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企業実務に即すSBTi新基準、物流にも実行責任

2026年7月7日 (火)

ロジスティクスKPMGジャパン(東京都千代田区)とSBTiは6日、「SBTi企業ネットゼロ基準Ver.2 日本ローンチイベント」を開催した。企業の温室効果ガス排出削減目標について、科学的根拠に基づく国際基準を示すSBTiが、企業ネットゼロ基準の新たな方向性を日本企業向けに説明した。

▲デイビッド・ケネディ氏

今回の焦点は、脱炭素目標を「掲げる」段階から、実際に「進める」段階へ移すことにある。SBTiのデイビッド・ケネディCEOは、新基準「Corporate Net-Zero Standard Version 2.0」について、従来の「Ambition」から「Action」へ軸足を移すものだと説明した。野心的な削減目標の設定だけでなく、目標達成に向けた実行計画、進捗管理、説明責任を重視する基準へと見直し、より積極的な企業の参画を呼びかけた。

日本ではSBTiへの参加企業が多く、コミットまたは認定済みの企業は2500社を超える。大手企業だけでなく、中小企業の参加も広がっている点が特長で、背景には大手メーカーやグローバル企業によるサプライチェーン全体での脱炭素要請がある。公共調達や補助事業でも、SBTiに沿った目標設定が評価される場面が増えており、脱炭素対応は企業の信用力や取引条件にも関わる実務課題になりつつある。

物流業界にとって重要なのは、Scope3への対応だ。SBTi参加に積極的な国内企業は、原材料調達、製品輸送、販売後の使用段階まで含めたサプライチェーン全体の排出量をどう把握し、どの範囲で削減を進めるかに対しての検証もさらに深めていく必要がある。とりわけ輸送は、多くの荷主企業にとってScope3の主要領域となる。物流事業者に対しても、排出量データの提供、低炭素輸送メニューの提示、共同配送やモーダルシフトなど削減施策への協力が求められる場面が増えることになる。

新基準では、これまで算定のハードルが高かったScope3についても、単純に完全な算定や一律の削減を求めるのではなく、重要性の高いカテゴリーを特定し、企業の影響力や実行可能性に応じて取り組みを進める考え方が示された。サプライヤーや顧客との連携、低炭素素材や低炭素サービスの調達、証明書や市場ベースの手法の活用など、企業実務に即した選択肢を広げる方向だ。

パネルディスカッションには、SBTi参画企業としてリコーと日本郵船の担当者も参加した。リコーは、SBTi認定への取り組みが社内の算定精度や目標管理の規律向上につながったと説明。日本郵船は、海運が燃料転換や代替燃料の供給、コスト負担などで難度の高い分野であることを踏まえ、実務に即したセクター別ガイダンスの重要性を示した。海運を含む低炭素輸送サービスは、荷主企業のScope3削減にも関わる領域であり、今後は輸送サービスそのものの脱炭素価値がより明確に問われる。

イベントではSBTiからの新基準解説のほか、WWFジャパン自然保護室長の山岸尚之氏による日本企業の脱炭素の現在地に関する解説、自然エネルギー財団シニアマネジャーの高瀬香絵氏からは新基準の現行基準との違いを強調し、企業にとってより実務的で、環境取り組みと企業成長を両立できる指標になると語った。

SBTi Ver.2は27年2月から現行基準と選択できる移行期間となり、28年2月以降は新基準への移行が進む見通しだ。脱炭素対応の焦点が、目標設定から実行管理へ移るなか、荷主企業には、物流を含むサプライチェーン全体で削減実績を積み上げる体制づくりが求められる。物流事業者にとっても、輸送力やコストだけでなく、排出量の可視化と削減提案を競争力として示す局面に入っている。(大津鉄也)

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