取引先や納品先を含めた条件見直しまで踏み込まなければ、部分最適は崩せない。PIの実装もまた、技術や仕組みの導入だけでは進まない。CLOが経営と現場、荷主と物流事業者、個社最適と全体最適をつなぐことで、共同物流を前提としたサプライチェーンネットワークへの転換が現実味を帯びる。

CLOカンファレンスは、法対応の期限を確認する場であると同時に、物流を「運ぶ機能」から「経営を変える機能」へ引き上げるための論点を共有する場となった。PI離陸期に入った今、問われているのは、CLOを置くかどうかではなく、CLOを起点に、どこまで部分最適を崩し、企業を超えた物流改革に踏み出せるかである。(大津鉄也)

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